はじめに
この記事では、災害に関する用語について知らなかったことを知ろう、また、知っていたようで実は知っていないものを「もういちど学ぼう」というコンセプトのもと、BSC24の放送を見るうえで重要な地震・津波・火山などの用語を連載で解説していこうと思います。なお、執筆者(こんぽ)自身でも誤って記述している箇所があるかもしれませんので、もし要訂正箇所があれば記事直下のコメント欄よりご指摘ください。
さて、第1回となる今回は地震編。とくに混同しやすい"マグニチュード"と"震度"について、その2つは何なんだろう?その2つは何が違うんだろう?といったところを解説します。
マグニチュードとは?
テレビやラジオなどで地震情報が流れているとき、「地震の規模を表すマグニチュードは5.1で…」といったような文を耳にすることがあります。また、地震情報の画面で「M3.7」といった文字スーパーが出ていることがあります。これらに出てきた数値のことをマグニチュード(Magnitude・略してM)と呼びます。端的にマグニチュードが何なのかと言うと、はじめに出てきたとおり「地震の規模(を表した数値)」のことです。「地震の大きさ」「地震のエネルギーの大きさ」という解釈もできると思います。
地震そのものの数値なので、1回の地震につきマグニチュードはただ1つしか存在しません。
この数値が小さいほど「小さな地震」であったことを示し、数値が大きいほど「大きな地震」であったことを示します。
さて、ここまで話を聞いておおよそ理解できた人はそこまで多くないと思いますので、パソコンやスマホに付いているスピーカーに例えて話を進めましょう。
ずばりマグニチュードは、パソコンやスマホで設定した「音量」を意味します。Windowsで説明すると、音量0にすれば当然音は流れないですし、音量100にすればそれはそれは大きい音になります。
ここで大事なのは、実際にどれだけ聞こえたかは一切関係無いということです。あくまでも設定した音量のみを指すのです。
以上がマグニチュードの簡単な説明です。地震の大きさなんだ、音量なんだ、と思っておくだけで良いです。
以下の「もっと解説」では、更に詳しい説明をそこまで踏み込むことなく説明します。
もっと解説
・マグニチュードは対数の形をとっていて、マグニチュード3.0の2倍の大きさの地震の規模は、M6.0ではなく、およそM3.2になります。これはマグニチュードの計算式がそうなっているためで、規模の差は指数で表すと 10^(1.5*M差)=規模差 で計算することができます。たとえば、2016年4月14日の熊本県の地震(M6.5)と、同月16日の地震(M7.3)の地震の規模の差は、7.3/6.5≒1.1倍ではなく、 10^(1.5*(7.3-6.5))=10^1.2≒16倍でした。・日本で使われているマグニチュードには、日本の気象庁(JMA)から名付けられた「気象庁マグニチュード(Mj)」と、外国で主に使われている「モーメントマグニチュード(Mw)」の2種類があります。Mjにはすぐ計算できるというメリットと大規模地震だと数値が不正確に出るデメリットがあり、Mwは計算に時間がかかるも数値が正確に出る特徴を持っています。実際にH23年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)では、発生後数時間でMj8.4をはじき出しましたが、その2日後に出た発表されたのはMw9.0でした。
震度とは?
