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グーグルやフェースブックをリーダーとして率いてきたシェリル・サンドバーグの本(とりあえず日本の男性は反論を試みず黙って読んでおけ的な)
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グーグルやフェースブックをリーダーとして率いてきたシェリル・サンドバーグの本(とりあえず日本の男性は反論を試みず黙って読んでおけ的な)

2013-04-06 16:04
    グーグルやフェースブックをリーダーとして率いてきたシェリル・サンドバーグの本(とりあえず日本の男性は反論を試みず黙って読んでおけ的な)

    今回は大原ケイさんのブログ『BOOKS AND THE CITY』からご寄稿いただきました。

    ■グーグルやフェースブックをリーダーとして率いてきたシェリル・サンドバーグの本(とりあえず日本の男性は反論を試みず黙って読んでおけ的な)
    フェースブックのCOO、シェリル・サンドバーグのTEDビデオを観たときは、冒頭で紹介されていた彼女のエピソードというのが、出張に行くのに娘が「行っちゃイヤだ~!」と足にしがみついて泣いた話で、いかに5時半にオフィスを出るか、それを言い出すのに勇気が要ったかが主旨だったので「まぁ、私みたいなバリキャリでもなく、子供もいない女にはあんまり関係ない話だわな」とスルーしてた。

    そのサンドバーグの新著、Lean Inがなんだかエラく好調で、いきなりベストセラーリスト入りしてるし、うちの図書館となっているバーンズ&ノーブルでも、チェルシー・クリントン(ビルとヒラリーの娘)といっしょに登壇して女性のキャリアを語り合う、というイベントが超満員だったりして、けっこう話題になっている。既に渡辺由佳里さんがレビューをブログにアップ*1していて、内容を知りたいのならこっちの方がバランスよくまとまっているのでそちらへドーゾ。

    *1:「男女両方が幸せになるためのフェミニズム Lean In」 2013年03月12日 『洋書ファンクラブ』
    http://watanabeyukari.weblogs.jp/yousho/2013/03/lean-in.html

    TEDのプレゼンに先駆けて、バーナードで2011年、卒業式のスピーチをしたときの映像*2はこちら。こっちもお薦め。

    *2:「Sheryl Sandberg, Barnard College Commencement 2011」 『YouTube』
    https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=AdvXCKFNqTY#!

    この本に書いてあること、すべて至極真っ当だと思う。エリート街道まっしぐら走り抜けてきた女性が上から目線で…ってな批判は、この本の序章さえ読んでない証拠。(だって、冒頭にそういうつもりで書いたわけじゃない、ってあるよ。)この本のリアクションが賛否両論で真っ二つ、っていうのも誤報だなぁ。大方、好意的。反論もあるけど、論旨、弱いし。まぁ、女性同士が対立するようにけしかけるのは、男性に牛耳られたメディアの常套手段だから仕方ないか。

    それと、Lean inを「割り込め」と訳すのにはちょっと語弊があると思う。男を押しのけて入っていけ、っていうんじゃなくて、ひるんだり、遠慮したりするのはやめようよ、ってただそれだけのこと。そして男性の方からも女性を受け入れる歩み寄りのジェスチャーとしてのlean inでしょう。ひどいサイトになると「足りない」って意味なんて書いてあるけど、それ、今からでもいいから修正しておこうね。

    なぜ彼女がこのタイミングでフェミニズム・マニフェストなのか?という点にも私は疑問を抱かない。イメージとしては、こんな感じ。シェリル自身、がむしゃらで走り抜けて企業という山の頂上にたどり着いて振り向いてみれば、60年代の民権運動で先人たちがようやくつけたケモノ道らしき道筋ができたところも、今では草ぼうぼう。あっちこっちで同じ女性が「そこまで登れなーい」「障害多すぎてムリ~」と悲鳴を上げている。その道を守るために行政がいくらか均等雇用というフェンスもつけてくれたけど、十分じゃない。だって私といっしょに頂上あたりにいるはずの女性がまだまだ足りないもの。だから彼女は袖をまくり上げてこう言っている。「しょうがないわね。みんなでがんばって草むしりからやり直しましょ」って。それには男性も協力してくれないとムリだし、みんながみんな、この山のてっぺんに登り詰められないこともわかっている。本1冊書いただけで、全ての女性にあまねく適切なアドバイスなど与えられないことも承知している。それでも散歩道を整備したら、みんな好きなところでピクニックしながら頂上を目指すことができるようになるはずよ、その方が男性もラクになれるのよって。

    以下は印象に残った部分の羅列。

    ●・「メンターになってください」問題
    私もこれは苦手。口に出していきなり他人に頼む時点でアウトだろ、って思う。私自身、やってる仕事にあまりロールモデルがいなくて、メンターやスポンサーなしでやるっきゃないってところもあるしね。一度、こういう仕事がやりたいんです、って先輩の女性に言ったら「30年苦労しろ」みたいなコト言われて懲りたってのもあるし。だから「どうやったらエージェントになれるんですかぁ?」みたいな教えてチャンの面倒を見る気もない。会社組織にいる時の私は思いきり女性ばかりを優遇してたけどね。

