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老いてなお盛ん!『恋のレジェンド』超熟女との珍体験~ツッコみたくなる源氏物語の残念な男女~
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老いてなお盛ん!『恋のレジェンド』超熟女との珍体験~ツッコみたくなる源氏物語の残念な男女~

2016-09-25 21:00
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    以前話題になった『熟女ブーム』。流行に関わらず、熟女が好きという男性は意外と多いとか。源氏もかなりの年上好きです。今回は彼の相手としては最年長の、60歳近い超熟女との変わった修羅場をご紹介しましょう。

    『恋のレジェンド』源氏が愛した最年長女性

    源氏の父・桐壺帝はお年でしたが美人が好きで、側近から雑用係まで、とにかく美人を集めていました。源氏は父のそばでこういった美人を見慣れていたせいもあり、「すぐ手を出せる女に興味なし」ということもあって、愛人にはしていません。それを帝は「真面目なもんだ」と解釈していました。(とんでもない!!)

    そんな中、57~8歳の大ベテランの女房がいました。その名も源典侍(げんのないしのすけ)。若い頃からどうにも男好きで、今なお現役。往年の彼氏も未だに彼女を追いかけているという、超モテモテの『恋のレジェンド』です。

    美人で家柄もよく才能もあり、センスも良く、周囲からは一目置かれている人ですが、この件で周りから「ちょっとね~」という風に言われて続けて数十年。

    いまだと50~60代でもお若くて綺麗な方も多いですが、当時は40歳からシニア入り、という感覚だったので、60歳あたりというのはかなりのオーバーエイジ枠と考えていいでしょう。ちなみに源氏は20歳です。

    ただの美人には興味がないが、ちょっと変わった相手には興味が湧く源氏。「どうしてあの年であそこまで男好きなんだろう」という好奇心をそそられ、いつだか冗談半分で寝てしまった。さすがにおおっぴらにするのは恥ずかしい。関係は秘密にされたので、源典侍は残念でした。

    ある日、源氏が帝に挨拶に行くと、源典侍が髪結いの役を勤め終わったところでした。帝はお着替えのために他の部屋へ。部屋には源典侍だけです。

    派手な色の衣装はずいぶん若作りですが、気の若い彼女の雰囲気に合っていて、全体に洒落た感じ。源氏はちょっと、彼女の裳(女房の正装。後ろに長く引いている)を引っ張ってみました。

    「あら~、源氏の君…」色っぽく流し目をしつつ、扇で顔を隠しながら振り返った源典侍。目元は落ちくぼんで黒ずみ、シワでたるんでいるのがわかります。ああ、なんて残酷な描写…!

    源氏は扇に目を転じます。テラテラした赤い紙に、金泥で森の木の絵。ずいぶん派手です。端っこの方に「大荒木森の下草老いぬれば 駒もすさめず刈る人もなし」。古文に明るくない筆者にも、なんだろう、こうムラムラ感を持て余している感じが伝わってくる……!

    (ババアになったので男が寄り付かないなんて、何てこと書いてるんだ、扇に…)と思いつつ、源氏は「枯れてるなんて。夏の森のようにお盛んだと聞いていますよ」。それにしても、こんなシモいやり取り、人に聞かれたらどうしよう。

    気を良くした源典侍は「あら!もし来てくださるなら、『下草』は老いていますけど、喜んで『馬』に食べさせますわ」。さすがレジェンド、超肉食系。源氏は引いて「あなたの『下草』には、いつもたくさんの『馬』が集まってるんじゃないの。難儀だね」

    源氏は場を去ろうとしますが「私、この歳になってこんな辛い恋、初めて…」とオーバーに泣きつき、源氏の腕をしっかと掴んで離しません。

    「そのうちね」とお座なりな返事をし、腕を振りほどいて出て行く源氏の背中に「またまた…このまま終わりになさるおつもりでしょ!?」と追い打ち。源氏はほうほうの体で逃げていきました。

    そこをちょうど桐壺帝が見かけて「宮中の女には興味がないのかと思っていたが、さすがの源典侍は見逃さなかったようだな。それにしてもずいぶん年上だね」からかって笑います。

    源典侍としては、源氏との噂はむしろ嬉しいくらいなもの。ぜんぜん否定しないので、「あんな年寄りがいいなんて意外」「一体どうなってるの」と女房たちはザワザワ。あっという間にニュースになりました。

    源氏のことならなんでも突き止めたい、源氏大好きな頭の中将も耳に挟んでビックリ。「源氏通のオレとしたことが……なるほど、これからは熟女か。よし!」速攻で、彼も源典侍と一夜を共に。頭の中将も秘密にしたので、源氏はこの事を知りません。

    なんやかんやで、源氏と頭の中将をゲットした源典侍はウハウハ。“頭の中将の君も本当に素敵。でもやっぱり、源氏の君が一番だわぁ」。”なんという贅沢者よ”という作者のツッコミも、しっかり書いてあるのがおかしいです。

    相手の男が太刀を引き抜き…ダブルブッキングで刃傷沙汰?

