まずはハチさんの「ドーナツホール」から!
完成したお話が1本と途中でイベント終了を迎えた1本を紹介いたします。
お題:ハチ「ドーナツホール」①
いつからそんなに大きな思い出せない記憶があったか
どうにもこうにも憶えてないのになぜか一つ確かに憶えてるんだな
なぜだろうか。その顔しか思い出せない。あなたが思い出せないままだ。
あまりにも気になりすぎて、毎日18時間しかねむれない。
あなたの「きおく」を消せていないのに、体温や思い出はなぜか思い出せなくてかなしい。
朝は必ず来るのに君のことは何一つ思い出せないんだ。
嗚呼、なぜ思い出すことが出来ないのだろう僕が忘れてしまいたいと思ったから?
思えば、それは大切なものだったのかちがうのかすら忘れている自分がいて。
あなたと過ごした日々はまるでドーナツの穴みたいに記憶と思い出に穴が空いて。
そこからなにも進まないままなんだ。
こんなことを、あなたが知ればきっと私を笑うのだろう。
カラカラの喉でドーナツをほうばる、かすれた熱がじわじわと目尻まで伝わる。
いつからか叫んでいた。悲しいからか苦しいからか。ずっとずっと、渇ききった声で。
あなたの居た背景は思い出せるのにあなたの姿だけが抜けている。
ああ、思い出すことはやめにしよう。
失ったモノはもう戻らない。思い出そうとするほどに、辛さが募るだけだから。
もうやめだ。あぁ、終わりだ。でも…、どうして、涙がとめどない。胸が痛い…。嗚呼。
なにをしてももう・・・・失った感情が心に穴を空けて私をむしばんでいく。
ならば穴が開いてしまった場所へ行こう。そこがあなたと私をつなぐ一つの証明だから、
あなたが居た証を、穴を埋めて見つけよう。拳を握りしめて僕は駈け出した。
遠く遠く私は涙を出しながら走った。ずーっとずーっと走り続けた。そこにはなんと
穴があくほど見つめても、見えないのはきっと私の瞳に涙があふれているからだ。
あふれた涙の粒は円。もし穴があるとしたら、それは人間が造ったから。それは人造物。
人造物。だから私は本当に悲しいのか、悲しいような気分を作ってるのか分からない。
「分からない」そんな言葉に動かされていた。心に空いた穴はつかみようがないんだ。
ボクと契約してよ、そうすれば君の心の空いた穴は必ず埋まるハズだよ、
「私は…」惑う私の声だけが白い部屋に響いた。一体、どうしろっていうんだ。
そんなにおちぶれたつもりは無いと頭の中で呟く。でも言葉にはならない。
忘れた事すら忘れていたらどれだけよかったか。空いた穴の存在が恨めしかった。
ふさごうとした心の穴は複雑な感情の蓋では無理。だったら吹き抜けたらどうなる?
この心の穴は、果たして埋まるのだろうか。恐怖。不安。色んな思いがあふれ出す。
風船に針を刺しても割れない。それが割られるときは針を抜いたとき。きっとそれが、
心の穴がふさがる時なのではないだろうか?
それでも完全に埋まることは、もうないのかもしれない。それでも
貴方に会いたいと思ってしまった。なぜだか分からないがふと呟く。もう会えないね。
会えなくてもいい。君を想えるだけで幸せだ。
だから、私は白くて何もない部屋で、ただただ微笑をうかべていた。
そして時計の針がてっぺんで合わさった時。
最後に思い出したその小さな言葉。あなたの名前は―。
<完>
お題:ハチ「ドーナツホール」②
いつからそんなに大きな思い出せない記憶があったか
あなたの声や体温も思い出せず、僕の胸にはぽっかりと穴が空いてしまった。
もう一回何万回やっても、あなたの顔を思い出してしまう。
あの頃は、そんな事思いもせずあなたを想う気持ちだけ。あの何も知らなかった頃に。
追いつかない朝日を追う環状線と追わずともいい夜を追う僕らは何なんだろう?
簡単な感情ばっか数えていたら、忘れ物を3回も家に取りに戻った自分もどっかいった。
ドーナッツの穴が取り出せないように、あなたがいないと大切な感情が取り出せない。
それなのに、もう永遠に会えないような気がする。その思いが体中にまとわりついた。
ならば穴を消してしまおう。僕が消えればその穴も君のことを考える必要もない。
それでも、必要だからそこにある。穴も、あなたの想いも感情も。
僕はもうどうすればいいのかわからない。ぽっかりと空いた深い穴の中へと落ちていく。
さぁ思考開始!あれ?誰だっけ?うわぁ、詰んだわ…ンゴンゴ。
そして僕は旅に出た。大切なあなたが誰だったのかを思い出すために。
離れたら見えてくる君の輪郭。近すぎて見えないものもあるんだと、気づいたよ。
だけどもう戻れない。近づくと貴方が見えなくなる。遠くから見ているだけなんて。
離れすぎて貴方の体温も忘れてしまった。バイバイ、もう永遠に会えないね……。
永遠に会えないね、こんな悲しい結末になってしまうなんてなんて、残念だ……。
君を思い出そうとする心と忘れようとする心がぶつかる。心がくずれていく。
そんなこと、あるはずがないのに…どうしてもそう思えてしまうんだ。
貴方との思い出は本当にあったことなのか?僕が勝手にあなたがいたと思っていただけ?
気持ちが回って一つの輪になる。とっても脆い菓子になる。
<続く>
いかがでしたでしょうか?
ご自身が書かれた続きがどうなったか確認してみてください!
結末は予想できませんでしたね!
続いてHoneyWorksさんの「告白ライバル宣言」へ♪