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マル激!メールマガジン 2026年2月18日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1297回)
高市自民党はいかにして歴史的勝利を勝ち取ったのか
ゲスト:高安健将氏(早稲田大学教育・総合科学学術院教授)
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高市自民党はいかにして歴史的勝利を勝ち取ったのか。
 2月8日に投開票された衆議院選挙で、自民党は単独で316議席を獲得し、戦後初となる「単独3分の2超」という歴史的圧勝を成し遂げた。比例名簿に登載した候補者数が足りず、14議席を他党に譲るという異例の事態まで生じるほどの地滑り的大勝利だった。
 一方で、選挙直前に立憲民主党と公明党が合併して急ごしらえで誕生した中道改革連合は、選挙前の172議席から49議席へと大敗。共同代表を務めていた野田佳彦氏と斉藤鉄夫氏は責任を取り辞任し、2月13日に行われた代表選では小川淳也氏が新代表に選出された。小選挙区では自民党の249議席に対し7議席しか取れない、二大政党の一角を占める中道改革連合としては文字通りの完敗だった。
 2009年の政権交代選挙で民主党が308議席を獲得した際、日本社会には歴史が動いたというある種の熱狂感があった。しかし今回、自民党はそれを上回る316議席を獲得したにもかかわらず、当時のような熱狂や高揚感はほとんど感じられない。それなのになぜこれほどの大勝が生まれたのか。
 この点について、早稲田大学教育・総合科学学術院教授で比較政治学を専門とする高安健将氏は、高市首相の個人的な人気が自民党の勝利に寄与したことは認めつつも、「選挙期間の短さ」と「ネット広告の力」を自民党大勝の一因として挙げる。
 高市首相が1月19日に解散を発表した記者会見の内容を見ても、自民党側は明らかに周到な準備を整えていた。これに対し中道を含む野党陣営は、まさか政権が来年度予算の年度内成立を先送りしてまで真冬の選挙に打って出るとは予想できていなかった。特に選挙直前に結党された中道改革連合は、その理念や政策はおろか党名を有権者に浸透させることもできないまま選挙を戦わなければならなかった。明らかに準備不足であり、不意打ちを喰らった形となった。
 高安氏はまた、いわゆる「7条解散」の問題点も指摘する。衆議院で多数を握る側が、自らに有利なタイミングで解散・総選挙を打てる構造は、準備の整った政権与党に圧倒的に有利に働く。本来、憲法7条は国民の意思を議会構成に反映させるための制度設計であるはずだが、政権の都合で運用されるようになれば、有権者の判断が十分に反映されない結果を招きかねない。
 今回も高市政権は自民党独自の情勢調査で自民党圧勝の観測が出る中、今選挙をすれば必ず勝てるとの確信を得た上で、万難を排して解散に打って出た。7条解散は、独自に大規模な情勢調査を行い、自分たちに有利な状況にあると判断できる時に首相が自由に解散総選挙に打って出ることを可能にする、明らかに与党に圧倒的に有利な制度だった。
 もう1つ、今回の選挙で大きな役割を果たしたとされるのが、ネット広告の威力だ。高市首相が登場する自民党の30秒のYouTube動画の1つは、投稿から投票日までに約1億6,000万回再生された。他の動画よりもその動画だけが突出してアクセス数が多いことから、その動画のプロモーションに莫大な広告費を注ぎ込んだ結果だと考えられる。
 テレビCMとは異なり、若年層を含む幅広い層に直接リーチできるネット広告は、従来の選挙戦術を大きく変えつつあるが、選挙期間にまでネット広告を自由に打てることになると、資金が豊富な政党が圧倒的に有利になってしまう。
 一方で、中道改革連合が大敗した背景として、高安氏が強調するのは「若い世代へのメッセージの欠如」だ。単にSNS戦略が下手だったというレベルの問題ではなく、そもそも若者に向けた政策的な中身がほとんど提示されていなかった。雇用、住宅、教育費、将来不安といった若年層が直面する具体的課題に対し、どのようなビジョンを示すのか。その点で中道側は有権者に訴えかける言葉を持たず、結果として若い世代から見放された格好になった。
 さらに高安氏は、国会がなかなか刷新されない背景として、小選挙区で敗れても比例代表で「復活当選」できる「重複立候補」の問題を挙げる。小選挙区制は有権者がノーを突きつけた政党をこてんぱんに敗北させることを可能にする制度だ。しかし、小選挙区制で敗れた候補者が重複立候補によって議員として生き残ることが可能になっていることが、政界の抜本的な刷新の妨げになっていると高安氏は指摘する。
 比例区を残すことで小選挙区制の過激な変化を緩和させる制度には一定のメリットがあるが、小選挙区制で「落選」の烙印を押された候補を比例区で復活させる重複立候補制度は、有権者の政治参加の意欲を削ぐことにもつながり、制度の意図にも反する。
 「高市フィーバー」と言えるほどの高市首相個人への熱狂的支持が盛り上がっていたわけでもない中で、なぜ自民党はこれほどの歴史的勝利を収めることができたのか。そして、中道勢力はなぜ若い世代からの支持を失い続けているのか。早稲田大学の高安健将氏を迎え、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司とともに、今回の選挙結果の分析とそれが露わにした日本政治の構造的問題について議論した。

