こんにちは、マガジンハウスです。みなさんの多くは今、座っていますよね。はい、ヨガをするチャンスです! 今日ご紹介する一冊は、1日5分、しかも座ったままできるヨガの本。そんな簡単でいいの? とお思いでしょうが、いいんです! なぜなら、椅子に座った‟ほうが”効果的という意外な事実もあり…。というわけで、本書の監修をされたシニアヨガインストラクターの山田いずみさんと、編集担当のHさんにお越しいただきました。
―――山田さん…おきれいですね! 背も高くてすらっとしてらっしゃる。前はモデルをされていたとのことですが、ヨガを始めたのはモデル時代?
山田 「そうですね。その頃に、体を動かしたいなっていう目的と、周りでもヨガをやってる人が多かったので軽い気持ちで」
―――本書にはヨガのメリットとして、暴飲暴食が治まり、結果からだもスリムになる、とありました。でもモデルさんだったということは、元々ほっそりしてらしたんでしょう~?
山田 「いえ、太ってはいなかったものの、パーツによってはむっちりしてたり、テニスやってたのでムキムキしてましたよ」
H 「山田さんは高校、体育大学とずっとテニスやってらして、<かたはば・ひろし>って呼ばれてたぐらい肩が立派だったんですって(笑)」
―――なぜ男名(笑)。ではスポーツはけっこう本格的にやってらしたんですね。ヨガのように日常的にするような運動はされてたんですか?
Y 「いや、ヨガが初めてですね。モデルを始めて実家を出て上京したら、一人だからやることなくて(笑)。スポーツクラブに行ったらヨガのクラスがあったので、これなら一人でもできると」
―――では入りは一般の人と同じですね。それが今やシニアヨガのインストラクターに…って、どうしてシニア向けだったんですか?
山田 「私はおばあちゃん子なんですが、その祖母が、姉妹のように仲良くしていた親戚の女性が亡くなっちゃった時に、とっても落ち込んでたんです。うちで一番元気だったのに、背中も丸くなり静かになっちゃって…。そんなときにたまたま体操の先生に出会ったので、週1回、近所の…主にご高齢の方々を集めて体操教室を始めたんです。そうしたら祖母はすごく元気になって。素晴らしい変化だなと」
―――そこから、元気になるための体操の大切さを感じた?
山田 「はい。モデルという仕事は波があって、その波が私には向いてなかったんですね。うまくいってるときも、安定しないだろうなっていう不安が常につきまとって、もう疲れて…。この体操教室がきっかけで何かやりたいなってなったとき、もちろんヨガの先生もいいなと思ったんです。でも若い人向けの先生はいっぱいいるし、正直、ちょっと敷居が高そうで(笑)」
―――キラキラしてますもんね。
山田 「みんながスター先生を目指している感じが、モデル時代のノリと一緒に思えちゃったんです。私はもうそこに戻りたくない、自己アピールはもういいって(笑)。一方で、おばあちゃんたちのスターになら、是非なりたいなって」
H 「私は、自分でやるならヨガだとは思ってたんですよ。なぜなら、認知症の本を出した時に監修してくださった木之下先生がずっとヨガをやってらして、ヨガほど自律神経を整える働きがあるものはないということを知ってたんで。ただ…ヨガってちょっとおしゃれすぎるというか、意識も敷居も高いというか。由比ガ浜に住んでるから、浜で優雅にヨガしてる人をよく見るんですが、<あのワールドに自分は踏み込めないぞ…>って怯んでたんですよね(笑)。そんなときに山田さんの本を読んで、これだ! と思ったの。私みたいにシャレオツヨガに怯んでる人には絶対いいと思った。山田さんのヨガは、運動が嫌いな人が食いつきやすい要素をすべて持ってるから」
―――確かにヨガって、日常とか人生までヨガモードにしないといけないって思っちゃいますよね。
H 「そう、ストイック。それはそれで素晴らしいことなんだけど、そうじゃない暮らしの人のために何とかしようと思って」
―――私も「そうじゃない」ほうの人間なので助かります。パッと見すぐできそうっていうのは大事ですよね。床に座れってだけでも私には荷が重いんで。「床ってどこだよ?」って。
山田 「そうなんですか?(笑)」
―――家の中でも床座りできる場所を探すのって結構難しいですよ。ましてや玄関出ちゃったらもう無理じゃないですか。だから椅子の上だけでいけるっていうのはイイ! しかも、手軽で楽でお年寄りでもできるというだけじゃなく、他にもメリットがあるんですよね?
山田 「はい、床より椅子でやったほうが、やりやすいんです。床座りだとみんな背中が丸くなったり、股関節が閉じてきたりするんですけど、椅子だと座るだけで骨盤が起きてきて、骨盤が起きるから背骨が上に伸びてくる。正しい骨の位置で体を動かせるようになるんです。また、肺も広がって呼吸が深くなるし、内臓の圧迫も開放されて、関節の可動域も広がります」
―――運動不足で姿勢も悪い人が、自分流に床に座るより全然いいですね! 本では、肩こりや目の疲れなどの体の不調解消、アンチエイジング、メンタル改善など、いろんな目的別のヨガムーブがわかりやすい写真で解説されていますが、中からいっこだけ、ここで御披露いただけますか?
