この映画は、京都在住の映画作家である佐伯龍蔵さんと緑茶麻悠さんが共同で監督を務めた作品。2022年に京都市左京区を拠点にして製作され、監督の2人が「円」ではなく「地域通貨」が流通している地域コミュニティーや、「共感コミュニティー通貨」を独自で発行している非営利株式会社eumoなどに取材をして作り上げたセミドキュメンタリー映画になっています。
映画の中のテーマである「地域通貨」は、地域やコミュニティーにおける価値の流通を促す交流促進ツール。「地域通貨」が流通している場所には活発な人間交流がうまれており、映画内では現代の資本主義社会が忘れかけている地域の繋がり、農的な暮らしについても取り上げられています。
様々なところで値上げが叫ばれる昨今ですが、それは映画館も例外ではありません。今年6月にはTOHOシネマズが映画鑑賞料金を改定。一般の鑑賞料金が1900円から2000円に変更されました。また2022年の諸外国との上映料金を比較してみると、日本の平均の映画入場料金は高いとも言われています。
こうした背景がある一方、地域通貨の流通しているコミュニティーは、個人と個人の信用によって「地域通貨」自体に価値が付与され地域経済を活発化させています。そこで佐伯龍蔵さんが、「映画の入場料金も観客個人に決めて貰えるような上映をしたい」と、出町座とほとり座に企画を相談し、鑑賞後に観客が料金を決める『金銭感覚上映』が実現しました。これにより、お金に余裕のある人はいつもより多く、余裕のない人は自分が払える金額で鑑賞が可能になります。
出町座では12月10日(日)の上映回、ほとり座ではクリスマスである12月25日(月)の上映回にそれぞれ実施予定で、入場時にガチャガチャのカプセルを手渡し、鑑賞後に自分の納得する金額を入れて戻します。来場者がカプセルの中に入れる通貨は「円」以外にも、手持ちの地域通貨や自分で価値を付与させた自作の地域通貨なども可能ということです。
「地域通貨」という作品のテーマと深くリンクしたチャレンジングな取り組みであり、作品の外でもお金やコミュニティーについて考えるきっかけを与える、メッセージ性の高い企画となっています。