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ガジェット通信「開発者さんのキモチ」取材班です。

ユーザーの中にあるこんなのあったらいいなというキモチと開発者のそれを実現したいというキモチが触れ合ったとき、新しい製品・サービスが生まれることがあります。

この企画では、ユーザーさんのキモチに気づいた開発者さんがどんなキモチで開発に挑んだのかを探ります。

●どんな人が開発しているのか
●ユーザーのどんなキモチに気づいたのか
●それに応えるため、どんなキモチで開発に挑んだのか

この3点を中心に質問するとともに、開発にまつわるさまざまな話や普段はどんな風に開発してるのかなどをやわらかくきいてきました。

「開発者さんのキモチ」コーヒーが飲めないコーヒー開発担当さん

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今回お話をきく開発者さんは、キリンの缶コーヒーブランド『FIRE(ファイア)』のフルリニューアルを担当した大石竜也さん。

なんと大石さんは、コーヒー担当になるまで、コーヒーが飲めなかったそうです。

いやいや、おかしいでしょ、それ。

いくらなんでもコーヒー飲めない人をコーヒー担当にしますかね。

コーヒーが飲めないので、コーヒー担当になってからしばらくは、沢山試飲をするたびに気分が悪くなってしまったそうです。そんな状態ですから試飲サンプルの味の差もわからないし、チーム内で他のメンバーが言っていることも理解できなかったそうです。

いやぁ、すごい会社だな、キリンビバレッジ。

しかし大石さんは、毎日コーヒーを飲んでいるうちにコーヒーが好きになり、コーヒーについて語れるようにもなり、今やコーヒー製品のフルリニューアルに関わる程になったわけです。

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『FIRE』開発チームメンバー。写真前列右から、リーダーの田口文子さん、宮本花野さん、後列右から、川上広太さん、渡邊明香さん、 大塚望さん、大石竜也さん。

“缶コーヒーの常識を変える”を掲げ、火にこだわり、コーヒー豆の“焼きの限界”に挑戦し10月4日にフルリニューアルを果たした『FIRE』シリーズ。けっこうインパクトのある味に変化しているんです。

さて、いきなりズバリ聞いてみました。

あなたが気づいたユーザーのキモチを教えてください

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――大石さんが気づいた缶コーヒー購入者のキモチと、それにどうこたえたのかを教えてください。

大石:まず、缶コーヒーにも「香り」が求められてきているな、という気づきがありました。

これまでは、お客さんから缶コーヒーに対し香りが弱いという声はあまりきかなかったのですが、それが変わってきているな、と。

背景に、ショップコーヒーやコンビニコーヒーが広がり、それらと比べて缶コーヒーを飲む様になったことが大きいと感じています。その証拠として、缶コーヒーを飲んでいる人の約2/3が、ショップコーヒーやコンビニコーヒーも飲んでいることが分かっています。

なので、缶コーヒーにもこれまでにない、突き抜けた「コーヒー感」、つまり「香ばしさ・香り」と「味の濃さ・コク」を生み出すものが必要なんじゃないか、ということを考えていました。

それを実現するために、今回行き着いたのがこの、極限まで焙煎する「焦がし焼き」なんです。

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大石:コロンビア産のコーヒー豆をメインに、ラオスやブラジル、ベトナム産の豆を製品別に組み合わせています。開発段階では100種類以上の豆の組み合わせを試しました。資料には控えめに100と書きましたが、実際は190種類ぐらい試したんですよ(笑)。

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開発中は「突き抜けた」をスローガンに試飲をし、開発チームのみんなで「どれが一番突き抜けてる?どれが圧倒的に香ばしいかな?」と言い合って味を比べていたそうです。

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焙煎度や異なる種類の豆、ブレンドの配合率の違うものなどを用意し、同じ時間抽出して違いを見極めます。

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ちょっとだけ体験させてもらいましたが、とても繊細な作業でした。

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大石:焼け落ちる直前まで焙煎するということなのですが、ここまで焼いて缶コーヒーに入れるなんて、常識では考えられない。おそらく史上初です。『FIRE』シリーズでも今まで検討すらしなかったレベルのものです。

普通に考えたらここまで焙煎して製品に入れよう、ということにはなりません。

しかし今回は、その常識を破ってみようじゃないか、ということになりました。

商品パッケージにも書いてありますが、「突き抜けた香ばしさ」を前面に出して、香りには相当こだわって作り上げました。

――おー。常識から突き抜けたってことなんですね。開発最初から『FIRE』のリニューアル製品だということは決まっていたんでしょうか。

大石:ちがいます。もともとブランドありきではなく、とにかく新しくて美味い缶コーヒーをつくる、ということでスタートしたのです。紆余曲折はあったのですが、最終的には、17年続いてきた缶コーヒーブランド『FIRE』をフルリニューアルすることになりました。

単なるアップデートではなく、突き抜けた要素を投入して、まるごとリニューアルしたんです。

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――なぜ新ブランドではなく、『FIRE』にしたんでしょうか?

大石:“17年の集大成”と言っているんですけど、実際そうだな、と思っていて。スタートはシンプルに「美味しいものをつくる」でしたが、結局我々がとった手段が火の力や焙煎の力でした。それは『FIRE』が蓄積してきた技術で、今回「焦がし焼き」を作ることができたんです。

今まで『FIRE』を好きだったお客さんにも納得してもらえる、“正統進化”になっていると思います。飲んで「『FIRE』らしい」と言ってくださるお客さんもいます。

――100万人サンプリングをやってましたが、これのねらいはなんでしょう?

大石:もちろん缶コーヒー好きな人にも試してほしかったのですが、一番の狙いは、「普段缶コーヒー飲んでないよ」という人に飲んでもらいたい、というところでした。

――Twitterなどでの反応は、みてますか? どう感じます?

大石:いやー、ほんとにドキドキなんですけど、みてます。製品を出すまでは、正直不安な部分もあったんですが、Twitterなどみていると、ポジティブな反応が多くて安心しました。香りとスッキリ感に関しては評価いただけたようなので、今は「これで良かったんだ」という、自信・キモチになっています。

素人にも違いがわかる? 飲み比べさせてもらったよ

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せっかくなので、どれほど変わったのか飲み比べさせてもらいました。

日本で一番売れている他社さんの缶コーヒーと以前の『FIRE』、そしてリニューアル後の『FIRE』(エクストリームブレンド)。すべてミルクと砂糖が入ったスタンダードタイプを飲み比べ。

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色ももちろん違います。リニューアルした『FIRE』が濃いめ。味は、飲み比べると違いがハッキリとわかります。日本で一番売れている缶コーヒーは華やかな香りがふわっと広がる。『FIRE』はコーヒー豆感が強いです。

従来品とリニューアル品で『FIRE』同士でもけっこう違ってビックリ! 比べると、従来品はサラッと軽い飲み口に感じ、リニューアル品は「焦がし焼き豆」のブレンドにより、スッキリさはありますが、深みがあって芯がある印象。豆の香りや苦味がしっかりと主張してきます。スタンダードなのに甘くない。

かなり“進化”してます!

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そしてシリーズの中でも今回の「焦がし焼き」の香ばしさをダイレクトに感じ取れるのが、砂糖とミルクを加えていないBLACK。開発を担当した大塚さんも「かなり突き抜けている」とコメント。

ショット缶のBLACKは、一気に飲めるようにスッキリ感を重視した、焦がし焼き豆10%ブレンド。ボトル缶の『香ばしBLACK』は、デスクなどで少しずつ飲むタイプで、苦味と余韻を重視した、焦がし焼き豆30%ブレンドとなっています。

新『FIRE』の特徴を確かめるにはやっぱりBLACKを試してみるのがいいんじゃないかと思いました。

(取材・写真:ふかみん、non)

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