コメディアンとコーヒーを飲む
何度かヤンサンやディスカバリーレイジチャンネルで語っているけど、かなり前から「サインフェルド: ヴィンテージカーでコーヒーを」というネットフリックスの番組にハマっている。
字幕版しかないので聞き流しができないのが難点ではあるけど、逆に吹き替えでは気が付かないような言い回しなんかが感じられてそれはそれで面白い。
どんな番組か改めて紹介させてもらうと、何のことはない。
ベテランのコメディアン「サインフェルド」が様々なコメディアンに会いに行ってコーヒーを飲みに行くだけの番組だ。
一応この番組には「素敵な車で迎えに行く」というコンセプトがあって、往年のヴィンテージカーやいわゆるスーパーカーみたいな車が次々に出てくる。
この貧困の時代に高級車自慢っていうのもどうかとは思うけど、車に罪はない。
サインフェルドが迎えに行く人にふさわしい車を選んで迎えに行くと、ほとんどの人がとても喜ぶので悪い気はしない。
ちなみに僕の大好きなジムキャリーの回では「ランボルギーニ・カウンタック」という70年代後期の子どもたちを熱狂させた車が出てくる。
ジムキャリーは自宅の巨大な2メートル以上の高さの門の扉を短パンとTシャツみたいなラフな格好で乗り越えて汗だくで現れる。
「扉が開かないのか?」と聞くサインフェルドに「いや開くけどね」と答えるジム。
ようするに「出オチ」というサービスだったわけだ。これだけでも見ていて幸せになる。
僕がやってた「絶望に効くクスリ」も「会いに行って話す」という企画だったけど、この番組では相手が初対面でなく、サインフェルドと何度か共演した人達が数多く出てくるのが面白い。
日本で例えると「所ジョージ」みたいな人がタモリさんや石橋貴明や松本人志みたいな人達に会いに行く、みたいな感じだろう。
当然「あの時は笑ったよな」みたいな感じにもなるし「実はあんたの番組観てるんだよ」なんて話にもなる。
若い出演者が出てくる回もある。
若いコメディアンは暗い人が多い。先のない未来と現在のプレッシャーで苦しんでる。
そう言えば日本人の若者も暗い人が多いけど、同じような不安を抱えているのだから仕方ないと思う。
「彼が暗いんです」という相談を若い世代の女の子から聞く事が多いけど、若い男は暗いのが基本なのだから手加減して欲しいとも思う。
サインフェルドの番組の話に戻ろう。
ゲストがかなりの年長者の回も面白い。
もちろん全員ではないけれど、老人コメディアンは明るい。
「俺はレーガンが若い頃にずいぶん奴をからかってたもんだよ」とか「シナトラのステージでは・・」なんて伝説級の話がガンガン出てくる。
「色々あったけどなんとかなった」という人達の話には希望を感じる。
僕の父親も「悪い事から忘れていくもんだ」と言っているけど、その仕組はありがたい。
つまり人生は基本的に「明るい方」に向かっていくのだ。
そうは言っても基本的に「成功者の話」なので無邪気に全肯定は出来ないけど元気はもらえる。
そして若者と老人の間にいる人達も面白い。
サインフェルド本人もそうなのだけど、そこそこの成功と挫折を経験していて、人間の本質なんかについて「推論の域」を超えた考察ができる年齢になっている。
お約束の「バカ話」の間に、体験に根ざした「自分の哲学」が語られる。
みんな基本的に「金や名誉が欲しい」という状態からは開放されているので、自分にとっての幸福がどういうものなのかをリアルに見つめているのがいい。
普通の人は「金があれば」「権威があれば」とか思って生きているけれど、実際にそれを手にした人が幸せになるのか?という問題には興味があると思う。