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めるまがアゴラちゃんねる、第119号をお届けします。
配信が遅れまして大変申し訳ございません。
コンテンツ
・今週の池田信夫
アゴラ研究所所長、池田信夫のエントリーでアクセスが多かった記事、アゴラ・チャンネルの動画を紹介します。
・ゲーム産業の興亡(131)
Oculus Riftでも強くなると予測できるF2Pモデル
新清士(ゲームジャーナリスト)
アゴラは一般からも広く投稿を募集しています。多くの一般投稿者が、毎日のように原稿を送ってきています。掲載される原稿も多くなってきました。当サイト掲載後なら、ご自身のブログなどとの二重投稿もかまいません。投稿希望の方は、テキストファイルを添付し、システム管理者まで電子メールでお送りください。ユニークで鋭い視点の原稿をお待ちしています http://bit.ly/za3N4I
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今週の池田信夫
「この道しかない」ってどんな道?
http://agora-web.jp/archives/1623118.html
衆議院選挙が公示されました。これは「アベノミクス解散」というのだそうです。安倍首相は「景気回復、この道しかない」といっていますが、意味がよくわからない。郵政解散のときみたいに、国会でアベノミクスが否決されたのならわかりますが、それを今やってるのに解散して...
大英帝国を支えた「19世紀のインターネット」 - 『海洋帝国興隆史』
http://agora-web.jp/archives/1622894.html
資本主義は、イギリスの生んだ特殊なシステムである。大英帝国がなければグローバル資本主義は生まれず、たかだかヨーロッパのローカルな経済システムに終わっただろう。ウォーラーステインも指摘したように、資本主義は生まれたときからグローバルであり、そうでないと存続しえないのだ。
原油暴落と闘う日銀
http://agora-web.jp/archives/1622561.html
原油価格が暴落している。今夜10時の段階で1バレル66ドルと、半年でピークから4割下がった。これが10月の消費者物価指数(総合・コアCPIとも)の前年比上昇率が0.9%に下がった最大の原因だが、このときはまだ90ドル台だから、今後もCPIはさらに下がるだろう。
世代間戦争としての「原発再稼動」
http://agora-web.jp/archives/1619974.html
川内原発の「再稼動」が決まったことで、また原発が注目を集めているが、NHKニュースの世論調査はちょっと意外な結果だ。上の図のように、「賛成」と「どちらかといえば賛成」を合計した回答は、30代以下でもっとも高い。この結果について、小林傳司教授なる人物が、次のよ...
「そこまで言って委員会」の放射能デマ
http://agora-web.jp/archives/1622742.html
きのうの記事に反響が大きいので、経緯を補足しておく。チェルノブイリ事故については、ちょうど先週のGEPRで紹介したので、読んでほしい。
国の借金は永遠に続けられるの?
http://agora-web.jp/archives/1621753.html
安倍首相は衆議院を解散して、12月14日に衆議院選挙が行なわれることになりました。彼は8%の消費税を10%にふやすことを先送りし、それについて「国民に信を問う」というのですが、先送りに反対している党は一つもありません。増税は争点になっていないのに、何を問うんでし...
世代間格差を是正する選挙制度改革が必要だ
http://agora-web.jp/archives/1621791.html
きょうのアゴラこども版に書いたのはわかりきった話だが、問題はこんな当たり前のことを主張する政党が一つもないことだ。特に三党合意で増税を決めた民主党まで増税先送りに賛成したのは無責任だが、現在の有権者の構成からはやむをえない。高齢者に迎合しないと、選挙に勝...
アベノミクスの終焉
http://agora-web.jp/archives/1621033.html
今年の7?9月期のGDP速報値が、予想以上に悪かった。これを増税の影響だという人が多いが、それは誤りである。増税の影響は一過性なので、右の図(朝日新聞)の比較でもわかる通り、半年たつとGDPはプラスに戻るのが普通だ。増税率はほとんど同じなので、この差は消費税以外...
1000兆円の借金を返す方法
http://agora-web.jp/archives/1619938.html
「クルーグマン教授、“消費増税で国債暴落”論を一蹴」とかいう支離滅裂な記事が出ている。「国債暴落」というのは金利上昇と同じことだが、本文では彼は「株価が暴落する可能性を指摘する経済専門家もいるが、金利が低いままとどまり、円安のおかげで日本企業がますます競...
