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武村正義氏:権力が移動する時首相官邸で起きていること
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武村正義氏:権力が移動する時首相官邸で起きていること

2012-08-21 09:01
    マル激!メールマガジン 2009年8月26日号<br>
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )<br>
    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――<br> マル激トーク・オン・ディマンド 第437回(2009年08月22日放送) <br>
    権力が移動する時首相官邸で起きていること<br>
    ゲスト:武村正義氏(元内閣官房長官・蔵相)<br> ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――<br> 8月30日は日本にとって歴史的な一日になるかもしれない。総選挙の公示後、大手新聞社 の情勢分析では、民主党が過半数を大きく超え、300議席をもうかがう勢いと報じられて いる。16年ぶりの、そして本来の意味では恐らく戦後初となる政権交代が、現実のものと なりつつある。しかし、政権を担った経験のない民主党政権は、日本を恙なく運営してい くことができるのだろうか。また、民主党の掲げる政治主導で、本当に政府は回っていく のだろうか。細川連立政権を官房長官として支え、権力の甘さと怖さを嫌というほど知る 元さきがけ代表の武村正義氏をゲストに迎え、細川政権の成功と失敗から、権力を手に入 れるとはどういうことなのかを、存分に語ってもらった。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 今週の論点 *自民党の時代の終焉を告げる総選挙 *政治改革のための細川連立政権 *権力を持つものの実感 *政治主導が抱えるリスク *細川政権が短命に終わった理由 *民主党へのアドバイス +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ ■自民党の時代の終焉を告げる総選挙 神保: 今日は、来たる総選挙で政権交代が起こり得ることに備え、武村さんに前回の政 権交代のとき、政権の中が一体どうなっていたのかをできるだけ伺いたいと思います。そ の前に、政権交代選挙と呼ばれている今回の選挙を武村さんはどのようにご覧になってい ますか? 武村: 私は自民党に決別をして飛び出した人間ですが、そのころから自民党の時代は終 わったという認識に変わりはありません。  それにしては随分と長続きしました。率直に言えば、森政権のときに自民党は終わって いたのかもしれません。それが突如、小泉さんという異例の役者が登場して、われわれ観 客を引きつける芝居を約5年半演じたものですから、10年くらい自民党の寿命が延びたと 見ています。そして、この選挙でそれが終わるのでしょう。 神保: 一方、政権を取りそうな民主党はどうですか? 武村: 一日も早く政権を取りたいという思いで頑張っているのは事実でしょう。しかし、 現実認識が少し甘いと思っています。財源問題だけでなく、政治主導で作ったマニフェス トにも欠陥があるように見え、民主党の言う政治主導とは一体何なのかという思いです。  私自身、政権交代に期待を持ち続けている一人ではありますが、国民の多くは終わりを 迎えた自民党に代わるものとして、民主党に消極的な支持をしているのではないでしょう か。民主党にはあまり調子に乗ってはいけないと言いたいですね。 ■政治改革のための細川連立政権 神保: 鳩山さん、菅さん、枝野さん、前原さんなど今の民主党の中枢を担っている人の 多くはさきがけ出身です。同時に今の民主党の理念や政策には、さきがけの理念やDNAが かなり反映されているように思います。そのさきがけを結党された武村さんに前回の政権 交代時の話を聞く上で、まずは細川政権誕生までの経緯を簡単におさらいしておきましょ う。  前回の政権交代前夜、88年のリクルート事件や92年の佐川急便事件など政治と金をめぐ る事件が続発し、政治改革への機運が高まっていました。そして、スキャンダル続きの竹 下派は跡目争いを起こし、それに敗れた小沢氏や羽田氏が竹下派を離脱することになりま した。彼らのグループは宮沢内閣不信任案に賛成し、93年7月に解散総選挙が実施されま す。この選挙の結果、分裂後の自民党は過半数割れとなり、細川連立政権の誕生へとつな がります。