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僕が慶應義塾長とケンカしたわけ
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僕が慶應義塾長とケンカしたわけ

2012-11-12 14:30
    僕が慶應義塾長とケンカしたわけ

    今回は城繁幸さんのブログ『Joe’s Labo』からご寄稿いただきました。

    ■僕が慶應義塾長とケンカしたわけ
    先日オンエアされたNHKの「団塊スタイル」について。
    お茶の間の人から見ればなんということはない普通の情報番組だったと思うが、実は途中でごっそりカットされたシーンがある。

    そういう番組ではないと分かっていたから揉める気は無かったが、その時は僕は久し振りに本気で怒ってしまった。長めに収録して番組の趣旨に沿うように編集するのは局側の自由なので異存はないが、非常に重要なやり取りなので、ここに記しておこうと思う。

    収録時には、中盤で清家篤・慶応義塾長がフリップを出すシーンがあった。高齢者の就労比率の高い国は若年のそれも高いですよというグラフだ。

    なるべく忠実に会話を紹介しよう。

    城「そもそも終身雇用のない他国では、高齢者は自力で労働市場を通じて職を得ているのであり、そういった国々と法で一律に高齢者に職を保証しようとしている日本を並べて論じるのはナンセンスだ」

    清家「ヨーロッパの解雇規制はけして緩いものではなく、日本の解雇規制の強さは先進国では中位。アメリカは別にしても、日本の解雇規制が厳しいというのは非科学的だ」

    城「OECD調査によれば、確かに『日本の解雇規制』は加盟国の中では中位だが、それは非正規雇用の解雇が容易だからトータルでそう見えるだけ。事実、正規雇用だけに限った解雇の難しさでみると、同じ調査で日本は加盟34カ国中第一位だ。そしてこの事実はOECDもILOも憂慮し、日本政府に正規と非正規の格差是正勧告を出している。まずそれらの勧告に沿う形で格差の是正を図るのが筋ではないのか?」

    要するに、解雇規制の強さで高齢者の就業率を引き上げるのはナンセンスであり、まずは正規雇用の強すぎる解雇規制を緩和すべきではないのか、ということを指摘したわけだ。

    これに対する氏の明確な回答は無かった。

    そして、オンエアも無かった。

    あまり指摘されない点だが、実は65歳雇用の義務化とは、男性高齢正社員への究極のプレゼントだ。それは高齢正社員に5年間の安定雇用をもたらす代わりに、若者や女性や非正規雇用から職を奪うだろう。

    誰かを強制的に雇わせれば、別の誰かが泣くしかない。

    恐らく、切りやすい非正規雇用がもっとも波をかぶるはず。

    OECDやILOの勧告に完全逆行する形で、特定グループに純度100%の利益誘導する政策を推進する慶應義塾長の姿勢には、筆者は強い憤りをおぼえる。

    まして、それを指摘されたら「(非正規雇用を含めれば)日本の解雇規制は強くないですよ」

    と、当の非正規雇用を弾よけに使って誤魔化そうとする姿勢は、あまりにも悪質だろう。

    仮に氏の教え子で就職氷河期に終身雇用のあおりを食って非正規として就職し、今回の65歳雇用でまたまたあおりを食って解雇された人間がいたら、氏はなんと言うのか。

    「ほらね、彼みたいなのがいてくれるから、日本の雇用調整自体は楽ちんなんですよ」と面と向かって言えるのか。

    清家篤氏というのは、厚労省お気に入りのセンセイで、多くの審議会や研究会に名を連ねている。

    そして、明らかに厚労省の意向に沿ったとしか思えないリードぶりもしばしば見せている。

    08年には自民党の公務員制度改革に対する霞が関期待のストッパーとして投入され、渡辺喜美氏が自民を離党する遠因ともなった曰く付きの人物でもある。

    実は、この65歳継続雇用の義務化も、氏自らが座長を務める研究会で提言されたものだ。

    あらためて議事録を見ても、氏が最初から結論ありきで、まったく実のある議論をしていないのが明らかだ。

    フォローしておくが、OECD及びNIRAについてははっきりと「正規雇用の解雇規制の緩和」にまで踏み込んでいるし、ILOはそこまで踏み込んではいないものの「正規と非正規の格差を是正すべし」と勧告している。

    なにより、日本政府の国家戦略会議フロンティア分科会の出した40歳定年制を見ても明らかなように、労働市場の流動化が日本再生のために不可欠だというコンセンサスは、学識者の間ではほぼ成立している。

    ただ、そのためにはスペインやイタリアのように、硬直した労働市場にメスを入れる以外に道は無く、国民の理解を得るための地道な啓発が必要となる。

    本来なら、地位のある識者こそ率先してその理念を国民に説くべきだろう。

    天下の慶應のトップに、特定省庁の意向を汲もうとする人物が座り、慶應の名のもとにそれを社会全体に布教しようとすることが、筆者は残念でならない。

    省庁が自らの意に沿った学者のみで審議会を固め、望み通りの政策を作り、省益を確保する。

    そしてそんな役割を忠実に演じた学者は、官庁との太いパイプを作って出世する。

    美しすぎるwinwinの関係だが、後には誤った既成事実だけが積み重ねられることとなる。

    もちろん、そのコストを負担するのは、彼らとは無縁な国民だ。

    番組を見ていた何十万人という視聴者は、恐らくは氏と厚労省の見解をしっかりと受け止めてしまったことと思われる。

    本稿をここに書くことで、せめて一万人くらいには正しい見解を伝えておこうと思う。

    執筆: この記事は城繁幸さんのブログ『Joe’s Labo』からご寄稿いただきました。

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