池田信夫の【アゴラVlog】人はなぜサンクコストを錯覚するのか
http://youtu.be/ZrFMN_BB1ls?list=UUJHLwoEJ55msgoxeiqJjOvA
サンクコスト(埋没費用)とは、過去なんらかのプロジェクトに投資したコストのうち、プロジェクトから撤退しても回収できないコストのことです。ところが「もったいない」という気持ちや「失敗を認めたくない」という意識から、頭で理解していても多くの人がサンクコストの錯覚に容易にとらわれてしまいます。人はなぜサンクコストを錯覚してしまうのでしょうか?
特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)
ゲーム産業の興亡(131)
Oculus Riftでも強くなると予測できるF2Pモデル
11月28日から上野の森美術館で始まった「進撃の巨人」展では、Oculus Riftによる専用の体験コーナーが設置されるなど、Oculus Riftが相変わらず話題を集めている。今後も、多様な利用方法が出てくるだろう。
ただ、特にゲームの市場の形成は、ゲームそのものは無料で遊ぶことができ、アイテム課金方式で収益を得る「Free to Play(F2P)」型が中心になるだろうと思うようになった。
ハードとしての新規性は、今後も話題を生みだし続けるだろうが、市場は既存のゲームビジネスで強いモデルから大きく変わるほどのインパクトは持たないだろうと考えている。それを確信するようになったのは、F2Pのロシア製の宇宙船ゲーム「Star Conflict」を長時間遊んだためだ。
■Oculus Riftではまだまだ長時間遊べるゲームは少ない
Oculus Riftは、PC向けのハードで、ハイエンドPCをターゲットに、当初はビジネス展開を進めると考えられる。最初に起きてくるのは、既存のPCゲームをOculusに対応させるバージョンの開発で、少しずつ対応ゲームが出始めてきている状態だ。
とはいえ、タイトルはまだまだ揃っているという状態ではない。多くは技術デモや、ゲームとしてもこなれていないものが多く、長時間遊び続けることは容易ではない。数分間で、車酔いに似た現象のVR酔いを引き起こすゲームも少なくなく、思わず、プレイ途中にOculus Riftを投げ出してしまうタイトルも少なくない。
レースゲームは、Oculus Riftと相性がよいと考えられているが、11月にリリースされたイタリア製のレースゲーム「Assetto Corsa」は、プレイステーション3世代に劣らないほどのグラフィックス水準を確保しており、数々のフェラーリが登場するグラフィックス的にも豪華な内容だ。
VR内でのレースゲームのメリットは、坂道は実際に高さを実感することができるという大きな利点がある。すでに、対応したゲームはイギリス製の「Live For Speed」があったが、古いゲームでもあり画質は決してよいものではなかったため、最新の世代のゲームのOculus対応は待たれるところだった。
筆者が、Oculus Riftでプレイした感想は、残念ながら、決して楽しいという感じではなかった。レースゲームは好きな方なので、何時間も熱中してプレイする方だが、ちょっと走っただけで、もう一度走りたいと思えるものではなかった。
Oculus Riftの現バージョンである、Development Kit 2(DK2)は、HD画質を実現しているというものの、画素数は決して多いとは言えず、目の粗さが目立つ。そのため、通常の自動車運転をするときと体験が大きく異なる。自動車を通常運転するときには、ドライバーは速度が上がれば上がるほど、遠いところに視点を合わせるが、モニターの画素が粗いために、遠くはぼやけているのだ。
まるで、近眼の状態で車を運転しているような気分で、どうにも気持ちよく走ることができない。来年以降に発売される予定のスーパーハイビジョン画質の新型の登場を待たなければ、進化を発揮できないと思われる。Oculus Riftで何時間ものプレイに耐えられるゲームはまだまだ登場しないと思われていた。
■Oculusにフィットした宇宙戦ゲーム
ところが、長時間遊べるゲームに巡り会うことができた。
ロシアのGaijin Entertainmentがリリースしている「Star Conflict」という複数人プレイヤーの宇宙戦闘機同士のドッグファイトをテーマにしたゲームだ。
このゲームは、2年前にリリースされており、元々はPCモニターで遊ぶことを前提としていた。決して人気の高いゲームとはいえず、遊ばれているのはロシア、欧州と中国といった一部の地域にすぎない。モニターで遊ぶと、ゲームとして、傑作と感じさせるほどのものでははない。
ところが、Oculus Riftを使うとゲームの体験がまったく変わる。