こちらもテレビやラジオなどでよく聞きますね。「最大震度は6弱で…」とか「xx市は震度3でした」といったような感じです。この数値を震度と呼びます。
"震"動の"度"合いと書くのでだいたい分かると思いますが、震度とは「揺れの強さ」のことです。
当然ながら揺れの強さは場所によって異なります。日本で起こった地震では日本で強い揺れになって地球の真裏チリでは弱い揺れあるいは全く揺れない(震度0)、という状態になるのは想像しやすいですね。
震度が小さいほど「弱い揺れ」であったことを、震度が大きいほど「強い揺れ」であったことを示します。
日本で使われる震度には、0,1,2,3,4,5弱,5強,6弱,6強,7の10段階が存在します。いくら強い揺れでも震度7と扱われますから、間違っても震度8とか震度9とかは存在しません。
大事なのでもう1度言いますが、震度8とか震度9とかは存在しません。
先ほどと同じようにスピーカーで例えると、震度は「聞こえる音の強さ」です。マグニチュードとは逆に、どれだけの音量を設定したかは一切関係ありません。
もっと解説
・「日本で使われる震度」と表現したように、震度にも世界でいくつか種類があります。この記事で出てくる震度は「気象庁震度階級(JMA intensity scale)」と言い、アメリカ地質調査所などで使われるものを「改正メルカリ震度階級(MM)」と言います。気象庁震度階級の最大は震度7であるのに対し、改正メルカリ震度階級の最大は震度Ⅻ(12)で、この違いが混乱の元になっています。これら2つの震度の求め方はそれぞれ異なるので、一概に比較はできないとされています。
・台湾では、日本と同じように震度0~7で表した「中央気象局震度階級」が使われていて、この震度は日本の気象庁震度階級を参考に作られているため、お互いの震度はほぼ一致する特徴があります。しかし、参考にしたのは日本で1996年まで使われていた、震度5弱と5強、震度6弱と6強の区別が無い旧震度階でした。従って、中央気象局震度階級にもその区別はなく、それぞれ震度5、震度6と表されています。
・震度と似たようなものに「加速度(acceleration)」というものがあります。加速度は単純に揺れのスピートがどれだけ変化したかを示し、震度はその加速度をベースに揺れの周期(速く揺れたかゆっくり揺れたか)や揺れが収まるまでの時間など、色々なパラメータを総合的に判断して求められています。よって、人間がどれだけ揺れたと感じるか、建物にどれだけダメージを与えるかを分かりやすくしたものになっています。
マグニチュードと震度の違いは?
マグニチュードと震度についてざっと解説したので、分かっている人には説明しなくても良い領域かもしれないです。おさらいすると、マグニチュードは地震そのものの規模の大きさ、震度はその場所ごとの揺れの強さを意味します。例によってスピーカーで例えたほうが分かりやすいので、スピーカーで説明しましょう。
部屋の中心にWindowsノートパソコンを1台置いて、音量を70に設定したとしましょう。そうすると、ノートパソコンについたスピーカーからは音が鳴り響きます。
スピーカーに耳をびったり付けて音を聞くと、当然ですがうるさいですよね。
しかし、部屋の壁際まで移動して音を聞くと、心地よく聞くことができます。
張り切って部屋の外まで移動して音を聞くと、とうとう聞こえなくなります。
一方その頃、ある場所で地震が起こり、規模がM7.0であったとしましょう。そうすると、その地震によって揺れが周辺に伝わります。
地震が起こった地点のすぐ近くに居ると、強い揺れを感じます。
しかし、そこから遠い地点に移動すると、弱い揺れを感じることになります。
さらにそこから遠くの地点に移動すると、揺れは感じなくなります。
この話の通り、「設定した音量(音の大きさ)」と「聞こえた音(音の強さ)」の違いこそが、「マグニチュード(地震の大きさ)」と「震度(揺れの強さ)」の違いなのです。
おわりに
第1回となる解説記事でしたが、いかがでしたでしょうか。もし更に詳しく知りたいと思う部分があれば、Wikipediaを見てみたり、気象庁サイトを見てみたりすることをお勧めします。
今後、このような解説を不定期で掲載していく予定です。今後も地震に関する解説をしていきたいと思いますので、次回更新をお待ち下さい。
ここまで見て下さってありがとうございました。
コメント
コメントを書く(マグニチュード冒頭の)「地震の規模を表すマグニチュードは5.1で…」ですが、NHKなど基本的には「震源地は〇〇で、地震の規模を示すマグニチュードは5.1と推定されます。・・・」と言うことが多いと思います。