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今週の論点
・自民圧勝の背景にあるもの
・中道のメッセージはなぜ若い世代に響かなかったのか
・ネット選挙の実相
・今回の選挙で改めて浮き彫りになった選挙制度の問題点
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■ 自民圧勝の背景にあるもの
神保: 選挙で衝撃的な数字が出たので、その中身をしっかり見ていきたいと思います。宮台さんはまず今回の選挙結果を総論的にどのように受け止めていますか。

宮台: 僕はいつも通り大歓迎です。ほとんどフリーハンドになった状態でやりたいようにやらせれば沈没します。エネルギー問題や、皇室の問題についても天皇を革命の駒にすることも可能になるかもしれません。そういう意味でもできるだけ過激にやってほしいと思います。

神保: 加速主義的な立場ですよね。事前の下馬票で自民党の優勢は報じられていましたが、それにしても大勝しています。

宮台: フィーバー感がないにもかかわらず大勝していたというのがすごかったですよね。

神保: 誰がどこに投票したのかについては見る必要があります。7条解散やネット広告など、今までも言われていながら改善しなかった問題が明らかになりました。もともとネット広告については参政党や国民民主党が早くに手をつけて支持率が上がりました。しかしいよいよ自民党がお金を注ぎ込みそれをやり始めれば、ネット広告が上手い政党がいくつかあるといった話ではなくなる可能性があります。

 マスメディアは意味をなさなくなり、完全にネット選挙に移行する1つのきっかけになる可能性もあります。しかし本当にそれで良いのかという問題があり、アメリカではSNSの子どもへの影響で集団訴訟が起きています。その槍玉に上げられているものが、無限にスクロールができることと、自動に出てくるという問題です。今回の選挙ではそれがフルに使われました。その結果、案の定、若い世代の自民党の得票は今まで比べて大きく伸びています。

 今日のゲストは早稲田大学教育・総合科学学術院教授の高安健将さんです。316議席という数字は前代未聞ですが、まず政治学者としてどう見ていますか?

高安: 何かこれまでと違うことが起きています。大きなストーリーとしてはインターネットの問題があると思いますが、伝統的な政治学の考え方で言うと、総選挙は民意を確認して一定期間政権を預けるための機会なので、有権者がきちんとそれまでの業績を見て判断する時間が必要です。しかし今回はそういう時間が用意されず、チャンピオンが準備できたら試合をするようなものでした。それは高市さんの、ものすごくよく練られたスピーチに表れていていました。
それに対して野田さんや斉藤さんのスピーチは掘っ建て小屋のようなものでした。この差を考えた時に、もちろん野党が準備していないということは問題ですが、いきなり選挙が来るというのは有権者にとっても良くないことです。しかしそれで勝ってしまいました。選挙運動期間も16日で、これも人に考えさせないための短さです。

 政権と政策を変えたので必要な解散だったとは思いますが、問題は2024年に一度権力が構成されたにもかかわらず、自分たちが気に入らなかったのでもう一度首班と政策を変えてやり直しをしたことです。維新の大阪都構想とも通じる点がありますが、良いと言うまでやり続ける。そういう解散の仕方は有権者からすれば怒った方が良いと思います。 
マル激!メールマガジン 2026年2月11日号
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1296回)
なぜ日本では政権交代が起きず野党再編も進まないのか
ゲスト:山本健太郎氏(國學院大學法学部教授)
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 衆議院総選挙の投開票を翌日に控えた日本政治は、大きな転換点を迎える、はずだった。
 ところが、各党や主要メディアの情勢調査によれば、与党・自民党が単独過半数を視野に入れる圧勝の勢いだという。その一方で、立憲民主党と公明党が合併して誕生した「中道改革連合」は議席を半減させる見通しだとされる。
 中道勢力の結集によって政界再編の狼煙が上がるのではないかという期待は、選挙戦が進むにつれて急速に萎んでいった。結果次第では、過去2回の国政選挙で見られた「自民党の過半数割れ」という流れを受けて、野党再編が一気に進む可能性もあったが、現状はむしろ「自民党一強」時代への回帰が始まっているように見える。
 しかし、現在の政党配置は理念や政策ごとにきれいに整理されたものとは言いがたい。自民党の内部には、安倍晋三元首相や高市早苗首相に象徴される保守色の強い潮流と、石破茂元首相や岸田文雄元首相に代表される比較的リベラルな潮流が同居しており、歴史的に見れば別々の政党になっていても不思議ではない構成だ。一方で、野党側も一枚岩ではない。立憲民主党は今回、公明党との合併にあたり、安全保障政策で従来の左派色を抑えた路線を打ち出したが、党内には拙速な路線変更に対する不満が根強く残っているとされる。
 理念や政策が整理されないまま政党が編成されていることが、有権者にとって「選びにくい政治」を生んでいるという構造的問題が横たわっている。
 政界再編が求められる背景には、現在の政党分布が有権者の政治意識と十分に対応していない可能性がある。昨年のマル激で北海道大学の橋本努教授は、従来の護憲左派とは異なる、穏健で現実志向の「新しいリベラル層」という一大勢力が生まれているが、その受け皿となる政党が存在しない問題を指摘していた。にもかかわらず、日本の政党システムは長年にわたって自民党を中心とした構造から大きく動いていない。
 小規模政党の誕生と消滅は繰り返されてきたものの、結果として政権交代に結びつくほどの大きな再編には至らなかった理由について、政界再編を専門とする山本健太郎・國學院大學教授は「政党の内部統合の文化」の差を指摘する。自民党では、意見の違いがあっても最終的な意思決定には従うという慣行が長年かけて形成されてきた。一方、野党側では意思決定プロセスが安定せず、対立が生じるたびに分裂と再編を繰り返してきた。
党内に路線対立を抱えていても、重要な局面で一枚岩になれる自民党と、新進党や民主党との大きな違いがそこにあると山本氏は言う。
 また、中道改革連合が伸び悩んでいる理由について、山本氏は、立憲民主党が長年背負ってきた「政権担当能力がない」というイメージの影響を挙げる。与党経験の長い公明党と合併することで政権担当能力を示す狙いもあったが、有権者の受け止めは必ずしもその狙い通りにはならなかった可能性が大きい。
 そもそも「政権担当能力」という言葉自体、明確な定義を持たない曖昧な概念であり、有権者の印象に大きく左右される。政治的な実績や政策の具体性よりも、「与党らしく見えるかどうか」というイメージが選挙結果を左右している側面も否定できない。
 政界再編が進まない背景には、選挙制度の問題も大きく関わっている。1994年の選挙制度改革により導入された小選挙区比例代表並立制は、「大きな政党でなければ小選挙区では勝てない」という圧力を生み出した。その結果、1994年末には新進党という大規模野党が誕生したが、短期間で崩壊。その後の民主党政権も3年余りで終焉を迎えた。
 現在、小選挙区制の下では、与党と野党第一党が連立を組むような大胆な再編は現実的ではない。実際、自民党と日本維新の会の連立合意文書には「中選挙区制の導入を含めた検討」が明記されており、国会の選挙制度協議会でも制度改革が議論されている。とりわけ現在超党派で議論されている「中選挙区連記制」は、1選挙区から複数人を選出し、有権者が複数候補に投票できる制度として注目を集めている。
 しかし、山本氏は、選挙制度改革には本来、明確な政治哲学が必要であるにもかかわらず、現状では各党が「自党に有利な制度」を求めているように見える点を問題視する。また、中選挙区連記制は、異なる政党の候補に投票する有権者が増えることで、政治の「個人化」を強め、かえって政党政治を弱体化させる可能性もあると指摘する。
 衆院選の結果次第では、日本政治は再び「自民党一強体制」に回帰し、政界再編の機運は大きく後退する可能性が高い。しかし、政党の内実と有権者の政治意識のズレ、野党の統合力の弱さ、そして選挙制度という構造的制約が解消されない限り、「政権交代が起こらない日本政治」は固定化していくことが避けられないだろう。
 政権交代が起きない日本の政治の構造的な問題と政界再々編の可能性などについて、山本氏、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。また、番組終盤では、衆院選と同時に行われる最高裁判事の国民審査の争点と問題点にも触れた。

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今週の論点
・高市人気はどこから来るのか
・「政権担当能力」というマジックワード
・中選挙区連記制のリスクとメリット
・最高裁国民審査―われわれが知っておくべきこと
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■ 高市人気はどこから来るのか
神保: 2月8日に衆議院選挙があります。自民党が独自に行っている情勢調査では勝ちが見えてきているとのこと。最新のデータを見ると自民党がプラス59ぐらいとなり、中道はマイナス53ぐらいとなります。中道の票がほとんどそのまま自民に移るという調査結果ですね。その割には「高市フィーバー」があるような感じではありません。2009年に民主党が308議席を取った時にはちょっとしたブームになりましたが、普通は300近くいったらフィーバーです。それを考えると今回なぜこういう数字が出ているのか不思議なところもあります。

宮台: 謎が2つあります。1つは全くフィーバー感がないのに事前予測では自民が圧勝でだということ。もう1つは女性の高市支持者がかなり高い割合を占めていることです。小池百合子のようなケースもあり、彼女は比較的女性に優しい政策を出していますが、高市早苗にはそれがありません。常道の解釈としては、期待水準が非常に低い状態だということです。その結果人々は、支持するから投票するというよりも、この党には投票できないという消極的支持で高市政権に投票しているのだと思います。

神保: 高市さんは内閣支持率も高いですし初の女性首相です。また一部の岩盤支持層にとっては期待する政策をやってくれるのではないかという思いもありますが、これは高市自民の勝ちというよりも中道の一人負けかもしれません。小選挙区制という制度の下では、中道が落ちれば自民が勝ちます。

 公明の議員はほぼ全員比例に回ったので、小選挙区の「立憲」対「自民」の構図は変わっていません。本来は創価学会票が入ればかなりの数を取れるはずでしたが、むしろマイナスになった部分があります。

