どの町にも大抵“あのたたずまいの寿司屋”ってあるじゃないですか。“あのたたずまい”を説明すると、たぶん擦りガラスの引き戸で、のれんが掛かってて。だれが書いたのか分からないけどポエミーな書が飾ってあって、近所の自動車整備工場からもらったようなカレンダーが掛かってる、そんな感じ。なんか入りづらい。わかります。
でもね、僕はこう思ってるんです。「知らない土地に来たときこそ、町の寿司屋に入るべき」。いやむしろ、町の寿司屋に行くために旅行してもいいくらい。
ちょっと不思議な“町の寿司屋”の世界。僕なりの楽しみ方をご案内しましょう!
わたくし事務員G、仕事柄全国各地に行くことが多く、よく友達に「◯◯市に行くんだけど美味しい店どこかなぁ」と聞かれる事があります。そんな人にはよく「町の寿司屋に行ったらいいよ」と言うんですが、便宜上「町の寿司屋」と呼ぶ店には自分なりの定義があって、それをまず確認しておきましょう。まず、チェーン店ではない。回転寿司でもない。商店街で15年以上営業していて、たいてい夫婦で切り盛りしている。カウンターがあって、お好みで握ってもらえるようなお店。「ああ、うちの町ならあの寿司屋だな」といくつか思いつくでしょう。
ああ、もうひとつあった。重要なのは『醤油は小皿に出して、その都度お客さんが付けて食べる方式』を採用していること。全てのお寿司をカウンター中で、事前に醤油や塩や煮詰めのタレ等をお寿司に付けて出してくれるお店もあるんですが、そういう店は決まって値段高いんすよ…(`;ω;´)…だからこの定義としては除外することにしますね。
さて、では僕がなぜ「町の寿司屋推し」をするのか。僕がまず思うのは「好きな量だけ選んで食べられる」というところかな。僕、身長180cmと大きい方なんですがこう見えて少食でして…。普通のラーメン1杯でも食べ過ぎた感じになっちゃう。大きさが予想付いてるお店だったら良いけど、知らないお店に入って普通の大きさを頼んだら予想外に大きくてビックリ…なんてよくあることで。でもお寿司なら大体の大きさはわかってるから、お腹が満たされるまで食べればいい。小腹程度なら6カンくらいでもいいわけだし。
「それなら回転寿司でもいいのでは…」って?確かに、良いと思います。実際僕も、打ち合わせの直前に15分だけ時間があって、会議が長引きそうだから少しお腹に入れておきたい…なんて時は回転寿司に行ったりもしますから。
でも時間に余裕がある時なら、断然町の寿司屋をおすすめしますよ。「僕のために握ってくれてる」って感じがするの、なんだか風情があるじゃないですか。もし二人で入っても好きなネタだけ選べるから気が楽ってのもあるかな。僕はこれ、じゃあ僕はこれ。気を使う必要がないのがとっても楽。僕、もともとホテルマンだったってのもあるのか苦手な食材やアレルギーなど、いつも気持ち的に相手を気にしてばかり。気を使わずに大将がメニュー選びの手助けをしてくれるから、嬉しいポイントですね!
さっき、定義付けに「15年以上営業していて」…と書いたんですが、これも実は重要で。15年以上営業できたってことは、地元の人に愛されてるってことだと思うんですよ。それでなくても新しくて楽しいアミューズメントパークみたいな回転寿司屋が林立してる昨今ですから大変だと思います。チェーン店では味わえない空気が、そこには流れています。
“その土地と、その土地のおいしい物をよく知ってる”ってのも町寿司の魅力。地元に根ざしてるので、地元の人が普段食べてる物を置かないといけない。だからおのずと、食べ慣れたものが置いてあったりする。僕は北海道生まれで本州育ちなんですが、昔から家で食べていたものはちょっと特殊だったのかもしれません。氷下魚(コマイ)の干したものをあぶって、マヨネーズと醤油と一味唐辛子を混ぜて、それを付けて食べるのがポピュラーなんですが、こういうのは北海道じゃないとなかなか食べれませんからね。その土地で生まれ育った人にしてみれば、醤油が甘口だったり濃口だったりもそうですし、食べ慣れた地産品が当然のように出てくるのはうれしいでしょう。
逆に、旅行で初めて来た時なんかを考えれば名産品が揃ってるとも言えますよね。しかも寿司屋だから小さな器で出してくれる。観光客の集うような店に行ったら「はい名物の◯◯丼です!」ってドーンと出されてそれだけでお腹いっぱい…本当はいろんなものを少しずつ食べたいのに。それなら寿司屋で、たくさんの種類を少しずつ食べたほうがオトクな気がしません??
知らない先のまだ見ぬお寿司屋さんの世界。
もし機会があったらぜひ挑戦してみて下さい!
チャンネル会員さん向けにちょっとおまけ。
まぁ僕の家の近所にもそういう寿司屋が2軒あって。まさにこの土地で長らく営業しているようなお店。こないだそこに行ったんですね。
カウンターには常連さんでほぼ埋まっていて、僕はその一番端っこに座ったわけです。常連さんは「このあたりは昔こうだった…」っていう、よくある世間話をしているわけ。僕はこのお店はちょくちょく来てるけどそんな何十年もこのへんに住んでる人に比べたらぺーぺーですし。黙って大将と常連さんの話を聞いてた。
そういえば、この前、ふと「このあたりって昔はどんなかんじだったんだろう」と思ってネットで検索したら、40年〜50年まえのこの辺の写真が出てきた。「これはおもしろい!」とその写真をスマホに保存しておいたわけ。
「これどこかわかりますか」と大将に見せた所「うおおお懐かしい!昔のあのあたりだ!」と。ご常連さんも「え、見せて見せて!」と…僕は”したり顔”です。
「これはあそこだ〜!」「ああ○○ちゃんちの家の前よ!」と大盛り上がり。
「ちょっと、この写真、私にちょうだいよ!スマホに送って!!」と言うのは、今初めてお会いしたこの店の常連さん。「私も!私も!」と続くおばさまがた数名。
いや…盛り上がってくれたのは嬉しいんだけど、初めてお会いした人のケータイに写真を送るというかなり突拍子もない展開になってしまいました。
そこに「LINE使えばいいのよ!LINEやってるでしょあなた若いんだから!」
とおっしゃるおばさま。
固まる僕。
ファッショナブルな「友達リスト」のアイコン群の中に
突然現れる実写のおばさまがたのアイコン。
なんかこう授業参観みたいな画面になりました。
コメント
コメントを書くオチが秀逸
そういう寿司屋って、常連と話し込んでて一見客とは無言のイメージがある……
一度は入ってみたいなぁーって思ってるうちにつぶれてしまうパターンがちらほら