7月23日,25日の両日に,選抜試験を開催しました。
試験は思考力試験,実験工作力試験,情報整理力試験の3つ行われました。とくに7月23日は,50名を超える小中学生が本学に参集し,大変賑やかな1日になりました。簡単に内容をご紹介します。
図1 試験について説明中
(1)思考力試験
思考力試験は,太郎さんと花子さんたちの研究活動についての文章を読んで回答する,科学的な思考能力を問う試験です。問題は本学で作成したオリジナル問題です。知識を問う○×問題ではなく,場面における思考能力を問うています。
今年度は,4つの問題を作成しました。正直大変でした。
(a)フィルムケースロケットの研究
(b)ダンゴムシの研究
(c)物の落ちるはやさの研究
(d)水素を燃やす研究
4問のいずれかを回答しています。いずれの場合も必要な知識は問題の中で与えられていますので,自分が研究の場面でどう行動するのかを回答することになります。
問題の一部分を公開します。
〜フィルムケースロケットの研究から〜
花子さんが授業で気になった点について先生に質問していると,ポン!という大きな音が聞こえた。そこで,花子さんが音のした方へ行くと,太郎さんと次郎さんが,なにかをしているのを見つけた。
花子「ふたりともなにをしているの? さっき聞こえた①大きな音はふたりがやったの?」
太郎「そうだよ。ぼくたちはフィルムケースロケットを飛ばしていたんだ」
花子「フィルムケースロケット?」
次郎「フィルムケースって言うのは,昔のカメラのフィルムを入れていたケースだよ。このフィルムケースに,水とバブ(はっぽう入浴ざい)を入れて飛ばすと,ロケットみたいで,かっこいいんだ」
問1 下線部①の大きな音がでたのは,フィルムケースロケットのどの段階で,どうして大きな音がするのでしょうか。あなたがかんがえる理由を教えてください。
どうでしょうか?
みなさんだったら,何と答えますか?
図2 思考力試験中
(2)実験工作力試験
実験工作力試験は,初めて会った人どうしで作ったチームで協力しながら,かさ袋ロケットの開発を行いました。かさ袋ロケットの開発は,現代の科学技術開発とおなじようにミッションクリア型になっており,目標が段々むずかしくなっていきます。
(A)ミッション1
達成目標 『7 m以上飛ぶかさ袋ロケットの開発』
ミッション1は遠くまで飛ぶかさ袋ロケットの開発です。ふつうのかさ袋ロケットは,遠くに飛ばすことが目標ですので,このミッションを達成することは,それほどむずかしくありません。設計についてかんがえるより,思いっきり投げるというチームが多くありました。
図3 ミッション1(力いっぱい投げてもクリアできる?)
(B)ミッション2
達成目標 『5 mの位置にある的の中心から20 cm以内に落とす』
こんどは,かさ袋ロケットを正確にコントロールしなければなりません。さきほどまでの力一杯投げる方法では,うまく行かなくなりました。多くのチームは,このミッションの達成ができませんでした。正確に落とすためには,何が必要なのか。設計と実験をとおしてかんがえる必要があります。
実際のロケットはどのようにして狙ったところに飛んでいくのでしょうか?
現実のロケットについてかんがえ,物理学の法則にしたがって,自然を味方につける必要がありそうです。
図4 ミッション2(おしい!)
(C)ミッション3
達成目標 『重力ウィンド(輪っか)をくぐって,ビーチボール惑星に着陸する』
最終ミッションです。地球の重力を脱する重力ウィンド(輪っか)をとおって,ロケットはビーチボール惑星を探査に行きます。ここでは,ミッション1の飛距離,ミッション2のコントロールの両方を達成するロケットを設計する必要があります。いままで学んだことを活かして,クリアを目指しましたが,90分の活動でミッション3をクリアしたチームはいませんでした。
図5 ミッション3(重力ウィンドの輪をとおることができませんでした)
本プログラムのオリジナルの挑戦方法によって,子どもたちは,かさ袋ロケットの設計について,さまざまな角度から考え,独創的なロケットも数多く開発されました。
(3)情報整理力試験
たのしかった,おもしろかったで終わらせず,学びとして自分自身の力にするためには,成果をまとめ,振り返る時間が必要です。情報整理力試験は,実験工作力試験での成果を報告書にまとめ,予想はあっていたのか,どこに工夫をしたのかなどをまとめました。
図6 おたがいの情報をもちよって,より良い解決法を目指します!
ここでも,チームとして協働して成果をまとめることで,自分だけでは気がつかなかった事実に気づくことができます。自分にはない視点,自分ではできないことを多くの人と協働することで成し遂げることができるでしょうか。
(4)さいごに
実験工作力試験を行う前に,かさ袋ロケットについて予想してきた設計について記述しています。紙の上では,予想どおりに行くはずなのですが,実際にやってみると,設計どおりの性能をだすことが,とてもむずかしいことがわかります。
それに,かさ袋は頑丈ではありませんから,投げると壊れてしまうこともあります。すぐ壊れるから,つまらないというかんがえかたもあるでしょう。しかし,ホンモノのロケットも1回飛ばしたら壊れてしまいます。実験工作力試験で行ったことは,実際のロケット技術者の研究とおなじだったのです。すぐに壊れてしまうからこそ,設計の段階で良くかんがえ,おなじ性能を出すロケットをいくつもつくる方法もかんがえないといけません。そして,得られた結果について良くかんがえ,設計や発射方法を良くかんがえないと,目標を達成することはできません。
むずかしいからこそ,おもしろい。
わからないからこそ,たのしい。
これが科学のかんがえ方です。なにもかんがえずに,おなじことをくり返しても,おなじところをグルグル回るだけなのです。
なぜそうなる?
どうすればいい?
これが科学の問いです。実験工作力試験で聞かれていたのは,目標を達成するために「壊れやすいロケット」を,どうやってつかうかでもあったのです。そして,これをかんがえるためには,きちんとした記録をのこさなければなりません。
1回毎の結果はどうだったのか?
おなじロケットの,なにを変えると,どう変わったのか。もしくは変わらなかったのか。
なにかを変えると,結果にどのような変化があったのか?
記録がなければ,なにもわかりません。
どうでしょうか?
どうすれば,正確に,よく飛ぶかさ袋ロケットを開発できるでしょうか?
いろいろなやり方があるでしょう。
あなたなら,どんな方法をつかいますか?
2日間に渡って,63名の受験生が本学に来校しました。岡山県から来学された受験生もおり,本プログラムは愛媛県から全国に広がっていくプログラムになることが期待されます。
第1回は,8月6日に愛媛大学で実施されます。
愛媛新聞社様に講演をお願いし,「見る,聞く,まとめる,伝える」についてまなびます。
事前学習動画を公開していますので,参考にしてください。
ネット配信はVR配信を行う予定です。実際に参加しているような臨場感を得られるのではと期待しています。