講義「舞台芸能と動画文化の親和」資料

今回は藤山晃太郎さんのブログ『手妻かわら版』からご寄稿頂きました。

※すべての画像が表示されない場合はhttp://getnews.jp/archives/296991をごらんください。

■舞台芸能と動画文化の

東北大学で行われました、第75回情報処理学会内、ニコニコ学会β*1にて、先日のモノ*2をさらに充実させて講義してきました。

*1:「ニコニコ学会β:研究してみたマッドネス特選集」(2013年03月06日〜8日)『情報処理学会 第75回全国大会 ・ここから始まる情報社会の未来』
http://www.gakkai-web.net/gakkai/ipsj/75program/html/event/event_1-2.html
*2:「講義「舞台芸能とネット動画文化の親和」資料」(2013年02月11日)『手妻かわら版』
http://ch.nicovideo.jp/tezumashi/blomaga/ar107607

プレゼンのPDFはコチラ*3です。

*3:「舞台芸能と動画動画文化の親和 手妻師・藤山晃太郎」(2013年03月06日)『情報処理学会 第75回 全国大会 ニコニコ学会β』
http://www.wazuma.jp/file/haishin.pdf

以下、ご紹介します。

寄席では大トリの前の演目をヒザといい、最後の演目の引き立て役として色物が入ります。今日の学会発表でも色物としてヒザを務めさせていただくこと、大変光栄です。(ペコリ)

この研究は再現性のある客観的事実より、経験則に基づく主観が入っており、サイエンスとしての価値は薄いです。ただ、やらなければ分からない面白い発見が多々有りましたので、お楽しみ頂けると存じます。「動画文化と舞台芸能の親和」です。

講義「舞台芸能と動画文化の親和」資料

情報処理学会 第75回 全国大会 ニコニコ学会β

2013年3月6日  舞台芸能と動画文化の親和  

手妻師・藤山晃太郎

さて舞台芸能をライブ配信する、という試みが盛んに行われるようになりました。

講義「舞台芸能と動画文化の親和」資料

舞台のライブ配信が話題に

2011年1月7日〜12日

「ニコニコミュージカル東方見聞録」

リアル来場3,500円 約2,600人

ネット来場1,000円 約4,400有視聴

こちらはニコニコミュージカルとしては第2弾ですが、特にネットチケットの売上について非常に大きい成功を収めた興行です。リアルチケットが約910万円、ネットチケットが約440万円売りあげており、これを見て積極的に舞台を配信していきたいと思うようになりました。

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舞台の配信が話題に

2011年7月18日

「ニコラファーレこけら落とし」

リアル来場 約200名

ネット来場 約700,000無料視聴

こちらは無料での配信とはいえ、のべ70万の視聴がありました。

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舞台のライブ配信が話題に

2012年4月28〜29日「ニコニコパーティ」

リアル来場 約5,000〜7,000円 約10,000人

ネット来場者 500円〜3,000円 約900,000視聴(有料+無料)

こちらはネットチケットを売りながら、2回でのべ90万の視聴がありました。

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興行の参考

今日の会場(M206) 440席

(旧)歌舞伎座 1,800席

東京ドームコンサート 50,000人

コミケ来場者 550,000人

1回のコミケ3日分の来場!

70万、90万といってもピンと来ない方のために、参考に。90万埋めようと思うと、歌舞伎なら連日満席で1年半。東京ドームは18回満席に。コミケ3日間の来場者の1.6倍の方が一斉に舞台を見ている、ということを意味します。

補足ですが、TVに露出すればこれ以上の認知度を得ることは可能です。しかしながら、現代のTVで舞台芸そのままを5分以上続けて発信してくれるような番組構成は無くなってしまいました。自分主体で発信、という意味において、ネットでの配信はTVにない強いアドバンテージがあります。

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舞台芸の配信に大きな期待

こういった事例を経て、ネットで動画を配信、特に有料配信に強い期待を寄せるようになりました。

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舞台の基本的な性質

客席を事前に決めなければならない

視覚的適正な客数がある

↓    ↓    ↓

人気ある場合は複数回数公演が必要

公演回数ごとにコスト・リスク増大

舞台興行に際し、先に劇場を借りた場合、想定よりお客が少なければ赤字になり、多すぎれば溢れた分を逃してしまいます。数字読みが大事になる。また、手品などは特に「見えない」という問題があるため、一度に入れるお客様の数が限られます。

したがって、大勢に見せられるほど人気を得ても複数回公演をしなければならず、その度にコストは2倍、3倍と膨らみ、リスクも増大します。

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有料配信で変わる舞台シーン

客席を際限な遂増やせる

時間・住まいが合わない客を動員できる

関心が薄い層にお試しで見てもらえる

↓    ↓    ↓

興行モデルとして優れている!