この連立政権は、もともと非自民であった政党と自民党から抜けてきた新生党 とさきがけが合わさった7党8会派で構成されたものでした。  まず、選挙後からこの連立政権ができるまでの経緯を武村さん、お話し頂けますか? 武村: 選挙の結果、共産党を除いても非自民でまとまることができれば、過半数を超え る状況でした。しかし、私たちは選挙が終わった時点では、非自民による内閣を作ろうと する明確な意思をまだ持っていませんでした。なぜかと言うと、7党8会派というのは幅が あり過ぎます。さきがけと古い社会党には距離がありましたし、経世会から飛び出した小 沢さんたちの新生党と一緒に組むのも考えられませんでした。小沢さんたちは政官財の癒 着を含め、まさに金権体質で、それを批判してきたのが私を含めたさきがけの仲間だった からです。しかし、このまま態度を決めないのも良くないと思い、田中秀征さんが日本新 党とさきがけで政治改革を実現する政権を作ろうと提案したのです。その考えに賛同する 政党なら短期でもいいので政権を組もうと。すると、非自民がすぐに結束し、新政権の第 一歩を踏み出しました。ですから、この連立は政治改革一点のためのまとまりであって、 半年か一年でそれをやり遂げた後は、また新しい政権を議論すればいいと割り切っていた のです。 神保: 当時の政治改革の中身はどのようなものでしたか? 武村: 政治改革の具体的な中身は私が書き、細川さんと田中さんが前文を書くことにし ました。私は中身を5項目にまとめ、衆議院を250:250の小選挙区比例代表並立制にし、 比例は全国ブロック制にする選挙制度改革や、企業献金の規正や連座制の強化といった政 治資金の透明化などを含めました。最終的に自民党との合意で選挙制度は300:200になり、 比例が減りましたけどね。 神保: しかも、小選挙区の候補者に投票すると、比例でも自動的にその候補者の政党に 投票される一票制か、小選挙区と比例で別々に投票する現行の二票制かでも問題になりま したね。一票制になると比例制を並立させても、小選挙区の結果で、比例代表の議席が配 分されるので、実質的には二大政党制に限りなく近くなります。一方で、二票制になると 小政党が生き残る余地が残ります。小沢さんは一票制を導入しようとしていましたから、 武村さんがいなければ、おそらく一票制になっていたでしょうね。 武村: さきがけは小沢さんの新生党より小さな党なので、小選挙区制を選ぶことは自滅 行為でした。しかし、あのときの党の利害論としては、当初の案は比例が全国ブロック制 で250議席というものだったので、比例で議席を確保できると甘く考えていました。ですが、 比例は200議席に減りましたし、自民党の主張で比例が地域ブロック制になってしまい、そ れは小政党にとっては予期しないことでした。 神保: 次はやや政局的な話題ですが、なぜ、最大勢力ではない細川さんが総理大臣にな ったのでしょうか?つまり、小沢さんが細川さんを擁立したのはなぜだと思われますか? 武村: 細川さんを首班にしたのは、まさに小沢さんの発想で、優れた感覚をもって決め られたと思います。マスコミを含めて世間の常識では、新生党の羽田さんが首相になると 思われていました。細川さんを首相にするという案は、最初は意外な発想に映りました。  小沢さんが細川さんに「総理をやってもらいたい」と言ったのは、選挙が終わって3日 目の朝でした。すぐに細川さんは、私と田中秀征さんと園田博之さんを呼び、非常に硬い 表情でそのことを伝えてきました。私はそれを小沢さんの謀略だと思ったのですが、細川 さんがそれを否定して小沢さんと話すように言うので、その日の夕方、私は小沢さんに会 いに行きました。最初は「今日の細川さんに言ったことはなかったことにしてください」 と小沢さんに詰め寄っていたのですが、小沢さんに「こういうとき、総理は新しい人でま とまりのいい人がいい。それで細川さんなんだ」と説明されたのです。私もその小沢さん の選択は一理あると納得しました。それで一週間後、細川さんと小沢さんと私の3人で合 意に至ったのです。 ■権力を持つものの実感 神保: 細川さんと武村さんは個人的な信頼関係があったので、武村さんが官房長官にな られました。そこで聞きたいのが、権力というものを手にすると何が変わっていくのかと いうことです。 武村: 私の答えはいい加減ととられるかもしれませんが、権力を握ったとか、権力の重 いポストに座ったとかいう実感はほとんどありません。ひょっとすると細川さんもそう思 っていたかもしれません。日々詰まっているスケジュールに対応をするのに精一杯でした。 経験したことのない新しい世界に入るので、そのポストの役目をこなすことにかまけてし まうのですね。これは新しく大臣になった人も同じでしょう。