※本記事で使用している画像はすべて『超展開バレエマンガ 谷ゆき子の世界』(立東舎)のものです。
あけましておめでとうございます。(あ、泣いてる!)
谷ゆき子さんといえば、昭和40年代、小学館の『小学一年生』など学年誌の売り上げ絶頂期を支えた大人気バレエマンガ家です。
「白鳥の星」「バレエ星」「さよなら星」……100万人の読者が手に汗握り次号を待った衝撃のバレエマンガをいくつも連載していたわけですが、なぜか一度も単行本化されなかった幻の作家でもあります。
21世紀に入り、『超展開バレエマンガ 谷ゆき子の世界』としてまさかの大復活を果たすのですが、“超展開”ってどういうこと!? 谷ゆき子さんの作品について迫ってみましょう!
【ツッコミどころ①】滝に打たれて修行してたら、意地悪なライバルのせいで上から岩が!
(「バレエ星」より)
主人公のかすみちゃんは、立派なバレリーナになるために日々猛特訓。バレエのために滝行(なぜ!)をしているところへ、最凶の天敵である花田バレエ研究所の後継者・あざみちゃんから意地悪な一撃が! なぜ石を投げる!? あぶないかすみちゃん!
りっぱな バレリーナに
なれますように……と、
おいのりする
かすみちゃんの 上に、
大きな いわ!
※注:バレエマンガです。
【ツッコミどころ②】一般家庭で虎は飼ってはいけません
(「さよなら星」より)
間貸した老夫婦はとんでもない人たちでした。すずらんちゃんとゆりちゃんを庭の物置小屋に追い出した上、なんと虎をペットにしていました。すずらんちゃん必死のお願いにも開き直り&逆ギレ。
おや、
とらを かっては
いけないと
いうのかい。
※注:バレエマンガです。
【ツッコミどころ③】どんな時もツッコミは忘れない
(「さよなら星」より)
瀕死の弟の弱気発言にもしっかりツッコむのが谷マンガのヒロイン。
ぼくね、
しんで、
お空のおほしさまに
なるの。
ほしおちゃん
なんですって。
いくらほしおって名まえだって、
そんなこと
ないわ。
※注:バレエマンガです。
なぜ悲しいバレエマンガが繰り返し描かれたのか
ツッコミどころ満載の谷マンガですが、しかし基本はとても悲しい物語です。なぜ悲しいバレエマンガが繰り返し描かれたのでしょうか。京都国際マンガミュージアムの研究員であり、『超展開バレエマンガ 谷ゆき子の世界』の著者でもある倉持佳代子さんは、本書の中で下記のように書いています。
少女マンガといえば、学校で好きな男の子に「壁ドン」されちゃうような恋愛物語を王道のイメージとして思い浮かべる人が多いかもしれません。が、一昔前までは違いました。少女マンガが急速に発展したのは戦後になってからですが、1960年代頃までは、離れ離れになったお母さんを探す悲しい少女の物語が定番で、さらにそこにバレエの要素が入っているものが大流行しました。谷がデビューした58年はまさにブームのピーク。谷は悲しいバレエマンガこそ少女マンガの王道だと教え込まれた世代だったはずです。
なぜ流行したのかは、さまざまな理由が考えられます。
・戦争の傷が残る時代、悲しい物語は読者の共感を得やすかった。
・バレエは悲しい物語との相性抜群。少女の憧れの要素もあった。
・発展途上の少女マンガの場において、マンガ家たちも手探りだったが、バレエはわかりやすく画面を華やかにしてくれるモチーフだった。
・男女の恋愛を描くことがタブーだったので、読者の高い共感を得られる人間ドラマでは母子ものを超えるテーマがなかった。
(TEXT:倉持佳代子)
谷ゆき子がTシャツになりました!
『超展開バレエマンガ 谷ゆき子の世界』の初単行化を記念して、谷ゆき子が描くイラストTシャツ13種を、オンデマンドTシャツwebストアのTODで販売スタートしました。男性用(S/M/L/XL)と女性用(S/M/L)でサイズは7タイプ、カラーバリエーションは10種類ご用意。詳しくは(https://t-od.jp/item/?brand_id=A00039)をチェック!
『超展開バレエマンガ 谷ゆき子の世界』(立東舎)
著者:谷ゆき子、花村えい子、里中満智子、高橋真琴、辻真先、井川浩、古藤黎子、芳賀直子、tsumire、谷垣宏尚、倉持佳代子
編集:図書の家
帯文:東村アキコ
定価:(本体1,600円+税)
発売:2016.10.25
ISBN 9784845628605
Amazon.co.jpで購入する< alt=”cover” width=”932″ height=”1200″ class=”aligncenter size-full wp-image-208678″\/>
《著者プロフィール》
谷ゆき子(たに ゆきこ)
1935年、兵庫県生まれ。本名・谷垣悠紀子。58年頃、大阪の金龍出版社より単行本『夕映の詩集』にてデビュー。画力に定評があり同社発行の短編誌『虹』『すみれ』では作品の他、表紙画を多数担当した。64年、活躍の場を東京に移す。66年より小学館の学年誌で約10年にわたり母恋ものをベースにしたバレエマンガを連載し、絶大な人気を誇る。99年病没。別名に谷悠紀子、谷ゆきこ、谷幸子など。―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: Rの広報ガール) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか