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アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第91号(2016/6/10号/月2回発行)
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アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第91号(2016/6/10号/月2回発行)

2016-06-13 09:30

     7月3日に大阪で「アニメレビュー勉強会」を行います。
     東京で何回かやってきたレビュー勉強会ですが、今回大阪在住のみよしさんが主宰となってもろもろ準備をしてくださいます。お題は『心が叫びたがってるんだ。』です。
     詳細はみよしさんのブログを確認してください。申込みは12日まで(まだかなり席に余裕はある感じのようですし、少々の遅れは大丈夫だと思いますので、このメルマガ見て決意した方はお急ぎでどうぞ)。申込みの段階ではまだ原稿は不要です。[詳細はこちら]
     地方での開催は難しいところ、みよしさんの采配で実現にこぎ着けた企画ですので、よろしくお願い致します。
     では、いってみましょう。今回の不定期アニメ日記は、最近バズっていた「日本のアニメの女性監督」についてです。

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    1.最近のお仕事紹介
    2.Q&A
    3.前回のアニメの門チャンネル
    4.連載「理想のアニメ原画集を求めて」
    5.不定期アニメ日記


    最近のお仕事紹介

    1.朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメを読む」(東京)
     6/18:『心が叫びたがってるんだ。』
     7月からの予定は以下の通り。こちらも募集しています。
     7/16特別講座「声優の仕事を知ろう」ゲスト田中一成(『プラネテス』ハチマキ、『ハイキュー!!』烏養繋心)
     8/20『花とアリス殺人事件』
     9/17『交響詩篇エウレカセブン』
     https://www.asahiculture.jp/shinjuku/course/90a95229-2aff-749a-5a4c-5710d1ad6643

    2.SBS学苑パルシェ校「アニメを読む」(静岡)
     7月24日10:30より「大人も楽しめるキッズアニメ」と題して『ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』を取り上げます。

    3.栄中日文化センター「アニメを読む」(名古屋)
     7月23日15:30から『新海誠作品』を取り上げます。『言の葉の庭』までのフィルモグラフィーを追いかけながら、新海作品の魅力に迫ります。最新作『君の名は。』の予習にどうぞ。
     →http://www.chunichi-culture.com/programs/program_166148.html

    4.NHK文化センター青山教室「アニメを読む」(東京)
     8月20日13:30から、こちらでも『新海誠作品』を取り上げます。
     →https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1088222.html

    5.オタクの学校(東京・浅草の模型塾)
     5月はお休みだったオタクの学校ですが、6月25日はいつも通り開催されます。15時からの僕のコマは、『新海誠作品』を取り上げます。予約始まりしたら是非。
     →http://modelkingdom.net/jj_index.htm


    Q&A

    「なぜなにアニ門」で質問を募集しています。「件名」を「なぜなにアニ門」でpersonap@gmail.comまで送って下さい。文面にハンドル(名前)も入れてください。 あるいは、アニメの門チャンネルの有料会員は、アニメの門チャンネルページの掲示板サービスが使えますので、そこに質問をしていただいてもよいです。メルマガの下にあるコメント欄でも結構ですよー。
     今回は『アニメの門チャンネル』に寄せられた3つの質問を掲載します。

    Q:先日、ゲーム会社「サイゲームス」がアニメやゲームの背景美術やデザインをてがける「草薙」を子会社にしたというニュースがありましたね。以前にも日本テレビがタツノコプロを買収したり、ソニーグループのアニプレックスがアニメ制作会社A1ピクチャーズを設立したりなど色々ありました。 この番組でも前にやったかもしれませんが、今後このような企業買収したり、会社を設立などはどうなっていくでしょうか? ご意見お聞かせください。(ペンネーム:千葉さん)

    A:TV局がアニメ会社を買収あるいは出資するというケースはここ数年の間にもちょくちょく見かけました。最近ではフジテレビがdavid production(『ジョジョ』の制作会社)を子会社化したのが話題になりましたね。このあたりの動きは「コンテンツ(キャラクター)の確保」と「(放送本数増大の中で~安定的に作品供給してくれるであろう制作会社の確保」が背景にあると考えられます。
     今回の買収の主体はゲーム会社ですが、アニメ制作スタジオを設けたばかりであり、その関連として美術スタジオも傘下に収めたと考えられます。昨今の本数増大で、美術スタッフの確保がままならない、という話も漏れ聞くので、そこへの対策を見越したかなり実際的な目的の子会社化と思われます。