    以来、しつこく迫る源典侍。面倒なので彼女から距離をおいていた源氏。ある雨上がりの日、誰かが上手に琵琶を弾き、美しい声で歌っています。悩ましく情感がこもった演奏です。

    美声の主は誰あろう、源典侍でした。源典侍は琵琶の名人で、男性の名手に混ざって特別に御前演奏に加えられるほど。帝の御髪を結う役を任されたり、御前演奏をしたりと、非常に信頼厚く優秀な女性であることが示されています。

    こんなにうまいなんてズルいなあ、それにしても胸を打つ演奏だ」風情ある様子に誘われて、源氏は源典侍と艶なやり取りをし、部屋に入って行きました。

    夜も更けた頃、部屋に誰か入ってくる気配が。源氏は起きて(誰だろう?源典侍の男か?気まずいな)。源典侍に「今日は誰かと予定があったんだろ?ダブルブッキングなんて勘弁してくれよ」。文句を言いつつ、服をもって屏風の裏に隠れました。

    近づいてきた男は屏風をバタバタたたみ、暴れます。源典侍はこういった修羅場を何度か経験したことがあるらしく、ハラハラしつつもさほど動じていない。さすがレジェンド!

    源氏は(どうしよう。見られないうちに走って逃げようか?でも、みっともない後ろ姿を笑われるのも嫌だな……)プライドが邪魔してためらっているうち、男は怒った顔で太刀をギラリと引き抜きました!

    「ああ~!あなた!あなたやめて!!」源典侍は手をすりあわせて拝んでいます。度を越したやり方に、源氏は逆に相手の正体がわかりました。(こいつ、頭の中将だ!)太刀を持った腕をつねると、頭の中将は「バレた~!」と爆笑。

    「太刀まで抜くなんて正気かよ。もう着替えるから」と源氏が言うも、今度は服を離さない頭の中将。「じゃあ君も脱ぎなよ」源氏は頭の中将の帯を解き、お互いに服を引っ張り合いっこするうちに、ビリビリッ!

    源氏の袖は破れ、中将の帯は落ち、そして2人は大爆笑。ズタズタの格好のまま、源典侍を置き去りにして仲良く帰っていきました。

    翌日、公の場で顔を合わせた源氏と頭の中将。真面目な顔で仕事をこなすものの、何かの拍子に目が合うと思わずニヤニヤ。

    普段は派手に盛っている源典侍が、ろくに着物も着ないまま、20歳そこそこの若者の間で慌てふためくそのおかしさ。この話は2人だけの秘密として、何度もネタにしては思い出し笑い。源典侍は相変わらず迫ってきますが、2人とも逃げ回っている…というところで終わります。

    源氏物語で太刀が出てくるシーンは、夕顔の物の怪とこのシーンのみ。終盤に痴情のもつれの殺人事件の話が間接的に出てくるだけです。物の怪で死ぬ人はいても、刃物で死ぬ人はいない。源氏物語の一つの特徴でもあります。

    従兄弟で、義兄で、親友でライバル!頭の中将

    さて、末摘花のときも源氏を尾行してきた頭の中将。彼もまた、妹の葵の上と同様、左大臣と大宮(桐壺帝の同母妹)の間に生まれた高貴な血を誇りに思っています。

    帝の寵児で、オールマイティーな源氏には、兄の皇太子はじめ、異母兄弟の皇子たちも一歩引くところがあるのですが、頭の中将は源氏に遠慮することなく堂々と付き合い、ライバル意識も隠しません。

    血統でも実力でも源氏に負けないという自負。従兄弟で、義兄で、親友でライバルという関係です。

    ここで2人の恋愛対戦成績(?)についてみてみましょう。
    ・夕顔…△引き分け(頭の中将は知らない)
    ・中将の君(葵の上の女房 )…○源氏(頭の中将が口説いていたのに源氏になびいた)
    ・末摘花…○源氏(でも、源氏は大後悔)

    というわけで、圧倒的に頭の中将のほうが分が悪い。とはいえ、女性を巡って競ってはいるものの、2人にはネチネチした感情は入らない。どことなくスポーツ的です。

    頭の中将は、源氏がいつもコソコソ恋愛して隠すのが面白くないし、一方で偉そうにお説教なんかするのも癪で、毎度、なんとかして源氏の現場を押さえてやりたいな~と思っていたのでした。

    なんにしても、二人は仲良し。源典侍というレジェンドおばあちゃんもさることながら、源氏と頭の中将の若者らしいバカ騒ぎぶりも興味深いエピソードです。今回のことは男同士の約束で、この件は葵の上には黙っていることにし、2人は一層仲良くなって…めでたしめでたし?

    簡単なあらすじや相関図はこちらのサイトが参考になります。

    3分で読む源氏物語 http://genji.choice8989.info/index.html
    源氏物語の世界 再編集版 http://www.genji-monogatari.net/

    (画像は筆者作成)

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    (執筆者: 相澤マイコ) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

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