今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
■経済の教室(現実編1) アベノミクスの評価(中部大学教授 武田邦彦)
アベノミクスの評価が真っ二つに割れている。一つの見方は「全然ダメ」というもので、「お金なんか配っても、経済の拡大の方には使われずに、「デフレ下のバブル」を産むだけ」という考えの学者と、「お金さえ配れば、活動が盛んになって一気に景気が回復する」と言っている学者がおられる。
どちらも途中まで同じで、議論は精密で紛れがないが、結論は正反対だ。
アベノミクスの基本は、デフレで景気が悪いのと、アメリカが金融緩和をしてドルが余り気味で円高になっているので、円を刷って円安に誘導し、物価を2%上げるということだ。それには「お札を刷るぞ」と言い、「インフレになるぞ」と脅かすことだ。
その結果、もともと「もっとお金を使いたい」という人が多いから、購買意欲が刺激されて国内ではものが売れ、円安になるので輸出が増え、円安で海外からの輸入品が増えるのでそれほど物価は上がらない、だからとにかくインフレになるまでお札を刷れば良いと言う。
もともと人間の活動が1年に2%ぐらい拡大するので、それにそって金融も拡大していくというインフレターゲットはすでに先進国で実施していないのは日本だけという状態であったことも頭に入れておく必要がある。つまり日本の日銀の政策は世界で日本だけだった。
もう一方は、もともと金融は緩和されているからこそ、ゼロ金利で、それでも需要は弱かった。だからこれ以上、金融を緩和するとそのお金は株や土地など「現物」にはいかないのでデフレのまま、バブルになる。構造改革か新しい技術革新がなければダメだと言う。
また、国内物価は円安で原料価格が上がるので値上げ(インフレ)になるが、すでにグローバリゼーションしているので、価格の上限は抑えられる。だから一部の輸出産業だけ良くなって、あとはダメになる。
お札が刷られているので、円安が加速し、あるいは1ドル180円ぐらいまで円が暴落する可能性があるという恐ろしいものだ。
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もし、「経済学」が「学問」ならば、「同じ事実」から「同じ結果」が予想されるはずだ。ボーイングが航空機を製造して「飛ばしてみないと墜落するかどうかわからない」では航空工学は成立しない。
ということは、経済学はまだ成立していないことになる。1990年から今まで22年間の経済実績があり、今回のアベノミクスは政府と日銀、それに経済界もほぼ考えや実施することは決まっている。つまり「事実」はすでに確定しているのだから、その結果が学問的に確定しないと言うことになると、なにか「個人的な判断」が入るからに他ならない。
学問は「一つ一つの事実を精密にくみあげ、精緻な論理で合理的な結果に到達する」というものだから、結果は一つになるはずなのである。どうも経済学者の話を聞いてみると、Aグループの人は「お金は従」としているのに対して(アベノミクス反対派)、Bグループの人は「お金が主」と言う考え(アベノミクス賛成派)だ。
これは基本中の基本で、「必要に応じてお金を刷る」というのか、「お金があれば人は行動をし出す」というのか、経済の基本的な事になる。それが決まっていない。だから途中に「個人の判断」が入るから、経済学の専門家以外は「わからない」と思うしか無い。
ところで今日、春からの値上げのニュースを解説したけれど、ニュースの流し方自体は「値上げは悪だ」という感じだ.内閣の支持率が70%を超える中で、インフレターゲット2%ということは、とりあえず物価は2%の上昇するのを国民が支持しているはずだが、そうでもない。
まだ学者も一般人もどうしたら良いかわからないのだろう。でも、実はインフレターゲットは消費税の増税は全く別の狙いがある可能性もあり、日本経済そのものとは別に個人の資産にも大きな影響を与えるので、もう少し慎重に考える必要がある。
執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年04月09日時点のものです。
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