    ●・キャリア構築はハシゴじゃなくてジャングル・ジム
    そうそう。もう一方的に駆け上がるだけのキャリアパスの時代じゃないよね。フレキシブルに横に回ったり、意外な方向から中を通っていったりして、上の方にいければいいし、その方が色々な視点からものが見られるようになる。日本の企業だって年功序列も崩れつつあるし、同じ会社にいくらしがみついても上が詰まってて万年係長の時代だもの。女性の方が、会社という枠に囚われずに動けていいのかもしれない。

    ●・biasをどう訳す?
    ハッキリとした女性差別ではなくて、差別的な行動につながる深層意識レベルでの無意識な差別、ぐらいの意味なんだけど、邦訳版だとどうするんだろ?と気になってる言葉。

    ●・Promise of equality is not the truth of equality.
    これなんだよなぁ。いくら機会均等を謳っていても結果的に上層部での女性が圧倒的に少なければ、それは途中に不公平なことがあるっていう証拠なんだけど、日本のジジイどもにはわからんだろう。ぶっちゃけ、がんばって働けばその分ちゃんと昇給も出世もできるのなら、日本の女性も「女子力」なんてくだらんもんは磨きませんってw

    ●・Done is better than perfect.
    完璧を目指すより、とりあえず片付けることが重要、というお言葉。この本から得られたことは長期的なストックとして、毎日の雑務はこれをモットーにしたいと痛感。

    なお、本を書いて終わりではなく、サンドバーグは同時にリーダーを目指す女性を助けるコミュニティー*3を結成。これがどう実を結んでいくのかにも注目したいところ。

    *3:『LEAN IN』
    http://leanin.org/

    *******************************************************

    ●追記:予想通り、シェリル・サンドバーグのLean Inがメチャ売れしている。
    アマゾンのチャート初登場第1位なんてのは既に日本でも報じられているからどーでもいーとして(どーでもよくはないけど、アマゾンは予約部数をカウントしてベストセラーリストを集計するので前パブが効いている本の方が有利になる傾向あり)、版元クノップフ(あぁ、またクノップフだよ。ソニー・メータさんも堂々とオフィスでタバコ吸ってるだろうなw)のPR担当ポールくんが業界紙「パブリッシャーズ・ウィークリー」に語ったところによると、POSデータのBookScanで刊行第1週に7万4000部(ってことは、70万ぐらいの実売かな)、それに5万のEブックで12万部。累計刷り部数が44万部。

    プロモーションにしても、シェリルにはフェースブックでの本業もあるし、大手メディアに絞って、クノップフ経由でやってもらったのは「60 Minutes」というプライムタイムのニュース番組とTime誌のインタビューのみ。出版記念パーティーなんて友人で「ハフィントン・ポスト」主監のアリアーナがホステス役になって、ブルームバーグNY市長の私邸で豪勢なのをやってくれるんだもんな。意外だったのは、女性だけでなく、年配の男性がけっこう買っていることで、おそらくこれは娘に読ませたいってことだろうから、卒業式シーズンの5月~6月にかけてさらにバカ売れするという予測が立つ。

    とまぁ、邦訳も期待されているだろうから、今死にものぐるいで翻訳やっている人、ガンバレー!としか言えません。でも日本ではそこまで売れないでしょう。だって、これって「がんばってきたハズなのに、まだまだリーダーの地位にいる女性が少ないよねぇ。これからどうするよ?」という本なので、日本みたいに「んなこと言ったってトップにいる女性なんてそもそも全然いねーじゃん」な社会には100年くらい早い本なんじゃないでしょーか?

    米マスコミの方でもいったん刊行されればかなり売れるとわかっている本だから、読まずに叩くしかなかったってことですな。一応報道の義務があるからねぇ、律儀に読んでから内容に賛同しちゃうとみんなと同じお提灯記事って言われてしまうものねぇ。よってシェリルがバッシングを受けている、なんて報道した日本のマスゴミはもっとその辺、ちゃんと裏を読んでくれよ、と言いたい。原書を読んでから自分で判断しろなどというキツい注文はしないからw

    もう一つ書いておきたかったのは、クノップフがシェリルを急かしてこの本を書かせたのではないと言うこと。もう何年も前から「そのうちね」という話でしっかり多額のアドバンスを支払っている。大手のクノップフだからできる胆力とでも申しましょうか。で、ようやく原稿もできたんで、こういう本出すよー、とお披露目したのが去年の9月。そこで10月のフランクフルト・ブックフェアで翻訳権を売り出した。すぐにヨーロッパの多くの国でオークションが行われて、一番高額なアドバンスを提示した出版社に決まり、アジアでは韓国もそこに食い込んだ。…と書けばすぐにピンと来てもらえると思うけど、一応共産国なのにビジネス関係の本にすぐに飛びつく中国ではおそらく敬遠されたものと見える。そりゃだって、国内からフェースブックにアクセスできないわけだし。で、出版不況の前の日本だったら、どこかの版元がさっさとドカンとアドバンス支払って、買っちゃいそうなのに、出遅れている。

    悲しいけどこれが出版不況の弊害のひとつなんだな。「知」の伝達という意味で既に日本はグローバルなスピードについていけてないわけだ。ってなコラムは昔に書いたっけな。後はいつもと同じ愚痴になるからやめとくわ。

    執筆: この記事は大原ケイさんのブログ『BOOKS AND THE CITY』からご寄稿いただきました。

    寄稿いただいた記事は2013年04月05日時点のものです。

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