宮台: 公明と合体したことによって、立憲の積極的支持層がごっそり抜けた可能性が高いと思います。 
マル激!メールマガジン 2026年2月4日号
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1295回)
5金スペシャル映画特集
映画がコミカルに描けば描くほど際立つ絶望と向き合う
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 最近コメディ映画があまりヒットしないのは、現実が映画以上にコミカルになっているからなのかもしれない。
 月の5回目の金曜日に特別企画を無料でお送りする5金スペシャル。今回は前半で衆院選のマル激的争点を、後半でコメディではないのに笑うしかない題材を描いた映画とドラマを取り上げた。
 今回の選挙で高市首相は、自身が総理大臣を務めることの是非や、日本維新の会との連立政権が目指す政策について国民に信を問うとしている。メディアは消費税や社会保険料の引き下げの是非など、庶民の懐に入るおカネの話ばかりに終始しているが、それは高市政権の争点隠しに手を貸しているだけだ。実際、自民党の総裁選直後に取り交わされた自民党と維新の会の連立政権合意書には、経済財政政策や社会保障政策以外にも、日本という国の形を根幹から変えることになる従来路線の大規模な変更も多く含まれている。
 高市首相がこの選挙の意味は維新との連立の信を問うことだと述べ、選挙で信任を受ければそれらの政策を「力強く実現していく」と断言している以上、連立政権合意書に挙げられた政策がこの選挙で本来問われるべき争点でなければならないはずだ。今回のマル激の前半では連立政権合意書の中身を厳しく検証した。
 後半の映画・ドラマ特集では、次の3作品を取り上げた。
・『エディントンへようこそ』(2025)アリ・アスター監督
・『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』(2025)久慈悟朗監督
・『プルリブス』(2025)ヴィンス・ギリガン監督
 アリ・アスター監督の『エディントンへようこそ』は、コロナ禍のニューメキシコ州エディントンという架空の田舎町を舞台にした作品だ。マスク着用をめぐる対立をきっかけに、保安官ジョー(ホアキン・フェニックス)はエディントン市長選に出馬し、現職のテッド(ペドロ・パスカル)と争うことになる。古き良きアメリカというトランプ的な世界観と、BLM運動や巨大企業のデータセンター誘致といった民主党的な世界観が対立し、登場人物同士の会話はまともにかみ合わない。
やがてジョーの妻やその母は陰謀論に飲み込まれ、家庭は崩壊し、最後は予想外に暴力的な展開へと突き進む。
 『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』は、武田一義氏の漫画を原作とするアニメーション映画。1944年9月15日から約2カ月半にわたり、パラオ南西部ペリリュー島で続いた「ペリリュー島の戦い」を題材にしている。主人公たちは極限状況の中でなんとか生き延びようとするが、戦争での死を美しく飾り立てる矛盾や、最後には仲間同士で殺し合うにいたる狂気に直面する。アニメだからこそ、戦争の残酷さを実写で真正面から描くよりも、戦争の本質的な問題点が冷静にはっきりと理解できる作品だ。
 『プルリブス』はApple TV制作のドラマシリーズだ。ニューメキシコ州アルバカーキで暮らす小説家のキャロル・スターカ(レイ・シーホーン)が、ほとんどの人類が集合意識化してしまった世界を元に戻そうと奔走する。自我を失うことへの抵抗と、孤独には抗いきれない人間の弱さがよく描かれた秀作だ。
 3作品はいずれも、あえてコミカルな表現が用いられているところがあるが、それは人間の営みが持つ滑稽さへの皮肉でもあり、描かれているテーマはどれも重い。衆院選を前に、政権の手のひらでメディアが踊らされ、その手のひらで人々が踊らされている現状を見つめ直す契機ともなり得る内容だ。
 衆院選と3つの映画・ドラマ作品を題材に、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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今週の論点
・衆院選のマル激的争点
・『エディントンへようこそ』に見る近代社会の虚構
・『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が問う戦争の本質的な問題点
・完全に平和なディストピアを描いた『プルリブス』
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■ 衆院選のマル激的争点
神保: 今日は今年初めての5金企画となります。前半では選挙の話をしたいと思いますが、後半は映画・ドラマを3本用意しています。今回の映画・ドラマは総じてどういう作品ですか?

