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2014年3月第4週号
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2014年3月第4週号

2014-03-24 08:40

    めるまがアゴラちゃんねる、第083号をお届けします。

    コンテンツ

    ・ゲーム産業の興亡(95)
    アメリカからのゲーム業界最前線報告(1)家庭用ゲーム機の動き
    新清士(ゲームジャーナリスト)


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    特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)

    ゲーム産業の興亡(95)
    アメリカからのゲーム業界最前線報告(1)家庭用ゲーム機の動き

    3月17日〜21日まで、米サンフランシスコでGame Developers Conferenceが開催された。参加者数は2万人を越える、ゲーム開発者や企業向けの世界最大のイベントだ。400以上の講演、開発ツールなどのExpo、周辺のホテルなどを使って行われるビジネスミーシングなどが活発に行われ、今年のゲーム産業の動きを占う上での重要な位置づけを持つ。

    ここ数年、ゲーム産業はどこに行くのかということを、明確に定義することは難しくなっている。ゲームは、10年も前であれば、家庭用ゲーム機についての議論を行っていればよかったが、現在では、スマートフォン、パソコンなど、さらに新型コントローラー、ウェアラブルデバイスなど、新しい周辺機器の登場によって、ゲームと関わっていると言える範囲が拡張している。

    今年は、ここの材料が独立的に成長しているため、今年の中心トレンドだ、ということを簡単に述べることが難しいためだ。

    しかし、イノベーションの速度が加速化している。新しい市場チャンスを目指して、新しいマネーが大きく動いている。

    今回は、その中でも、家庭用ゲーム機をめぐる環境について解説を行いたい。モバイルゲームの状況は来週以降に紹介したい。


    ■PS4の優位性は決定的に、マイクロソフトのXbox事業部は売却の噂

    ・ソニー・コンピュータエンタテインメントの「プレイステーション4」の大ヒットしている。それに伴い、力学が大きく変わった。PS4は現在でも、生産が追いついておらず、ゲームショップに入荷すれば、売れ続けるという状態が続いている。

    クリスマス商戦が終われば、いずれ息切れするとの見方が有力だったが、11月の発売から、4ヶ月経っても状況が改善していないほどの人気だ。

    この状態は、SCEの関係者も予想を大きく超えており、12年に発売された任天堂のWiiU、同時期に発売されたマイクロソフトのXboxOneという新ハードの競争時代では、PS4が勝利する可能性が高まっている。

    ・マイクロソフトのXboxOneの失敗は自明のものと理解されるようになっている。状況を逆転させるために、開発会社にゲーム開発キットを無料に近い状態で配布したり、これまで消極的だったりした。

    ここに来て、日本企業にも開発費を支払い独占タイトルの開発をしてもらおうとする動きが出てきている。しかし、今後の苦戦を逆転できるとは、多くのゲーム会社は考えていない。

    ゲームショップの店頭でも、PS4は売り切れているが、XboxOneは在庫が存在する状態になっている。特に、欧州の苦戦が明白で、相当厳しい状況に置かれているようだ。マイクロソフトは13年末に300万台を販売したと発表したが、その数値は実際よりも、多めに発表しているとの見方もあった。

    ・マイクロソフトのXbox事業部は、今後も会社の赤字事業として重荷となり続けると考えられる。「すでに有力なスタッフはマイクロソフトを離れてしまっていると」述べる関係者もいた。投資家などより、Xbox360のときから事業売却をするべきだという意見が、過去何度も繰り返されてきた。

    実際に売却するのではないかと言う噂が出ている。有力な売却先と上げられるのが、アマゾンだ。アマゾンはゲーム開発者の引き抜き、ゲーム会社の買収を進めてきている。ゲーム機市場の本格参入に向けての準備を進めているという見方が強い。

    仮に買収を行った場合には、XboxOneを無料で配布するといった極端な戦略をとりうる可能性があり、その場合、現在のPS4の優位性が突然崩れるといったことがありえるかもしれない。


    ■SCEに対して集中する期待

    ・SCEが期間中に発表したPS4向けの新型バーチャルリアリティデバイス「プロジェクトモーフィアス」は、非常に好意的にゲーム開発者に受け止められている。もちろん、発売時期、価格などは不明確で、年内の発売はない。

    通常、GDCではハードウェア会社は重要な発表を行わない傾向があるが、ゲーム開発者に早めに参入してもらい、来年以降の発売までのゲーム開発を先行してもらおうという意図を持っている。機材を配布する企業は、大手ゲーム会社だけではなく、小規模のインディゲーム会社に対しても積極的に行うと表明を行っている。

    バーチャルリアリティデバイスとしては、先行する米OculusのOculus VRが開発者向けのDevelopment Kit 2を発表した。次に発売するものは、消費者向けの一般の製品版となることを明らかにした。年内の発売は難しそうだが、来年の発売に向けて、着実に開発が続いている。

    ただ、VRについては、3D酔いなど、様々な課題が存在するため、SCEと同社は競合となるのではなく、とうぶんは、VRの発展のための補完関係を作っていくと思われる。

    ・SCEへの数人から10数人程度で開発するインディペンデントゲーム会社の期待が、極端にまで、高まっている。欧米でのデベロッパー契約は1000社にまで及ぶという。一時期のアップルのAppStoreのソフトウェア販売までの登録待ちの状態に似ており、いつ契約が結べるのかがわからない。

    SCEは、これほどの集中が起きるとは、まったく予期しておらず、スタッフの人数が足りず、体制が現時点では整っていないという。

    また、インディのゲームを積極的に展開していく姿勢を強く押し出しているが、その事業が、十分な売上げを出せとまでは、明確なことはわからない状態だ。


    ■国内市場の状況が違う日本企業が抱えるジレンマ

    ・GDCに参加した、日本の家庭用ゲーム機会社からのスタッフはジレンマを抱えている。PS4はPCにハードウェア構成が近いため、ハード構成の世代としては、2世代あまり古い。そのため、すでに枯れた技術になっているため、作りやすくなっている。

    しかし、日本企業にとってはジレンマを生む。

    日本市場の規模が小さいためだ。2月の日本での販売台数は、30万台を越え、日本国内でも年内に100万台を越える可能性は十分にあるが、欧米圏に比べると市場規模が圧倒的に小さい。

    優れたゲームを、人材と時間を投入することで生み出せるのは事実だが、その投資に見合うほどの売上げを出すことが日本国内で得ることは難しい。一方で、欧米企業は、市場の大きな欧米市場でビジネスが出来るために、市場での強みを発揮できる。数十億円ものコストをかけたゲームを開発することが出来るため、日本のゲーム会社は太刀打ちできない。

    グローバルにはハリウッド映画に、日本の映画が勝負を挑むことが難しく、苦戦しているのと同じ図式が成立しつつある。

    来週は、世界のマネーが、スマートフォン市場になだれ込んでいる状況を解説したい。



    □ご意見、ご質問をお送り下さい。すべてのご質問に答えることはできないかもしれませんが、できる範囲でメルマガの中でお答えしていきたいと思っています。連絡先は、sakugetu@gmail.com です。「新清士オフィシャルブログ」http://blog.livedoor.jp/kiyoshi_shin/ も、ご参照いただければ幸いです。

    新 清士(しん きよし)
    ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
    Twitter ID: kiyoshi_shin

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