しかし、それで国民の暮ら しに大きな責任を持っている大臣を務めているのですから、それもおかしな話ですけどね。 神保: それは政治決断をするような場面はあまりないということですか? 武村: 政治決断は大小ありますし、それは毎日のようにあります。ハンコを押すという 意味だけでなく、別の大臣との軽い会話の中でも、ある問題に関して方針ができてしまえ ば、堅く言うとそれは権力に関わる合意になってしまいます。しかし、肝心の最も堅い場 所である閣議に関して言うと、官房副長官が法令を次から次へと朗読して、大臣は異議な しも言わず無言でサインするのに追われています。閣議というフォーマルな場所では、事 務次官会議以下で合意されているものを閣僚に上げ、事務的な合意を政治レベルで追認し ます。多くの人は議論する必要がないと思っているので、黙ってサインするだけです。そ れは問題ではありますが、実態はそうです。  そこで最高の権力を表明しているのですが、それでは権力を行使している実感はあまり ないですね。 神保: 武村さんは官房長官になられる前に、八日市市で市長をされ、それから滋賀県知 事になられましたが、総理官邸の権力と地方自治体のトップの権力ではどのような違いが あるのですか? 武村: 振り返ると、私は知事を12年務めたのですが、国会議員のときよりも知事のとき のほうが遥かに決断に次ぐ決断をし続けてきたという実感があります。知事は頂点で色々 決めることができます。やりがいもあったし、琵琶湖条例のような固有の実績を上げるこ ともできました。一方、内閣はいわゆる合議制で決定がされていきます。また、各省庁の 政策も最終決断をするのは形式上大臣ですが、与党や役人の間で議論されて上がってきた ものを覆すのは困難です。これでは誰がきちんと決断したのか分からなくなっていくので す。 ■政治主導が抱えるリスク 神保: 国政は武村さんがおっしゃられたように合議制で決定がなされるので、上がって きたものを突然ひっくり返せないようなところがあります。現在、そういう仕組みで動い ているのに、民主党は事務次官会議を廃止して、政治主導で政治を行うとしています。そ もそも実際、政治主導で政治ができるのでしょうか?また、政治主導にはどのようなリス クがあるのでしょうか? 宮台: 日本は国民が成熟していなかったので、天皇の官僚が政治を行うことになってい ました。戦後は天皇の官僚はなくなりましたが、国民の未成熟は変わっていないので、国 民が議会を操縦する代わりに官僚が議会を操縦する形になっています。これがいわゆる飯 尾潤さんが言う議会内閣制ならざる官僚内閣制なわけです。これは明治以降、近代化をす る上で最短コースをたどるために設計された合理的な仕組みです。しかし、当然ながら、 高度成長でパイが大きくなるにつれて、政官財の鉄のトライアングルができあがっていき ました。今はこの従来の成功モデルがうまく回らないことははっきりしています。一つは、 財政的に国を大きくできないから。もう一つは、流動的で複雑な社会環境に集権的な決定 では対応することができないからです。従って、官僚に任せる政治から自分たちが政治家 を選ぶことで内閣を操縦する人を選ぶ政治に変えることが必要になったのです。この必要 性に異論を唱える人はいないと思うのですが、この移行のプロセスで既得権益を引きはが される人たちが出てきます。その最大の被害者は官僚なのです。なぜかと言うと、彼らは 官僚内閣制の下で裁量行政を行っていますが、その裁量を手放さなくてはならないからで す。また、官僚が掌握していた情報も市民に見せなければならなくなります。その結果、 官僚たちのサボタージュが起こり得るわけです。また、警察・検察が様々な民主党の致命 的な情報を握ることで、民主党が彼らに頭が上がらない状況になることも予想されます。 これは権力が動くときの官僚の習性的な行動です。官僚は政策や理念をめぐって対立する のではなく、基本的に予算と人事が行動の動機づけになります。つまり、民主党が政治主 導を実行しようとすると、官僚のサボタージュやコントロールで政権がずたずたにされて しまう恐れがあるということです。 神保: とはいえ、民主党の政治主導に期待する向きもあります。武村さんは実際、政権 の中をご存知の身として、政治主導にはどういうリスクがあると思われますか? 武村: 今までの自民党政権より政治の役割を強めるという意味なら、異議はありません。 しかし、官を否定して政が官に全面的に指図するということは不可能です。あらゆる法律 はまず事務的な検討を経なくてはなりません。各省にまたがる事務的な検討を政治がやっ てもいいですが、ものすごい時間がかかりますし、それ以前に政治家はその能力を持って いません。うまく回すためには官の専門家を活用しなくてはならないでしょう。 宮台: 官僚はプロフェッショナルな集団です。