有料配信によってこれが大きく改善されます。

その都度客席が1つずつ増えていくようなイメージで、いくらでも増やせます。(厳密にはサーバ負荷的な上限はありますが運営主力イベントを乗りきれるスペックがあるので無視していいでしょう)そして小さい芸であっても、快適に見ることができます。

また、舞台に時間が合わない方はタイムシフト視聴ができる、遠隔地にお住まいの方も見られる。そして関心の薄い層に安価で気軽にPC前からご視聴頂ける。これは、「モデルそのもの」が異なっており、通常の舞台芸の延長では絶対に実現できない、素晴らしい革命です。

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ニコニコチャンネル開設

配信プラットホームと課金動線の連携

法人のアカウントが必要

公益財産法人横浜市芸術文化進行財団(YAF CH)ヤフチャン

Yokohama Arts Foundation

そこで、公益財団法人 横浜市芸術文化振興財団(通称YAF)様にチャンネルを開設していただき、そこを使わせて頂くことで有料配信を始めました。これがYAFチャンネル*4です。重要なのは、ユーザが視聴しているその環境から、ワンクリックで煩わしい決済をせずに課金ができることです。これは必須です!

各種ある配信サービスで最も課金動線が優れていたのがニコニコチャンネルでした。これは現在でも優位は変わっていないように感じています。

*4:[あざみ野サロン「和楽器の今~ニコニコ動画で活躍中の杵家七三社中を迎えて~」杵家七三社中 ](2013年03月08日 開場:18:27 開演:18:30)『公益財団法人 横浜市芸術文化振興財団 (Yokohama Arts Foundation)ヤフチャンネル』
http://ch.nicovideo.jp/yaf

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wwwwww          wktk

うは

          これは期待

舞台配信やって見た
             wwwwwwwwww
新ジャンルワロタ
   新ジャンルktkr

そこで実際にやってみました。

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有料配信の実施結果

2011年10月17日「二人会『信』」 @500円

合計 約4,500視聴 有料 約400視聴

2012年10月27日「二人会『信』」 @500円

合計 約26,000視聴 有料 約130視聴

2012年12月10日 異の世界 @1,000円

合計 約4,000視聴 有料 約130視聴

初回の感触では、視聴してくれた方の1割ほどは有料課金してくれました。

2回目はニコファーレでの実施であったため、非常に多く来場してくれて期待していたのですが、実際に課金にまで至ったのは実に130名ほどでした。

3回目は500円→1,000円に料金を変更しましたが、そう変わらない集客でした。

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学んだこと

観客はお試しで有料視聴はいらない

有料視聴は「都合により来られなかった客数」

有料視聴には活動周知の効果がない

↓    ↓    ↓
有料配信は認知度のあるタレント向け

元々1,000人集められる人気がある芸人が300席の劇場でやれば700の有料視聴が見込める、という程度であり、配信によって多く見て貰えたとしても課金には至らない。課金することによってクローズドになってしまうため、「無関心層への訴求により愛好家の裾野を広げる」という効果はほとんど期待できないことが判りました。

ネット・TVで有名なタレントを起用すること、または大きく宣伝費を掛けて興行の認知度を高めること無しで有料配信を成功させるのは難しいのではないかと思われます。

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どうしたら実現するか?

2011年1月7日〜12日

「ニコニコミュージカル東方見聞録」

リアル来場者 3,500円 約2,600人

ネット来場 1,000円 約4,400有料視聴

↑    ↑    ↑
モデルとしては優れている
ユーザレベルで実現したい

しかし、現実に2011年にはすでに成功している興行がある。モデルとしては優れているのですから、どうしたらこれが実現できるか、を考えます。

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どうしたら実現するか?

有料視聴文化の促進が重要

ユーザ主導で有料配信

有料配信をやって儲かる仕組み

配信によってファンを増やせる仕組み

「ネット」で「有料」で「配信」を定着させる

    スキームとして、投げ銭を起案

配信費用をペイして収支をプラスにできて、かつ広く認知してもらえるのであれば、誰もが有料配信に関心を持つでしょう。「ネットで舞台を見てお金を払う」という文化が促進されることが肝要と考えます。

文化の促進のためには、企業や配信サイト主体での配信でなく、個人での配信でメリットを得られるようになればいい。そこでネット投げ銭を思いつきました。

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投げ銭視聴の提案

芸の鑑賞1クリック投げ銭返礼

投げ銭の方のみ配布

   ・有料動画or配信

   ・有料音源

   ・有料PDF(壁紙、楽譜、解説etc...) 

