author:岩SHOW

僕のレガシーデビューは赤単だ。それも「歩く火力」満載のバーンっぽいデッキだ。「歩く火力」というのはターン終了時に生け贄に捧げるという1ターンしかもたない短い賞味期限ながら、クリーチャーの域を超えたパンチ力を持った連中のことを指す。最近はこういうカードがグッと減ったように思う。昔は1セットに1枚はこういうパンチの利いたカード用の枠が設けられていたものだ。《ボール・ライトニング》という偉大すぎる第1号は、過去多くのトーナメントで輝きと火花を放った。それなら4枚手元にあるし、他に《火炎破》や《溶岩の撃ち込み》とかあるからデッキになるやん!そう思って会場へと持ち込んだ。

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焼いたり焼けなかったりを数度繰り返し、最終戦でいつぞや愛情を書き連ねた「The Rock」の系譜のデッキと当たった。これが運命的な出会いというか、ノリの良い非常に楽しいゲームになった。この時の対戦相手とは友人となり、多くの思い出を残していくことになるのだがこの時はそこまでハチャメチャな日々が待っているとは露程も知らない。勝敗はというと、《包囲の搭、ドラン》のおかげで《ボール・ライトニング》が3マナ1点火力に成り下がって余裕の投了。この頃は今ほどバーンもはっちゃけてなかったなぁ。《ゴブリンの先達》とか出てくるのも随分と先の話だしね。何にせよ心が折れたので、歩く火力Deck Winは封印。ありがとうボーライ!いつまでもストレージで僕のことを見守っていてくれ!


続いて組んだのが「ゴブリン」だ。《ゴブリンの女看守》によるシルバーバレット(状況に応じて1枚挿しのカードをサーチすること)、《ゴブリンの首謀者》でガッツリアドバンテージ。こんな楽しいデッキもないよなと思い、「オンスロート」時代に蓄えていたゴブリン資産に加えてちょっとの出費でデッキは完成。当時は《霊気の薬瓶》800円、《不毛の大地》3000円とかで揃えられたのが今となっては信じられない。それだけ古いカードの需要が上がってるんだよなぁ…

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ゴブリンは最高に楽しく、また強いデッキであった。正面からぶつかっては《タルモゴイフ》に絶対に勝てない1/1と2/2の群れを、正しいプレイングで導いてやれば4/5バニラなんてなんのそのと乗り越えていく様が「マジックをやっている」感をもたらす。当時流行っていた「CTG」に強いのもセールスポイントだった。《師範の占い独楽》と《相殺》でロックをかける、今でいう「UW奇跡」のご先祖様なのだが…ゴブリンの決め手は3,4マナという《相殺》に引っかかりにくいマナ域だし、そもそも《ゴブリンの従僕》《霊気の薬瓶》という1マナ域の先兵たちがカウンターを嘲笑ってくれるのだ。

楽しくて勝てるゴブリンだが、レガシーの魅力はそのデッキの多様性である。というわけで、いろんなデッキを見ているとこっちも触りたくなってくる。そこで目を付けたのが、当時これまた比較的安価に組めた「ドラゴン・ストンピィ」だ。パーツとしては当時一番高かった《梅澤の十手》は持っていたので、格安で2マナランドと《虚空の杯》他妨害パーツを、各種大会で得た商品券で買ったり賞品カードをトレードに回して終了だ。今はそんなこととてもじゃないが気軽に言えない額になった(特に《裏切り者の都》ね)カード群だが、なんとか無理なく揃えたのでデッキを組み、大会に持ち込む。

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「ドラゴン・スントンピィ」は理想的な動きが出来た時の爽快感は他のデッキの比ではない。僕は《月の大魔術師》を崇拝しているフシがあるので、なおのことだ。1ターン目《虚空の杯》X=1で守ってやりながらの2ターン目着地で実質ゲームオーバーは多々あった。…しかしまあ、なんとも初手依存の高いデッキである。というか、自分との戦いをフルラウンド強いられる。朝から競馬場に行って、最終レースまで1度も外さずに当て続けるなんざ常人に出来ることではないでしょう。というわけで、結局ゴブリンに還るというか、ドラストはあくまで箸休め・気分転換デッキとして遊ぶようになりあくまでも本筋はゴブリン、というスタイルでレガシーを楽しむ日々が続いた。


ゴブリンは一時期しっかりと練習を重ねて、その回し方にも自信がついた。そうして臨んだのが第1回「日本レガシー選手権」だ。当時のBIG MAGIC常連で車乗って、大雨の中遠征に行ったのが懐かしい。初戦でいきなり同行した友人と当たり、しかも一緒に調整したゴブリン同士のマッチとなる。ここはキャリアのさで落してしまったが、続く「ANT」(《むかつき》からストーム稼いで《苦悶の触手》で吸い取る、当時のコンボのド本命)3連戦という試練などを乗り越え、1敗で最終ラウンドへと臨んだ。この段階で全勝しているプレイヤーはいなかった…と記憶している。上位はさっさとID(ゲームをせずに同意の上での引き分けとすること。負けるリスクがなくなる)2連発コースに突入していたのだ。なので、僕も現在のスコアから考えてここはIDをすれば余裕のトップ8.日本最初の晴れ舞台に挑める。今日は引きもプレイングもノッている!これはイケるやん!


