今回はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。
■若者論者の高齢化
なんか面白い記事。
「第11回:【思潮】ロスジェネ系解雇規制緩和論者が若者バッシングに走るとき」2013年02月15日『後藤和智の若者論と統計学っぽいブロマガ』
http://ch.nicovideo.jp/kazugoto/blomaga/ar116575
城繁幸は「若者はなぜ3年で辞めるのか?」という本を始め、「若者の味方」というスタンスの人だ。若者の味方というのは構わないのだけど、本とかを読むとどうも主張の筋立てが甘い。
城繁幸自身が、未熟な若者レベルの思考なんじゃ?としばしば思ってしまう。もちろん読ませる部分もあるのだが、ようするに未熟な若者の主張を、大人の知識で補強して正当化している、という印象なんだよね。若者擁護を重厚な論陣でやってくれるなら、おおいに結構なんだけど。
若い頃、年上の人間がなにをやってるかわからず、自分たちがせっせと働いているのに、彼らはなにもしないで高い給料をもらってるんじゃ?と思ったものだ。城繁幸の著書って基本的にそのままのスタンスで書かれている。だから若者にはウケがいいかもしれないが…。
* * *
さて上記の記事は、そういう城繁幸の変節(?)を指摘している内容だ。彼が2004年に初めて出した本「内側から見た富士通 「成果主義」の崩壊」から、そろそろ10年近い歳月が流れている。当初彼に共感した「若者」の読者もそれだけ年をとっている。20代だった読者は30代に、30代だった読者は40代に。
そうなるとこれまでの「若者の敵は中高年だ!」「中高年をやっつければ、若者の天国になる」みたいな主張だと、ウケが悪くなっていくるわけだ。読者ターゲットに30代はもちろん40代も含めなければならない。40代の読者に「おまえは若者の敵だ、さっさと滅びろ」というわけにはいかない。
あ、上記はあくまで俺の誇張なので誤解のないように。俺は彼の著書を読んでそう言っている印象を持っているけれど、彼の本にそうストレートに書いてあるわけじゃない。偏ってるけれど書いてある部分はそれなりに有益な話も少なくない。
これで偏ってなければいい本なんだけどね~。…ん?ということは読者層を広げつつある彼は、この先偏りがなくなって、よい方向に向かうのかしらん。
* * *
ま、彼にかぎらず世代論で若者のウケを狙う著者は、遅かれ早かれこのジレンマに直面することになる。中高年を叩いていればウケる時期は永遠には続かない。
なんかマンガ雑誌と同じ気がする。読者が歳を重ねるのに内容を合わせてターゲット年齢層を引き上げるか、あくまで年齢層は固定で、それを超えた読者には「卒業」してもらうか。少女マンガ家とかも、最初のうちは読者と同じ世代だったから「自分はこう考える・感じる」という感覚で、呼吸するように自然に感性だけで作品を作ってたのが、だんだん自分が年を取っていくので、「若者だったらどう考える・感じるんだろう」と、頭で考えて作品を作るようになるみたいな。若者向けのクリエイターの宿命なんだろうね。
そのため、城氏の言説は、ロスジェネ系の論客の行く末を端的に表しているものではないかと思うのです。すなわち、上の世代への攻撃でのし上がり、自分たちは正当に評価されていない、自分たちが正当に評価されれば確実に地位は上がるはずだ、そして自分たちは上の世代にはない可能性を持った新世代なんだということを主張してきたロスジェネ系の論客は、自分が上の地位に入ると、しきりに下の世代を叩いて顧客を守るようになる。言うなれば「守り」に入るのです。
本当にそう思う。俺が世代論は不毛だと思うのは、まさにそういうこと。自分の未来であり、過去である「他の世代」を叩くのは正当性を見出しにくい。やっぱ社会問題を考える以上は全年齢層のことを考えなきゃ破綻するわけで。
いつの頃からか流行りだした「世代格差論」ってのは、むかしからの伝統的な「最近の若者はけしからん」「おっさん連中は頭が堅い」というなんの正当性もない身勝手な感情に、正当性っぽいものを与えてしまったという点で、非常に罪深い。
若者を優遇すれば、中高年も含めて日本全体が特をする、という論調ならいいんだけど、中高年に損をさせればその分若者が特をするという単純すぎる主張をする人が多い。
執筆: この記事はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年02月22日時点のものです。
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