2016年11月18日に日本でのサービス開始から1周年を迎えた『Amazonプライム・ミュージック』。この『Amazonプライム』会員向けの聴き放題・音楽配信サービスは、『Amazon』の配送特典、『Amazonプライム・ビデオ』などと並び、日本でも柱となるサービスに発展したという。
アマゾンジャパンのデジタル音楽事業本部ディレクター、ポール・ヤマモト氏が、1周年を迎えた『プライム・ミュージック』を振り返り、その成長と戦略を語った。
音楽にお金をかけない人をターゲットに
2001年にCDのセールスを開始して以降、業界やユーザーのニーズが変化するのにあわせて、MP3のデジタルフォーマット、クラウドサービス、ストリーミングサービスと、配信の形態も幅を広げてきた『Amazon』の音楽事業。その中で『プライム・ミュージック』は、決して音楽に熱心なファンに向けたサービスではない、と説明する。
ヤマモト氏:「他のサービスとは異なり、我々は、プライム会員にとって“最高”と感じる特定のアーティスト、楽曲に焦点を当ててきました。ハードコアな音楽を熱心に楽しむ方々に注力するのではなく、気軽に音楽を楽しむ方々にフォーカスしています。メインターゲットは、CDをしばらく購入していない人、あるいは音楽にかける資金が少ない、もしくはゼロという人たちです。彼らは必ずしも最新のヒット曲が聴きたいわけではありません。彼らのライフスタイルに合わせてコンテンツをバンドリングし、プログラミングするように力を入れてきました。朝起きた時の気分、仕事が終わって帰宅した時の気分など、1日のうちに音楽をどのように消費しているかを考え、専門のミュージック・キュレーターがプレイリストを作成しています」
さらに同社は、長年蓄積してきた膨大なデータをもとに、プライム会員が好む音楽のトレンドも把握しているという。
ヤマモト氏:「まずは、プライム会員の音楽カテゴリの購入履歴から強化すべきアーティストやジャンルを集計しました。加えて、『プライム・ミュージック』を利用しているユーザーの情報から常にアップデートを繰り返しています。利用するユーザーの数、再生される楽曲の数が、そのまま指標の増幅につながります。そのようなデータをもとに、我々は1年間で100万曲以上の楽曲を蓄積してきました。最近では、ユーザーが音楽を聴く習慣、ジャンルの特徴、トラックの履歴をもとに、ユーザーの好みにあった楽曲をレコメンドする機能も好評を得ています」
ユーザーに合わせた楽曲提供という点では、今年4月、同サービス内に、J-POPやポップス、ジャズなど、ジャンルステーションごとに24時間音楽を流し続けるラジオ機能『プライム・ラジオ』を開設。ユーザーが楽曲の好みに応じてサムアップ(お気に入り)、あるいはサムダウン(気に入らない)を選択すると、どんどんと自分好みの楽曲が流れるステーションに変化していく機能が特徴だ。
レーベル側にも独自のベネフィットを
では、楽曲を手掛ける各レーベル側は、『プライム・ミュージック』を通じて配信することで、どのような恩恵を受けているのだろうか。
ヤマモト氏:「きゃりーぱみゅぱみゅ、BABYMETALなどの有名アーティストに関しては、『プライム・ミュージック』やamazon.co.jpに個別のランディングページを開設しています。関連したCDを紹介し、気に入ったお客様がそのページ上で即購入できるようにすることで、プロモーションのお手伝いをしています。最近では、映画『君の名は。』の大ヒットを受け、RADWIMPSの楽曲や関連の小説を大きく取り上げました。海外でも人気のBABYMETALに至っては、グローバルにプロモーションを展開し、米国では音楽カテゴリで売り上げNo.1、英国ではメタルのジャンルでNo.1を獲得しました。アーティストやレーベルと同様に、我々にとっても嬉しい驚きでした」
先日には楽曲数4000万以上を抱える『Spotify』が日本でのサービスを開始し、『AWA』が月額無料の新プランを発表するなど、各社が差別化を図りながら会員獲得に努めている。それでも、『プライム・ミュージック』は独自の路線を突き進むようだ。
ヤマモト氏:「先ほど申し上げたように、我々はプライム会員のユーザビリティに焦点を当てています。我々のサービスは、他社が提供するものとは別のモノだと思っています。『プライム・ミュージック』はプライム会員に対するベネフィットです。英語では“リンゴとオレンジを比べるもの”という言葉がありますが、そういうものだと考えています。比較はしません。なので、我々は楽曲数を求めているわけではありません。年会費で勝負することもありません。ユーザーになじみのある心地よい曲を的確に提供し続けたいと考えています」
Amazonプライム:
www.amazon.co.jp/prime
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