それには誰もかないませんので、放って おけば大きな力を持ってしまいます。他の国では、その牽制の仕組みとして政権交代があ るのです。私が民主党に申し上げるとすれば、日本の行政官僚は従来の人事の制度の中で、 優秀で各省庁の内部をよく知っている人がたくさん辞めていることです。そういう方々を ブレーンとして政権内部に取り込むべきでしょう。その際、彼らに期待されることは、官 僚から様々な提案が上がってきたとき、もっともらしい理由はそれとして、官僚がその提 案を出す本当の理由は何か、その本当の理由の背後にある利権はどうなっているのかを明 らかにさせることです。やはり、官僚を敵にすることは損です。 武村: 今の話を聞いて20年前の金丸訪朝団を思い出しました。向こうで国交正常化の話 を議論していると、北朝鮮が作ってきた文章の中には、戦後も日本は賠償すべきという文 言が入っていました。私は官僚の経験がありましたから、この文章が国際的な常識に反す ることはすぐにわかりましたので、戦前の賠償はまだしも、戦後の賠償に応じることはあ り得ないと主張しました。しかし、隣の部屋で朝鮮労働党と日本社会党と自由民主党の3 党のトップが合意してしまいました。これを政治主導の外交の一つの例とすると、政治家 だけだとこういう大失敗をしでかすことがあるということです。 神保: 94年2月に提案され、翌日撤回された国民福祉税について武村さんに伺います。 これは財務省事務次官の斎藤次郎さんが小沢さんと組んで、消費税を国民福祉税にして税 率を引き上げようとしました。これまでの官僚と政治の関係という文脈において、この件 はどう理解すればよろしいでしょうか? 武村: 官僚が政治にノータッチということはありえません。予算は政府が作りますし、 法案も政府と議員が作ります。しかし、議員立法はなかなかできないので、大事な法案は ほとんど政府が作っています。予算と法律という最も大事な政治のマターを行政官がやら なくてはないのです。斎藤さんの国民福祉税事件は、国のためには悪い発想ではありませ んでしたが、官僚が政治の一番大事なところに自ら手を差し入れてうまくいかなかった悪 い例だと思います。政治の側も小沢さんや市川さんが呼応して、最後は総理大臣も渋々認 めてあの記者発表になってしまいました。政界からしても、国民的な世論からしてもあの ような形で決定することはできず、翌日撤回になりました。 神保: この件は官僚が政治の動きをした例ですが、逆に言うと政治主導の仕組みができ ているとこのような動きは止まりません。一方、これまでの官僚主導では、何も変えられ ないことが問題になっています。暴走のリスクと何も変えられないリスクは、どうバラン スを取っていくべきものなのでしょうか? 宮台: 斎藤次官のように目に見える形で暴走するならまだわかりやすいでしょう。それ よりも私が一番怖いと思うのは、戦前、戦中の失敗です。陸軍の大陸拡張路線の思想的正 当性はアジアの解放でした。海軍は石油、あるいはライフラインの確保を掲げて開戦を主 張していました。しかし、それらの大義を言う連中の本当の動機はそこにはなく、お互い のセクショナリズム的な対立が背景にありました。つまり、理念だけを見ると正しい政策 を官僚が主張しているとき、それを単純に受け入れてしまうと籠絡されてしまうというこ とです。政策の実行の際、誰が損をして、誰が得をするかを考えながら政治が動かないと、 実際は官僚の操り人形になってしまうわけです。 ■細川政権が短命に終わった理由 神保: 前回の政権交代の状態がもっと長く続いていれば、もしかすると今の日本の政治 が変わっているのではないかという思いがあります。なぜ、細川政権は8ヶ月で終わって しまったのでしょうか? 武村: 総理大臣になるのは大変ですが、辞めるのは簡単で、ただ辞めると言えばいいの です。細川さんが自ら決断をされたのが最大の理由です。ただ、政治的に説明させて頂く と、細川内閣は政治改革をやるという単一の目標を掲げて成立した内閣でした。紆余曲折 はありましたが、94年の1月に政治改革関連四法案が通って目的を果たしました。しかし、 そこから求心力がなくなってしまいました。  大きく言えば、政治改革の後の仕事を決めていなかったことが2つ目理由です。  また、3つ目の理由として、4月以降の予算委員会で細川さんが毎日、自民党から個人的 な過去のスキャンダルめいた話を根ほり葉ほり聞かれたことがあるでしょう。細川さんは 憔悴しきっていました。当の本人にとっては辛い日々だったような気がします。鳩山さん が首相になった場合、過去の「故人」献金問題で突かれると、本人は辛くてしんどい状況 になる可能性があると思いますね。 宮台: 私は鳩山さんでも誰であっても、それは事前に覚悟して頂きたいですね。