THR_20161008_01.jpg

フィリップ モリス インターナショナル(PMI)が開発した加熱式たばこ『IQOS(アイコス)』。火を使わず灰が出ないにもかかわらず、従来のたばことほぼ同じ味覚や満足感を味わうことができる新時代のたばことして2016年4月に日本全国で発売されましたが、喫煙者からの注目が高く品薄状態が続いています。

2015年12月には室内環境学会学術大会で『IQOS』を使用した際の屋内空気環境の試験結果について発表。窒素酸化物、ホルムアルデヒドといった成分の濃度が『IQOS』を吸った場合でも何も使用していない時と区別ができないという結果になり、屋内空気環境に悪影響を与えないと結論づけられました。

※参考 ほとんど空気を汚さない!? フィリップ モリス加熱式たばこ『iQOS』の試験結果発表
http://getnews.jp/archives/1296990 [リンク]

フィリップ モリスでは2003年より「リスクを低減する可能性がある製品(RRP)」の研究開発に着手。300人を超える科学者・技術者がRRPの開発に従事し、イタリア・ボローニャ近郊に建設中のRRP生産設備に6億7000万ドルを投資。医療製品と同等に臨床試験などを実施する一方で、RRPに関する100本超の研究論文を査読付き科学誌に発表するなど、より社会への悪影響を低減することを目的とした“たばこハームリダクション”を推進しようとしています。

THR_20161008_02.jpg

2016年10月8日には、都内で開かれた『第51回 日本アルコール・アディクション医学会学術総会』において『たばこハーム・リダクションに関する意見交換会』を実施。長年、依存症の研究を続けているジョンズ・ホプキンス大学医学部教授のジャック・E・ヘニングフィールド博士を座長に、PMIのフランク・リューディケ氏、ブリティッシュ アメリカン タバコ(BAT)のクリス・プロクター氏らが登壇。「喫煙者にとって害の少ない製品に切り替えてもらう」ことの意義について活発な意見が交換されました。

ヘニングフィールド博士は「たとえば、自動車の使用はリスクと連動している。かといって自動車の運転をやめるのか。アルコールも同じで、やめられる人もいればそうでない人もいる」と話し、自身の息子が喫煙者で、ニコチンガムではたばこを吸っている感じではないためやめられず、電子タバコに代えさせたといいます。

その上で「ハーム・リダクションの選択肢は(どの分野でも)増えていることは非常に望ましい。たばこも各国政府や社会がより害の少ない製品が普及できるようにしていくことが重要。スウェーデンでは口に含むタイプのたばこである『SNUS(スヌース)』によって従来の紙巻きたばこの使用率は減っていて、喫煙で発症する肺がんなどの疾病の発生率が下がっているデータが見られている。今後数十年で政策面でも最も有害な製品の使用量を減らせるのが重要だと思う」と語りました。

THR_20161008_03.jpg

また、リューディケ氏は「今回のような公開の場でRRPのディスカッションをする機会は5年前と比較して非常に増えている。より多くの情報を提供して学会での発表に参加することが大事だと認識している」として、フィリップ モリスが2000年以降に発表した150本を超える査読付き研究論文以外にも、ポスターや発表資料などをウェブサイトで公開するなど、情報公開の必要性を強調。

「イギリス政府が電子タバコの広告を出した例もある。それだけでなく企業側がどういうコミュニケーションをしていくのかも重要。従来のタバコとどう違うのか理解してもらうのが第一のステップ。正確な情報を出すことが重要だと考えている」と語ります。

THR_20161008_04.jpg

フィリップ モリスで最高科学責任者(CSO)を務めるマニュエル・C・バイチュ氏は、「今後は紙巻きタバコよりも手の届きやすいようにしていかなければならない。コンビニではどの製品がリスクが高いかという情報が表示されていない。こういった状況を前に進めてことが、タバコの害のない社会に向けて必要」だと話しました。

とはいえ、まだ開発されて間もない製品の健康リスクの低減について明らかになっていない部分があることも事実。AOI国際病院の熊丸裕也副院長は「日本の禁煙学会は喫煙者が“禁煙すべき”だという大前提があるため、RRP普及に積極的でないが、害を増やすことはなくなっているのだから、禁煙できない人がいる限りそういうものは活用するのがよいと思う」という立場を取りつつ、「長期成績についてはこれからの課題」としました。

『IQOS』のようなRRPが従来の紙巻きたばこを代替していくには、よりリスクが低く魅力的な製品を開発・販売していくだけでなく、RRPを使用することで害が低減されていることを実証することや、その情報が多くの消費者に知られる必要があるというのが、多くの専門家の共通した認識になっています。それに加えて、政府や行政機関、公衆衛生当局がハーム・リダクションという“第三の選択肢”についてどのような立場を取っていくのかもカギを握ることになりそうです。

PMI Science(Philip Morris International)
https://www.pmiscience.com/ja [リンク]

RSS情報:http://getnews.jp/archives/1539011