    Q:最近、映像方面にとても目まぐるしい勢いを感じます。WOWOWがマヨイガで久しぶりに新作アニメを放送、ネットフリックスやアマゾンプライムが日本でサービスを開始、アベマTVの24時間無料ライブストリーミングサービス開始、などなど。従来からある動画配信サービスだと、Dアニメストアなどの携帯電話会社、ニコニコ動画やギャオなどの動画サイト、バンダイチャンネルなどのブランド、海外だとフール―、テレビ局各自の配信サービス、またティーバー。ところによってはコンサート映像配信もやってる所もあります。4月からのアニメだとカバネリとばくおんがアマゾンプライム、クロムクロがネットフリックスと独占配信も増えてきました。今後こういった独占をはじめ、契約チャンネルや動画配信サービスはどうなっていくでしょうか。ご意見お聞かせください。(匿名希望)

    A:少々極論気味にいうと、将来的にアニメの地上波放送離れはすすんでいくと思われます。有料配信から無料放送へというウィンドウ戦略が徹底されて、話題作・人気作(あるいはTV局が積極的に関与した企画)が最終的に地上派で無料で見られるという状態になるのがビジネス的に一番無理がないからです。とはいえ、日本において地上波は最強のメディアなので、そこからアニメがなくなるということもないでしょう。ただアニメビジネスの中のTV放送の地位が相対的にワンオブゼムの位置へと下がっていくのは避けられないと思います。そのかわりどこがメインになるか。現状ではNetflixやamazonプライムのようなSVODサービスなのではないかと思われるわけですが、果たしてどうなるか。

    Q:アニメやマンガにおいて、ある集団に外からやってきて場を引っかき回す役、いわゆる「ビジター」は、なぜか西日本からやってくる事が多く感じます。ガルパンのヒロイン・西住みほは、名前からしてそうですね。犯罪者が北に逃げるのは、北海道開拓時代の名残だろうと思いますが、どうして、ビジターは西日本からやってくるのでしょう。別に東北や北陸からやってきても良いとおもうのですが、藤津様の見解をお聞かせ下さいましたら幸いです。(匿名希望)

    A:決してそうとばかりは言えないように思います。そもそも外から来たキャラクターの代表的パターンである「田舎出身キャラ」は伝統的に東北弁です。これは'60年代の集団就職などが背景にあって成立したキャラクターだと思います。関西キャラは「田舎者ではなく、でも個性的」みたいな位置づけになっているのではないかと思います。  あと配信中にコメントがつきましたが「西住」には元ネタとなった軍人さんがいるそうなので、西から来たという意味はないと思われます。


    前回のアニメの門チャンネル

     前回のアニメの門チャンネルはアニメーション研究・評論の土居伸彰さんをゲストにお招きしました。主題は土居さんが設立した会社「ニューディアー」について、その目的や設立の動機などをうかがいました。  途中配信サーバーのトラブルがあり、大規模な中断があって視聴者の方にはご迷惑をおかけしました。  近日中に、改めて見られるように環境を整える予定ですので、しばしお待ちください。


    連載「理想のアニメ原画集を求めて」

    文・水池屋(コーディネート:三浦大輔)

    第19回『近藤喜文の仕事 -動画で表現できること-』

     この本が発行されたのは2000年。通販限定での取り扱いということもあり、当時にしか手に入らなかった本として長年希少な1冊でした。それが、2014年に新潟で開催された『新潟が生んだジブリの動画家 近藤喜文展』で図録として改めて発売されたことによって、現在では比較的手に入りやすくなりました。
     編集したのは「安藤雅司」さん。アニメーターとしてのキャリアをスタジオジブリから始め、現在も活躍されている方です。この本は、近藤さんに対する安藤さんの深い敬意が感じられる内容となっています。 『近藤喜文の仕事』は、一人のアニメーターの人生が詰まっている本でもあり、またそれを追いかけた一人のアニメーターの記録でもあります。

     この本には、原画だけでなく、設定やイメージボード、それから実現しなかった企画用のイラストなども掲載されています。どれも、形にならなかったのが残念なものばかりですが、絵柄としてもバリエーションがあり、様々な題材に取り組もうとされていた様子がうかがえます。
     もちろん、中には実際に作られた作品の資料もあり、『名探偵ホームズ』、『火垂るの墓』、『魔女の宅急便』などのイメージボードも見ることができます。設定では『赤毛のアン』、『愛の若草物語』、『火垂るの墓』、『おもひでぽろぽろ』を収録。
     作画監督としての仕事を見ることができる修正原画は、『赤毛のアン』、『火垂るの墓』、『おもひでぽろぽろ』が掲載されています。こちらは設定、修正原画を見比べられるだけでなく、設定以前の習作の絵から掲載されているので、習作→設定→修正原画の流れを見ることができる掲載の仕方になっています。
     原画の掲載は、ジブリで原画マンとして参加した作品が多いのですが、それ以外で多数掲載されているのが日本アニメーション時代の作品です。『赤毛のアン』、『未来少年コナン』、『トム・ソーヤーの冒険』、『愛少女ポリアンナ物語』と、主に近藤さんが一原画マンとして活躍されていた時代のお仕事です。
     展示のタイトルにもあるように、近藤さんはジブリの人というイメージが強いかもしれませんが、個人的にはそれ以前のお仕事も非常に面白いです。本に掲載されていない中にも、いま見ることで興味深いものはたくさん埋まっていると思います。

