「プログレッシヴとは革新ということである」

プログレ(プログレッシヴ・ロック)と表現される音楽が持つ意味は、革新的、進歩的という言葉と近いニュアンスになると思います。
僕がプログレにこだわるのは、その言葉の持つ深さと対峙していたいからです。

クリムゾンキングの宮殿(1969年)一般的にクラシック、ジャズ、変拍子をロックに取り入れた音楽をプログレッシヴ・ロックと言います。
確かに1969年にキングクリムゾンがアルバム『クリムゾン・キングの宮殿』で世界に衝撃を与えた音楽にはそれらの要素があります。
しかし、それはあくまでスタイルにすぎません。
当時、これぞプログレだ、革新的だと彼らが言われた所以は、楽曲と演奏が生み出す昂揚にあったと思います。

プログレッシヴ・ロックは音楽のスタイルではありません。
時代性の中で古典もポップスをも敬愛し、その結果、独創的な音楽を生み出す精神力。
それがプログレッシヴ・ロックだと思います。

過去を消去して新しい音楽を作り出す手法もあるかと思いますが、
遺伝子や縁といったものも含めて、少なからず歴史を受け継ぐ運命を背負っているのが人間です。
むしろ、過去を尊重することがこれからの時代を生きていくために必要になると思います。

このたび、僕がプログレッシヴ・ロックを再開するのは懐古主義に囚われたからではありません。
新しく生み出されるものと、過去の遺産。
どちらをも尊重していく心を伝えていきたいと思ったからです。
過去の名曲を新しい技術であるボーカロイドに歌わせたのは、そんな想いからです。

これまでの音楽を内包し、これからの音楽に通じる音楽性。
そんなプログレッシヴ・ロックを見つめながら、新しい地平線に向かっていきたい。
その決意をここにお伝えし、創刊の辞とさせていただきます。

竹川 真(Arch Angel編集長)