対戦相手は…藤田剛史さん!?
日本人初の殿堂入りプレイヤーであり、世界を代表するデックビルダー、憧れのローリーさんその人である。初めてのマッチングだったので、これには緊張したが、しかしIDを持ちかければなんということはないさ!




ローリーさん1分けなのでまさかのID出来ずや!しゃーないやるしかない!



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BOKO☆BOKO

使われていたのは当時のスタンダードのデッキである「白単キスキン」!元々白ウィニーとしては十分なデッキパワーを持っているとは言え…サイドにしっかりと対策カードを積んでおられたとは言え…完膚なきまでに叩き潰された形に。たしか1本目を先取したんやったかな?《ゴブリンの群衆追い》走らせて、イケるイケる!と思ったのが甘すぎてもう砂糖が口の中でじゃりじゃりいうレベル。後に藤田さんにインタビューさせていただいた時に仰っていた

「勝ちたいと思ってはいけない。勝ちたい気持ちが前に出ると負ける。正しいプレイングをするという気持ちで臨めば、必ず勝ちはやってくる」

この時の僕は、まさにこの「勝ちたい」気持ちが先行してしまっていた。それはもう、暴発と言っても良いレベルで。つまりは負けたくない気持ちが先行して、《紅蓮操作》をもっと我慢できたのに早く使ってしまい、その結果《幽体の行列》に蹂躙されることとなった。ここで負けた後も「勝ちたい!勝ちたかった!」という気持ちが先行しまくって、しばらく泥沼にハマることとなる。まあ、そこからの話はまたいつか…



前置きがムチャクチャ長くなったが、僕にとってはレガシーは「ゴブリン」であると言っても良い。そして「ドラゴン・ストンピィ」も病みつきになった愛すべきデッキだ。…その、ハイブリッドが最近登場したという。え…?デッキコンセプト的に相容れない両者やで?いやいや、それを解決する天才がいたんですわ…


http://urx.nu/e0d6


このリスト達の中から、6位のデッキに注目してほしい。なんだこのデッキは…
ちょいと前に同じSCGのDeck Techに登場した「Moggcatcher」というデッキ。その名の通り、キーとなるのは《モグ捕り人》だ。

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好きなゴブリンをなんでもサーチ!直に場に出せる、通称「リクルート」能力を持っている。僕も、ゴブリンを使い始めのころはデッキに1枚入れたりもしていた。しかし、まあそこまで強いというものでもないし…所謂「オシャレ枠」でしかなかった。ゴブリンを真剣に煮詰めるにあたって、候補からは爪弾き。当たり前だわな

しかしそんな《モグ捕り人》を、まさかドラストのマナブーストと妨害システムと組み合わせることで、安全な条件下で悠々と運用するとは…いやぁ恐ろしい発想があったものだ。全く気付かなかったよ。《ゴブリンの熟練扇動者》という単体で驚異的な制圧力を誇るゴブリンが登場したというのもあるけど、その脇を固める面々は今までもずっとそこに居続けたゴブリンじゃないか。ここまで、誰も気付かなかったし実践されなかったテクニックがまだレガシーに存在したという、これ以上ない証明である。300名を超えるトーナメントでトップ8とあれば、強さの証明には十分だ。
実際に僕がこのデッキをトーナメントに持ち込むならば《Goblin Wizard》なんかも入れたいところだ。これで手札に来てしまった場合でも、マナを踏み倒してゴブリンを展開することが出来る。プロテクション(白)の付与も、何かと役に立つことだろう。
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《モグ捕り人》はフレーバーもイラストも最高なので、こういったカードにスポットが当たることは心から喜ばしいもの。12月に控える関西のレガシーイベント「エターナルパーティー2014」、そして来年に控える「GP京都」へ向けて、こういったそれまで外野にいたカード達が輝くのを願いながら、今日はここらで筆を置こう。



とりあえず、《封じ込める僧侶》だけは勘弁してくれ!!カワイイ《恐血鬼》といい、巻き添えくらいすぎだってぇ!