宮台: 楽しい映画ではありません。コミカルにやっている部分もありますが、それでも重いなと。

神保: 人間が実際にやっていることがコミカルだという。逆に大問題なんですよね。今の選挙を考えると、見る人が見ればコミカルに重いですね。
今回の選挙について気をつけて報道を見ていましたが、僕からするとメディアは完全に政権の手のひらの上で踊らされているように見えます。今井尚哉さんが政権にいますし、今井さんの下で安倍さんのスピーチライターをしていた佐伯耕三さんも呼び戻されています。高市さんはもともと安倍シフトでしたが、安倍さんのやり方をそのまま真似しているのにメディアはまんまと乗っています。それはバカだからなのか、あるいは得だから分かっていて乗っているのか、区別がつかなくなっています。

 安倍さんのやり方は経済問題をとにかく前面に出すことでした。どの世論調査を見ても有権者の一番の関心事はお金の問題で、景気や消費税といったものです。そこを前面に出しながら、後ろでは国の形を変えるような路線の変更をするんです。安倍政権では集団的自衛権の行使容認や共謀罪など、色々とやりました。しかし前面には経済問題が出てくるのでそれに注目が集まってしまい、メディアもそれに乗ります。

 高市さんは今回まさにそのやり方をしています。今回は消費税が議論の的になっていますし、「責任ある積極財政」を謳っています。これも大事です。大事じゃないと言っているわけではありませんが、有権者の目がそこに向いている間に実は何をしようとしているのかを、なぜここまで見ずにいられるのかが分かりません。

 自民党が行った選挙の情勢分析調査の結果があります。最初は1月4日~8日、その後は1月21日~25日に行われました。それぞれの選挙区についてA、A-といった形でどれくらい優勢かまで含めて全てランク付けしたもので、かなり詳細に選挙区ごとの情勢分析をしています。選挙が始まるとこうした情報は報道できなくなるので貴重な情報だと思います。

 1月21日~25日の調査では、自民党が小選挙区で177、比例代表で65、合計242となっていて単独過半数を超えています。これに維新を合わせると279になり、過半数を46も超えます。1月4日~8日の調査では、自民党は小選挙区で199を取るとなっていました。トータルでは自民党と維新で295を取るということで、高市さんが解散に踏み切る前提になったのはこの数字だったということです。自民党だけでも過半数を取れるという結果を見て今がチャンスだと判断したんです。

 その後に中道改革連合ができたことで、トータルでは23減りましたが、これが現状です。中道改革連合が全然浸透していないことや、公明党の創価学会票が必ずしもそちらに入っていないというのはあると思います。これはある意味で当たり前です。これまで公明票は自民党に入っていて立憲はついこの間まで敵だったので、突然今回からこちらに入れろと言われてもすぐにそうならない人が出るのも分かりますよね。 
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ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、毎週の主要なニュースの論点を渦中のゲストや専門家らと共に、徹底的に掘り下げるインターネットニュースの決定版『マル激トーク・オン・ディマンド』。番組開始から10年を迎えるマル激が、メールマガジンでもお楽しみいただけるようになりました。

著者イメージ

神保哲生/宮台真司

神保 哲生(じんぼう・てつお) ビデオジャーナリスト/ビデオニュース・ドットコム代表。1961年東京生まれ。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。AP通信記者を経て 93年に独立。99年11月、日本初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を設立。 宮台 真司(みやだい・しんじ) 首都大学東京教授/社会学者。1959年仙台生まれ。東京大学大学院博士課程修了。東京都立大学助教授、首都大学東京准教授を経て現職。専門は社会システム論。

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