山田 「では簡単なものを。不安解消の動きです」
―――いいですね。職場のデスクについていると、無性に不安感に襲われること、誰でもありますもんね。
不安なときは、胸をゆるめるべし。背中を丸めたり伸ばしたりして、姿勢を改善しながら自律神経のバランスも整えましょう。
↑左・まずは、両手を胸の前で組む。ボールを抱えるイメージで。右・次に、腕は組んだまま、背中を丸める。この際、肩甲骨を開き、お腹のうしろを伸ばすよう意識。この動作を5回、繰り返して。
―――お~、確かに座ってやると、姿勢が崩れにくいですね。補正されるというか、サポートされるというか。椅子の座り方については、そんなにうるさく言わないんですか?
山田 「お年寄りには、うるさく言いません(笑)」
H 「ほんとはね、あるんですよ。背にもたれないで、ちょっと浅めに座って…とか。でもこの本ではやらなかった。だってそうなると、電車では? 車では? ってなっちゃうし」
山田 「色々難しく考えて面倒くさくなってやらないより、まずはヨガをやることに意味があるので」
―――やってるうちに姿勢ってよくなりそうですもんね。
H 「そう、そういうこと(笑)」
山田 「姿勢はよくなりますよ。私、ヨガ始めてから背が2cm伸びたんです」
―――えっ、すごい。成人してから2cmって大きいですよね。姿勢もよくなり背も伸びる。いいことずくめ!
H 「自律神経はもちろんのこと、ホルモン系、循環器系すべてを整えてもくれるわけだから、本当にいいことずくめですよ」
―――そういえば、エクササイズ本によくある、この動作の時に何拍吸って、とかの表記もないんですね。
H 「それってやってるとわかんなくなってくるのよ」
―――あれ、何回吸ったっけ? とか考えて、動きに集中できなくなりますよね(笑)。
H 「私なんかは、そんなことに神経いってたら、それでもう自律神経整わなくなっちゃう(笑)。私がヨガをハードル高いと思ったもう一つの理由は、すごく集中して正しくやらないとダメっていう先入観があったから。そういうのにとらわれなくていいというのが山田さんのヨガで、素晴らしいと思いました。今までの、ヨガってこうじゃなきゃいけないっていう思い込みのほぼすべてを取っ払ってくださった」
―――ノールールってことですか。それでも、毎日はやったほうがいいんですよね?
山田 「はい。5分だけでも、呼吸法だけでもいいので。もちろん、朝目覚めたときがベストではありますが、そのことにとらわれるぐらいなら、いつでもできるときにやったほうがいい」
―――本書にありましたが、山田さんはヨガを始めてから、怒りっぽかった性格が治ったとか。怒りっぽい人だったなんて全然そう見えないんですが!
山田 「もう、全然違いましたよ。高校のテニス部の後輩とかにもすごく厳しくしてて。ボール当てたりとか(笑)」
―――かたはば・ひろしが!
山田 「『ひろし怖ーい』とか言われてました(笑)」
―――ちっとも怒らなそうなのに。今はもう?
山田 「怒らないですね。押さえこんだり我慢したりしてるのではなく、そういう感情が生まれてこないです」
―――それまたすごい変化ですよね! えーと、スリムになって、背も伸びて、怒りっぽさがなくなると。
H 「あと、これは私個人の実感なんだけど、誌面構成を考えるときに実際に色々やったんですが、その日の夜はいつもより眠りが深かったですよ。山田さんのワークショップには日ごろ眠りの浅いご高齢の方々もおいでになるのだけど、私と同じようなことが起こるそうです」
山田 「はい、みなさんよく眠れると仰います。特に、起きたときに体感すると思いますよ、よく眠れた、疲労回復できた~って」
―――老若男女、効果は同じですよね?
山田 「もちろん(笑)。割と大きな企業でヨガのプログラムを作ってるんですけど、その会議でも実際にヨガをみんなでしてみるんです。スーツのおじさま達80人ぐらいがいらして、みんなやっぱりちょっと顔色が良くないんですよ」
―――一番お仕事忙しい世代ですもんね…。
山田 「見るからにすっごく疲れてるなあっていう方々と一緒に、ヨガを30分やったんですけど、終わるころにはみなさんお顔がちょっとピンク色になって」
―――あら、可愛い。
山田 「そしてやっぱり、すごく肩こりが良くなったって言ってくださいます。頭痛が良くなるって人もいますね。最近は、エリートのためのヨガの本が流行っているそうで、それを持って会議にやってきたり」
―――まあ、エリートじゃなくてもね(笑)、スーツ着てる男性は割とイライラが溜まりがちな印象ですよね。女性よりも発散するのが下手だと思うんですよね。
山田 「そうかもしれないですね。私、シニアヨガや椅子ヨガが、シニア世代以外にここまで需要があるなんて全く思ってなかったんです。でも、運動不足だったり、運動が苦手だったり、でも運動が必要なのに忙しかったりする今どきの人たちには最適だったんですよね」
―――山田さん、今後の抱負みたいのはあるんですか?
H 「そりゃあこの本の第二弾でしょう。ね、ね?」
山田 「あ、はい(笑)」
―――では生き方としてのビジョン的な抱負は?
山田 「そうですね、旅をしながら、ヨガをして回りたいな」
―――いいな、寅さんみたい。
山田 「そうですね。寅さん的に旅しながら全国津々浦々でヨガを教えたい。行った先の公民館や病院、ホスピスの戸をバッて開けて、『ヨガやりませんか~!?』って(笑)」
―――道場破りか(笑)
とっても可愛らしい山田さんは、テニス部の鬼先輩だったとは思えない、優しい癒し系の先生でした。ありがとうございました!(写真・中島慶子)
今週の推し本
椅子ヨガ 1日5分で自律神経が整う
山田いずみ 監修
ページ数:68頁
ISBN:9784838752034
定価:780円 (税込)
発売:2017.05.15
ジャンル:健康