宇宙空間の360度を見回すことができる自由度は、他のゲームにない新鮮な体験だ。また、宇宙空間であるために、VR酔いを引き起こしやすい、自分に見えているものの近い物体の動きが少ないために、酔いにくいようだ。それでいて、すでにリリースから2年が経過しているために、ゲームの完成度も一定のものを見せているために、やりこみ要素は十分に用意されている。
筆者が遊んだ時間は、すでに10時間を超えているだろうと思う。
すでに、イギリスといった欧州系の企業を中心に、宇宙船の戦いをテーマにしたゲームを開発している企業は少なくない。英Frontier Developmentsの「Elite: Dangerous」のように、Oculus Rift対応を売りにしている開発中のゲームも少なくない。
欧米のゲームの多くは、宇宙空間でのリアルな挙動をシミュレートすることに力を入れており、そのこだわりの強さが要因で、正直取っつきにくい。まともに移動させることさえできない。そうした要素を捨てて、簡単な操作性で遊べる「Star Conflict」はすでに操作系もこなれているために、かなり遊びやすい。
■結局はF2Pが主導権を握るであろう
「Star Conflict」のもう一つの特徴は、F2Pであることだ。長時間遊んでいるにもかかわらず、まだ1円も支払っていない。払わなくとも十分に楽しめてしまうのだ。
まだ、F2Pで展開されている、Oculus Riftに対応したゲームはこのゲーム以外には、存在しない。PCモニターで遊ぶゲームとしてはマイナーなゲームだったが、Oculus Riftでのおもしろさが知られるようになるとハードの普及に従って、急激に人気を得るようになっていくだろう。
08年にアップルの「iPhone3G」が発売になり、コンテンツ流通プラットフォームのAppStoreが誕生して、様々なアプリの可能性が模索されていた時期が続くが、今は、Oculus Riftはその時期に近いと定義づけることができると思われる。
AppStoreは自由に価格設定を決めることができることから、超競争市場となり、アプリの販売価格が1ドル前後にまで急落、単体のアプリでは収益を上げることがほぼ不可能になってしまった。
一方で、10年頃に、F2Pモデルが登場すると一気にビジネスの中心が、そちらに移行した。あらためて詳しく書く必要もないだろうが、現在の「パズル&ドラゴンズ」などの高収益を出すゲームが次々に登場して、一部のゲームが極端な高収益を得るという状況が生まれるようになってきた。
結局、デバイスが変わろうとも同じような状況になるだろうと考えてよいと思われる。F2Pは、スマホゲーム市場で猛威をふるっているように、同じことがOculus Riftの市場でも繰り返されるだろう。
そうなると、同じ競争が始まる。課金プラットフォームを誰が握るのかという争いだ。「Star Conflict」はPC向けのコンテンツ流通プラットフォームの米Valveの「Steam」を中心に配信されている。他のゲームも現在は決済手段を持っていないために、「Steam」を使うことが多い。
Oculus VRは、今後、独自の「Oculus Platform」を立ち上げることを明らかにしており、普及期に入ると、アップルやグーグルのように、Oculus VRの用意した課金プラットフォームを使わないと不利になるような仕組みを用意してくることになるだろう。
今は、Oculus Riftは、自由な可能性が提示されている状態にあるが、数年でその状態も終わってきて、一定の方向付けが決まってしまうだろう。
現状、日本企業からは課金プラットフォームの提案まで踏み込んだ動きは登場していないが、登場を期待したいところではある。
「Assetto Corsa」Steamのダウンロードページ
http://store.steampowered.com/app/244210/
「Star Conflict」Steamのダウンロードページ
http://store.steampowered.com/app/212070/
「Star Conflict」ゲームプレイ動画
https://www.youtube.com/watch?v=gzOdYzgotk0
□ご意見、ご質問をお送り下さい。すべてのご質問に答えることはできないかもしれませんが、できる範囲でメルマガの中でお答えしていきたいと思っています。連絡先は、sakugetu@gmail.com です。「新清士オフィシャルブログ」http://blog.livedoor.jp/kiyoshi_shin/ も、ご参照いただければ幸いです。
新 清士(しん きよし)
ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
Twitter ID: kiyoshi_shin