民主党 が官僚に籠絡されないとわかったら、官僚は自民党と結託して色々なデータをぶつけてく るに決まっています。自民党もネタ元は官僚ですから。それは当たり前のことだと免疫を 作って頂かないと困ります。 ■民主党へのアドバイス 神保: 最後に現在の民主党について改めて聞きましょう。民主党の今回のマニフェスト、 及び政策全般を見たとき、民主党の原点として、さきがけの理念を引き継いでいる部分、 それと相いれない部分をどうお考えですか? 武村: 民主党には、日本新党・さきがけのDNAと新しく参加した小沢さんのグループの DNAが混在しています。私は、日本新党・さきがけの連中が目的にしてきた理念や基本政策 が民主党のエッセンスに生きていると信じていますが、現象面だけ見ると小沢さんの勢力 が非常に大きくなっています。今度の選挙は小沢さんが関わった新人がたくさん当選する でしょうから、これが新しい民主党の最大の懸念材料になるかもしれません。  マニフェストに関しても、私が懸念しているのは財源問題です。小沢さんの党首時代に ぶちあげた暫定税率廃止や戸別所得補償などがマニフェストに集約され、それが大きなア ドバルーンになっています。しかし、あまりにも金額が巨大すぎます。それ以前に、この 国の財政はすさまじく火の車です。公約を見つめれば見つめるほど財政の面からの実現性 に危惧を感じています。まさにバラマキそのものです。頑張って無駄の節約をすれば、1兆 円は捻出できると思いますが、本当にあちこちに巨大な無駄があって、10兆円を超える財 源が出てくるとはとても考えられません。  政権を取ったら、国民新党や社民党と政策協議をし直さなくてはなりませんから、その ときを生かして、一度約束した政策を実行するにしても、少し時間をかけるとか段階を踏 むとか、堅実に一歩一歩踏み出してもらいたいですね。結果的にマニフェストを修正して でも、着実に新政権のスタートを切って欲しいと思っています。 神保: 民主党がバラマキ的なものを入れないで政策を作ったとき、今の日本の政治状況、 有権者のレベルで政権が取れると思いますか? 武村: 今のこの局面は最初にも申しましたように、自民党が老いたという認識です。老 いた自民党が若い民主党にとって代わられるという宿命的なものを感じます。民主党が大 きなバラマキをしなくても、場合によっては消費税を上げると言っても、民主党政権の可 能性はあると思いたいですね。 〇〇出演者プロフィール〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 武村 正義(たけむら・まさよし) 1934年滋賀県生まれ。62年東京大学経済学部卒業。同年自治省入省。滋賀県八日市市長、 滋賀県知事を経て、86年衆院初当選(自民党)。 93年新党さきがけ結成、代表に就任。細川内閣で内閣官房長官、村山内閣で大蔵大臣を歴 任。現在、徳島文理大学大学院教授、麻布大学客員教授。著書に『小さくともキラリと光 る国・日本』、『私はニッポンを洗濯したかった』など。 神保 哲生(じんぼう・てつお) ビデオジャーナリスト/ビデオニュース・ドットコム代表。1961年東京生まれ。コロンビ ア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。AP通信記者を経て93年に独立。99年11月、 日本初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を設立。著 書に『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』、『ビデオジャーナリズム― カメラを持って世界に飛び出そう』、『ツバル-温暖化に沈む国』、『地雷リポート』な ど。ビデオジャーナリスト神保哲生のブログ(http://www.jimbo.tv) 宮台 真司(みやだい・しんじ) 首都大学東京教授/社会学者。1959年仙台生まれ。東京大学大学院博士課程修了。東京都 立大学助教授、首都大学東京准教授を経て現職。専門は社会システム論。博士論文は『権 力の予期理論』。著書に『制服少女たちの選択』、『14歳からの社会学』、『日本の難点』 など。宮台真司オフィシャルブログ(http://www.miyadai.com) 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 http://www.videonews.com/ 〇〇〇〇〇
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    最終更新日:2024-04-24 20:00
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