通常の投げ銭と異なり、投げ銭してくれた方にお返しがあることが特徴的です。また、そのお返しもネット視聴ならでは、「配布」という形でコストを掛けずに行えます。

現在は「有料動画が見られる」「有料配信が見られる」しかチャンネル機能としてありませんが、将来的に音源やPDFや壁紙・楽譜が配布できれば、より投げ銭をしてくれる方が増えることが期待できます。

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要望

有料性静画・電子書籍

アンケート機能連携

投げ銭を機能としして実践

運営には、チャンネル機能として静画の有料販売や、投げ銭機能の実装、アンケート機能との連携を希望します。例えば、「今日の興行にどのくらいの価値を感じましたか?」として、その額を投げ銭できるページに誘導。

動画を見た延長でシームレスに投げ銭に移行し、ワンクリックで払える、というのが非常に重要です。
額面に応じて複数種類のお返しがある、などとすると良いかもしれません。

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              お米たべろ

  こりないなw

あきらめんなよ!!

投げ銭やってみた
wwwww
          新しすぎるw
また新ジャンルwww

そこで実際にやってみました。

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投げ銭配信 実績
2013年2月9日「あざみ野カレッジ」@200円
合計2,970視聴 有料 88視聴

2013年3月8日「あざみ野サロン」

@200円 と @300円 で実施

この講義と類似の講義を、生涯学習の場でやってみました。

本命講義を無料配信で2時間行い、その後に有料の補講という形で短いながらも価値ある講義を15分ほど行いました。寄付頂いた方は、補講を聞けるという形です。

結果、200円で88視聴得られました。これは多くありませんが、ただ無料配信をした、というだけに比べて【1】視聴者がネットで見た講義(興行)に課金した【2】収益になった という点で、雲泥の差があります。おそらく、最初から200円の有料配信にしていたら視聴数はずっと少なく、課金数はゼロであった可能性すらあります。

3/8(金)にもこちらで実施します。TS視聴可能です。

講義「舞台芸能と動画文化の親和」資料

あざみ野サロン「和楽器の今~ニコニコ動画で活躍中の杵家七三社中を迎えて~」杵家七三社中 (番組ID:lv128769237)

(2013年03月08日 開場:18:27 開演:18:30)『ニコニコ生放送』

http://live.nicovideo.jp/watch/lv128769237

先の例では有料配信でしたが、こちらは有料動画(事前投稿したもの)で興行の演目解説、という内容にしてみました。この形は事前に収録するコストが掛かりますが、当日の来場者様にも興味を持ってもらえる可能性があります。

また、投げ銭用動画として、以下の2つを投稿しました。

1. 演目解説*5 200円 (クリックでジャンプ)

2. 演目解説+NGカット*6 300円 (クリックでジャンプ)

(なんでチャンネル投稿動画は埋め込みできないんや……)

*5:[【投げ銭】「和楽器の今」演目解説](2013年03月07日 )『ニコニコ動画(原宿)』
http://www.nicovideo.jp/watch/1362616439

この動画はチャンネル YAF(Yokohama Arts Foundation) CH に登録されている有料動画です

*6:[【投げ銭】「和楽器の今」演目解説+NGカット](2013年03月07日)『ニコニコ動画(原宿)』
http://www.nicovideo.jp/watch/1362616415

この動画はチャンネル YAF(Yokohama Arts Foundation) CH に登録されている有料動画です

これにより、寄付額を200円、300円、500円で選択して頂けます。

シームレスな誘導はできませんが、アンケート連携も行えるでしょう。

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総括
有料配信はモデルが優れており期待できる
現在は有料配信での大きな成功は難しい
ユーザ主導で有料配信文化を促進
投げ銭により無関心層への訴求と収益化

現時点では、有料配信で大きな収益を得るのは、(ユーザ主体でやる場合は特に)難しいです。しかし有料配信のモデルは素晴らしい。近い未来には成功に結びつけやすくなるでしょう。そのために、ユーザ主体で「有料配信文化」「有料視聴文化」を促進する必要があります。過渡期的に、投げ銭システムを使うことは、無料配信のメリットである「無関心層への訴求」と有料配信のメリットである「収益化」を両立させることができ、文化の促進を狙うことができます。

実装を期待します。実装を期待します。最後までご覧いただけた方、コメント残してくれると嬉しいです。コメント欄を署名に使い、運営(の心)を揺さぶりましょう!

執筆:この記事は藤山晃太郎さんのブログ『手妻かわら版』からご寄稿いただきました。
※寄稿いただいた記事は2011年03月08日に書かれ、2013年03月11日時点のものです。

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