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     ところで、日本アニメーション時代、近藤さんは新人の育成に関わられていたそうなのですが、本の中で当時の思い出を佐藤好春さん、保田夏代さん、五味康さん、林浩一さん達が語っています。
     また、高畑・宮﨑駿作品研究所から出された『近藤喜文さん追悼文集 近藤さんのいた風景』にも佐藤好春さん、杉野左秩子さんの対談が掲載されていますので、詳しく知りたい方は合わせて読むと面白いのではないかと思います。
     実際、どのような指導がされていたのかという資料も『近藤喜文の仕事』に掲載されているので、その点でも興味深い本だと思います。
     近藤さんは、他にも『アニメーションの本―動く絵を描く基礎知識と作画の実際』の執筆にも参加されており、非常に教育熱心な方だったということが分かります。

     近藤さんに関連した本は他にも複数あって、資料の充実したジブリ関連の各書籍はもちろん、近藤さんの追悼特集の組まれた『アニメージュ』1998年4月号もおすすめです。
     また、『アニメージュ』での連載をまとめた『ふとふり返ると』ではイラストだけでなく、近藤さんが日常的に描いていたと思われるスケッチ的な絵も掲載されており、アニメーターとしての観察眼を感じさせてくれます。
     他にも、『耳をすませば(スタジオジブリ絵コンテ全集10)』では、宮﨑駿さんが描かれた絵コンテを途中まで近藤さんが清書しているものが見られます。
     『近藤喜文の仕事』にも、『耳をすませば』で近藤さんが監督として描かれた修正などが掲載されていますので、監督としての近藤さんのお仕事が気になる方は合わせて読むと良いかもしれません。

     近藤喜文さんが亡くなってから、もう18年です。いまアニメーターとして仕事をしている人の中には、近藤さんが亡くなった後に生まれた人もきっといることでしょう。
     そうした若い人たちの中でも、ジブリ作品などを目にすることで「近藤喜文」というアニメーターは一体どんな人だったのか知りたいという人たちがいると思います。
     作品はもちろん、『近藤喜文の仕事』をはじめとして、近藤さんの軌跡を残した本を辿ることで、何か分かることがあるかもしれません。
     安藤さんは、本の始めに「今、アニメーターを職業とする人、アニメーターを志す人に、そんな彼の仕事を見つめなおして欲しい」と書かれています。本という形で残ることで、後の人たちにも目にすることが出来るのが原画集の良いところだと言うことは、今までにも何度か書いたかもしれませんが、そうした実感を得られる言葉だと思います。

     この『近藤喜文の仕事』が購入できる『この男がジブリを支えた。近藤喜文展』は、現在は広島で8月末までの開催のようです(10月からは佐賀で開催)。『近藤喜文の仕事』は、現在は展覧会でしか買えないと思いますが、本が買えて、実物も見られる!という気分で行くと、かなりお得なイベントではないかと思います。

    (『近藤喜文の仕事 -動画で表現できること-』/発行:株式会社スタジオジブリ/2700円)

    『この男がジブリを支えた。近藤喜文展』
    『ふとふり返ると―近藤喜文画文集』
    『耳をすませば(スタジオジブリ絵コンテ全集10)』
    『アニメーションの本―動く絵を描く基礎知識と作画の実際』
    『近藤喜文さん追悼文集 近藤さんのいた風景』


    不定期アニメ日記

     6月6日に英・ガーディアン紙に『思い出のマーニー』をメインに、米林宏昌監督とプロデューサーの西村義明さんのインタビューが載りました。この西村プロデューサーの発言がいろいろ波紋を呼んでいます。

    ガーディアンの記事
    波紋を呼んだことを報じるハフィントンポストの記事

     twitterでも当然ながらさまざまな意見が出ているわけですが、いろいろともやもやしたので、順番に考えていきたいと思います。またtwitterでかなり初期にこの話題を紹介した方が、「ガーディアン紙の日本のアニメ産業における女性の少なさに関する質問に対して」と誤った紹介の仕方をしたために話題が逸れたところも多々あり、このあたりについても考えます。

    1)インタビュアーはどうして「果たしてジブリは、女性監督を起用するだろうか」という質問をしたのか。

     
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