韓国系アメリカ人女優の水原希子(本名:オードリー・希子・ダニエル)は、中華人民共和国の人々に向けた謝罪動画を投稿した。これは、東アジアのエンターテイメント業界で高まる政治問題の一連の出来事を強調するものである。
水原はソーシャルメディア上で、中国の現代美術家・艾未未(アイ・ウェイウェイ)の作品である、天安門広場の前で中指を立てる写真に「いいね」をしたことを謝罪したとされている。謝罪は英語でおよそ5分間に渡り行われ、その中で彼女は、第二次世界大戦の死者を祀る靖国神社に参拝し、写真を撮った人物であるという疑いを併せて否定している。
水原は中国の映画作品『没有別的愛』に出演しているが、本作品で主演を務めていた俳優レオン・ダイは、台湾の独立問題に関してあまりにも態度が曖昧であるという投資家の判断により、先週、作品を降板させられた。投資家の中には、アリババ・ピクチャーズ・グループがある。
『没有別的愛』はすでにポストプロダクションに入っており、ダイの代役を起用して撮り直しをするかどうかは不明だ。また、水原の卑屈さが中国メディアの愛国勢力を満足させるか、また、彼女がこのまま作品に出演し続けられるかどうかも分からない。
先週、台湾行政院長の林全は声明を発表し、俳優や女優は「政治的な要因に阻害されることなく」活動を許されるべきだと述べた。
1949年に中国共産党が中国本土を占領すると、台湾は自治政府となったが、中国・台湾間の緊張はいまだ止むことはない。今年、台湾で行われた選挙では親中ではない総統が選出され、また最近、中国が主張する南シナ海の領有権に関してオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が下した判決は、不寛容さの台頭を容認しない考えを示している。
2016年1月、K-POPグループTWICEのメンバーのひとりであるツウィは、テレビ番組に出演した際、台湾の国旗を振ったことを非難され、韓国に本社を置く彼女の所属事務所JYPエンターテインメントから中国本土への謝罪を強要された。
香港電影製作行政人員協會(Hong Kong Movie Production Executives Association)のティン・カイマン会長は「中国市場に参入しようとする人々が、中国本土のイデオロギーやルールに従うことは避けられないことでした」と語った。
しかしながら、ティンは最近の出来事は中国の映画作品が海外へ進出する手助けにはならないだろうとも語った。彼は「一般的に、中国本土の作品は海外市場にアピールしません。香港でさえもです。しかし、これは中国にとっては重要なことではないようです」と話した。
この状況にユーモアで対処している人もいる。一部の香港や台湾のネット市民はFacebookを使い(同サービスは中国政府により遮断されているため、中国本土からはアクセスできない)、『第一回 中国への謝罪コンテスト』のページを立ち上げた。
香港の日刊英字新聞サウスチャイナ・モーニング・ポストは、出場者の投稿した風刺的なコメントを引用した。あるユーザーは「中国の民主主義が理解できず、申し訳ありません。理由は、私に知性が足りないからです」とコメントし、また別のユーザーは「私のコンピューターには十分なファイアウォールが入っておらず、申し訳ございません。私はBBCやCNNを閲覧し、Googleにアクセスすることができてしまいます」と投稿している。