第17回 コンテンツ無料公開のコツ(後編)

◇10万PVで1人

数字の話から入りましょう。

夜間飛行では、自社サイトに加えて、日経ビジネスオンラインや東洋経済オンラインといった他社サイトにも、メルマガ記事を転載することがあります。もちろんメルマガ著者の許諾を得たうえで。狙いは、より多くの人にメルマガの存在を知ってもらい、購読に踏み切ってもらうことです。

「へえ、この人のブログやツイートは読んだことあったけど、メルマガではこんなことを書いてるんだ、面白いじゃん!」と思ってもらい、ポチリと購読していただくことがミッションとなります。

おかげさまで、メルマガ記事が各種ネットメディアに掲載されると、ひと記事あたり多いものでは50万PVを超えるアクセスをいただくことができます。少ないものでも万単位のアクセス数はいただけるようです。

では、どのくらいのアクセス数があると、どのくらいの購読者数を獲得できるのか。以下、夜間飛行が実験してきた数字を、少しだけご紹介いたします。

記事の冒頭か末尾に、「この記事は○○というメルマガから抜粋した記事です」とリンク付きで案内を入れつつ、一つの記事を全文無料公開した場合、ざっくりとした数字で5万?10万PVで1人の購読者増が見込めます。

では、著者プロフィールの欄に「メルマガやってます!」とリンク付きで告知をしつつ、一つの記事を全文無料公開した場合はどうか。お恥ずかしい話ですが、夜間飛行のPV集め力では、まともに計測できておりません。イメージレベルの話で申し訳ないのですが、数十万PVを集めて、1人の購読者を獲得できるかどうかだと思われます。


◇300人を目標にすると

さらに条件を変えてみましょう。

記事の冒頭か末尾に、「この記事は○○というメルマガから抜粋した記事です」とリンク付きで案内しつつ、一つの記事の途中までを公開して、「続きはご購読の上、お楽しみください」とした場合、どうなるか。だいたい5万?10万PVあたり、3人前後の購読者増が見込めます。

本当に「ざっくりな数字」で申し訳ありません。ただ、大体のイメージは掴んでいただけたかと思います。

いかがですか。「厳しいなあ」と思いましたか。あるいは、「へえ、思ったよりイケる」と思ったでしょうか。

最近、夜間飛行では、有料メルマガ購読者数のとりあえずの目標を300人としています。月2回配信で総文字数3万字のコンテンツ規模で、購読料700円で購読者数300人を達成していれば、それほど無理なく継続させることができると考えているからです。

そしてこの300人という数字は、1人、2人の購読者を着実に増やしていくことで十分に達成可能です。

そうした規模感から言って、10万PVあたりの購読者獲得効率を改善させるということは、非常に重要なミッションになると考えています。

では、具体的にどのような無料公開記事の見せ方をすると、最高に効率よく購読者を獲得できるのか。


◇「途中まで記事」の弱点

上記の例を見ても分かる通り、いわゆる「途中まで」記事は、閲覧数に対する購読者獲得数の効率がかなり向上します。一つの記事内で「結論を知りたい!」という欲望を喚起させる方法は、なかなか効果的と言えます。

しかし、弱点があります。

そうです、この「途中まで記事」では、よほどタイトルで工夫するか、著者が有名人でない限り、そもそもPVを稼ぐことができないのです。

まず大手サイトは、基本的に掲載に対して良い顔をしません。「掲載するなら完結した記事にしてほしい」と言われます。SNS上での拡散もほとんど期待できません。自分の知り合いやフォロアーに対して「欠けた記事」あるいは「宣伝物」を送ることに抵抗がある人がほとんどのようです。また、キュレーションアプリもほとんど拾ってくれません。

つまり、「途中まで記事」は、読んでくれた人が有料購読者につながる割合は高まりますが、そもそものアクセス数を稼ぐことができないという問題があるのです。

一応、この問題をクリアする裏ワザも紹介しておきます。それは、プラットフォームが把握している「現在の他のメルマガ購読者」と「これまでに購読していた人」に向けて、「試し読み記事」として配信することです。

これを「途中まで記事」で行うと、もちろん記事内容にもよりますが、だいたい配信1000人あたり1人の割合で、新規購読者を獲得することができます。圧倒的な「効率」です。

ただ、プラットフォーム側の立場からすると、麻薬のようなもので、使えば使うほどあきらかに効果は弱まってくるし(どんなに「面白い!」と思う記事を配信したとしても、基本的には既存購読者の満足度は下がるようで、一本配信するごとに、こうした宣伝メールを受け取らないという設定に切り替える方が大量に出てきます)、依存度も高まるという危険なシロモノです。

プラットフォームによってそれぞれポリシーもあるはずですし、配信者の立場からでは、どうにもならないことも多いと思いますので、機会があるごとにプラットフォーム担当者に対して、「自分の記事をどんどん配信してくださいよ」と働きかけることはしても良いと思いますが、あまり期待し過ぎないほうがよいと思います。

では、どうしたらいいのか。


◇「冒頭のご挨拶+目次」の公開をお試しください

大手サイトも、キュレーションアプリも、SNSも、記事掲載と拡散に喜んで協力してくれて、しかもアクセス数あたりの購読者獲得効率を上げる。その鍵となるのは、実は「目次」です。

以前、この連載でも「目次の効用」といった話を書いたことがあります。

そのときは、読者により深くコンテンツを味わってもらうために、目次は使い勝手が良いという話をしました。今回は、内容の話ではありません。目次は、どうやら非常に優れた「マーケティング要素」のようなのです。

気がついたのは偶然でした。

いくつかのメルマガでは、冒頭に「読者へのご挨拶」を掲載しているものがあります。著者の近況から、社会時評まで、内容はさまざまですが、これがなかなか読み応えのあるものがたくさんあります。

そこでまず、夜間飛行として、この「冒頭の記事」を無料公開すると、案外、メインコンテンツよりもアクセスを稼げるかもしれないと考えました。さらに、ただ無料公開しても、それこそ10万PVで1人の世界に入ってしまうので、なんとか一工夫をしなければということで、あまり深く考えずに、記事のあとに「目次」と購入リンクをつけて、いくつかの記事を公開してみました。

結果は、驚くべきものでした。

単体記事として扱われるので、多くのサイトへの転載することができるだけでなく、キュレーションアプリやSNSでの拡散も上々だっただけでなく、10万PVあたり8?10人の購読者増という、通常の無料公開記事から比べると圧倒的な購読者獲得率を見せたのです。

冒頭の挨拶というのは、新鮮なネタか非常にフレンドリーな書きぶりになっているのも、新規読者が初めて読むのに適しているのでしょう。さらに、「目次」があることで、新規読者に、そのメルマガの「奥行き」を想像させたり、「購読すれば少なくともこれだけのコンテンツが読めるんだという安心感」を感じてもらうことができるのではないかと考えています。

どのような内容の「挨拶」が良いのか、どのような「目次の書き方」が良いのかについて、さらに研究が進みましたら、またご報告させていただきます。

ご参考になれば幸いです。