3D小説「bell」本編
■久瀬太一/12月25日/19時10分
「冷めても結構美味いな」
とオレは口を拭う。たぶん高い紅茶なんだろう。
「なにしてるの!」
と叫んだのは山本だった。
「もし本当に毒が入ってたらどうするつもり?」
「ないよ。絶対」
「どうして言い切れるの?」
「ソルが言った」
信じると決めたものは信じる。そこがぶれてしまうと、なにも進められなくなってしまう。
だが山本は、目元に涙を浮かべて叫んだ。
「それでもし間違ってたら、めちゃくちゃトラウマだよ!」
それはそうか。しまったな、本当に毒が入っている可能性なんて、まったく考えていなかった。
「うん。ごめん」
とはいえ、なんにせよこれで山本が入れた薬とセンセイの死は無関係だということが証明された。
「ともかく、薬が入っているなら、もう一方だ」
オレはテーブルの上に残された紅茶を指さす。
そちらは、山本が飲んだ紅茶だ。
「きっとそっちの紅茶に、睡眠薬が入っている。みんな山本が眠っているあいだに起こったことなんだ」
「みんな推測だろうが」
とニールが言う。
「なら、お前がそっちの紅茶を飲んでみるか?」
舌打ちして、彼は引き下がった。
オレは改めて、時系列を整理する。
「山本は22時に、この部屋にひとりでくるように言われていた。それは間違いないな?」
彼女は頷く。
「うん」
「もしこのきぐるみの中に誰かが入っていたなら、そいつは22時よりも先に部屋に入ったことになる」
宮野さんが首を傾げた。
「おかしいわね。ここの扉は、22時までは開かなかったはず」
「本当ですか?」
「もちろん絶対にとはいえないけど……」
「なんらかの理由で、このドアがそれよりも先に開いていたのだとしたら?」
「だとしても私たちは無罪ですよ」
と、そういったのはファーブルだった。
「センセイはまず、山本さんだけが部屋に訪れるよう指示していました。私、アルベルト、それからワーグナーは、ゆっくりティータイムを楽しんでいました。そう、あちらの偉人たちの部屋でね」
なるほど。
「じゃあやっぱりニールの容疑は外れないわけですね」
あとはついでに宮野さんだが、まあ宮野さんのことは考えなくてもいいだろう。勝手にものを持ち出すくらいのことはするかもしれないけれど、人は殺さないはずだ。
だが、その宮野さんが小さな唸り声を上げる。
「私とニールさんは、そのときは洋館にいなかったわ」
「そうなんですか?」
ちっ、とニールが舌打ちする。
「飯食いに出たら、そいつもなんかついてきたんだよ」
その場面は、リュミエールにみせてもらった記憶がある。シーザーサラダを食べていた。たしかあの映像の中で、宮野さんが時刻を宣言していたはずだ。
「21時、5分?」
だっただろうか。
「そうよ! 私の可愛いボイスレコーダー1号がこの悪魔によって溺死させられたのよ!」
「勝手に人の声を録音しはじめるのが悪いんだろうが!」
「とりあえず落ち着いてください宮野さん」
だいたいこういう場面は、宮野さんに非があるのが通例だ。
「21時ごろに食事をしていたのはわかりましたが、それが22時のアリバイになるんですか?」
「微妙に」
「どういう意味ですか?」
「それは私の完璧なチェックノートをみればわかるわ」
と、そう言って。
彼女は自信ありげに、大学ノートを開いた。
inamura @onthedish
飲めとはいってない
ねこくん@3Dbell長崎コラ班猫神雅 @kun_inu
「それはそうか。しまったな」じゃねえよw
子泣き中将@優とユウカの背後さん @conaki_pbw
ボイスレコーダー「1号」
?杠葉奏音§うすしおっ? @solt324c
なんか宮野さんと久瀬のせいでシリアス分がどっかいってるw
れいがっしゅ @reigash
21時ゼロゴ分とか言い始めたときにイスにコトッって置いたやつ、さては2号ちゃんだろ!
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