今回は電脳くらげさんのブログ『脱社畜ブログ』からご寄稿いただきました。からご寄稿いただきました。
■作業時間わずか30分!Kindleストアに僕の黒歴史小説が並ぶまで
社畜にならないために、会社以外からの収入を得ることはとても重要だ。手法はアフィリエイトや古本のせどり、iPhoneアプリやAndroidアプリを作ってマーケットで売るなど色々あるが、僕がずっと注目していたのが電子書籍のセルフ出版である。Kindleが日本でも発売されるなど電子書籍まわりのニュースは頻繁に耳にするので、いま非常にホットな副業だと思う。
もっとも、電子書籍市場は注目こそされているが、まだまだ小さい市場である。Gene Mapperという個人出版の小説がAmazonのランキングに入ったりして話題になっているが、それでも2200部だ。ポテンシャルは感じるが、紙の書籍には全然届きそうにないというのが現状である。僕も、市場が拡大するまでは静観していようと思っていた。
「Gene Mapper (ジーン・マッパー)[Kindle版]」 Fujii Taiyo(著) 『amazon』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B008KSN2F4/
ところが先日、ハードディスクの中を整理していたら、大学生の頃に書いた恥ずかしい小説が発見された。僕は教養学部の頃は文学サークルに所属していて、拙い小説を数篇書いたことがある。どうやらこれはその時に書いたもののようだ。黒歴史で自我が崩壊するおそれがあったのでそのまま削除しようとしたのだが、一転してこいつを Kindleストアに並べてみるというおそろしい計画を思いついた。どうせ、お金はかからないし、2012年11月現在で、この恥ずかしい小説がどのぐらい売れるのか興味がある。ということで、とりあえず挑戦してみることにした。このエントリはそのレポートであり、今後 Kindle Direct Publishing でセルフ出版をしてみたいと思っている人がいたら参考にしてもらえればと思う。
●原稿の準備
セルフ出版の最初の一歩は、原稿の準備である。前述のように、僕には大学生の頃に書いた小説の原稿があったので、これを使用することにした。僕の手元にあった小説のデータは、テキスト形式だったので、まずこれをePub形式に変換しなければならない。変換には、青空文庫の注記入りテキストをePub3ファイルに変換するツールであるAozoraEpub3*1を利用した。元のテキストに青空文庫記法*2を適用しておくといい感じに処理してくれるので、ルビを振ったり改ページをしたりしたい場合は青空文庫記法をある程度知っておくとよい。
*1:「AozoraEpub3 - 青空文庫ePub3変換」 『@WIKI』
http://www18.atwiki.jp/hmdev/pages/21.html
*2:『青空文庫 組版案内』サイト
http://kumihan.aozora.gr.jp/
と言っても、僕が使用したのは
[#改丁][#地から2字上げ]
の2つだけである。なお、手っ取り早く青空文庫記法を知りたいのであれば、実際に青空文庫*3に行ってテキストファイルを見てみるのが一番手っ取り早い。僕は明暗*4のルビありテキストを参考に、記法を把握した。
*3:『青空文庫』サイト
http://www.aozora.gr.jp/
*4:「図書カード:No.782 作品名:明暗」 『青空文庫』
http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/card782.html
●表紙の準備
次にしなければならないのは、表紙の準備である。実は表紙のデータは絶対必要というわけではないが、やはり無いのはちょっと気持ち悪い。しかし困ったことに、僕には表紙を作るようなデザインセンスも技術もない。悩んだ末に、足成*5でよさげな写真を探して、これにタイトルと著者名を重ねて表紙とすることにした。手作り感が溢れるが、ないよりはマシである。なお、推奨画像サイズは長辺が2500ピクセルと結構でかい。幸い、足成には高画質画像があるのでそれを使用した(それでも、2500ピクセルには足りないが、細かいことには目をつぶった)。
*5:「写真素材 足成【フリーフォト、無料写真素材サイト】」
http://www.ashinari.com/
●入稿する
ここまでできたら、次はもう入稿である。 Kindleダイレクト・パブリッシングのサイト*6にアクセスしよう。Amazonアカウントのある人は、そのままサインインできる。サインイン後に、会社・出版者情報(氏名、住所、電話番号)と、印税が振り込まれる銀行口座を入力し、保存する。あとは、出版したい本のタイトルや、内容紹介、言語、カテゴリなどを入力していけばよい。特に迷うような項目は存在しないはずだ。ここで表紙画像と原稿のePubファイルもアップロードする。
*6:「Kindle ダイレクト・パブリッシングへようこそ」 『Amazon』
https://kdp.amazon.co.jp/self-publishing/signin
●価格と印税を決める
最後に、価格と印税を決定する。なお、2012年11月現在、日本では印税70%のオプションを選択することはできない。この印税70%は通信費をこちらが負担するので実は70%ではないなどという罠があるのだが、そもそも指定できないんだから考えてもしょうがない。日本では印税はいまのところ35%ということになる。ちなみに、僕は価格を200円にした。1冊売れると、僕に70円入る計算である。
●あとは待つだけ
価格と印税を決定して入稿を行うと、審査のフェーズになる。あとはもう待つだけである。最大48時間とサイトにはあるが、僕の場合は30時間ほどで審査と出版準備が完了し、 Kindleストアに並んだ。自分で「並べる」ボタンを押す、みたいな作業は全くなく、気づくと並んでいるという状態でちょっとびっくりさせられる。
●電子書籍の未来
もう、本当に簡単すぎたというのが第一の感想である。原稿を書く時間を除いた実作業時間は調べたりする時間も含めて、約30分であり、だいぶお手軽にセルフ出版が完了してしまった。iPhoneアプリのiOS申請などと比べるとハマりポイントや覚えなければならない概念もほとんどなく、あっさりとストアに自分の書いたものを並べることができる。Amazonで本を買うのは簡単だが、売るのも同様にかなり簡単である。
冒頭でも述べたように、今はかなり市場が小さいので、さすがにセルフ出版だけで生活するようなことは不可能だと思われるが、今後端末の普及などと同時に、どんどん可能性が出てくる市場だと個人的には感じている。また、純粋に書いたものを簡単にAmazonに並べて売れるというのはとてもおもしろい。僕たちは、非常に楽しい時代だに生きていると言ってよいだろう。
●最後に宣伝です
以上の手順を経て、出版された本が以下になります。
「架空サークルのつくりかた [Kindle版]」 電脳くらげ(著) 『amazon』http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00A7FISUC/
大学デビューに失敗した男が、架空のサークルを作って翌年の新入生を釣ろうとするという話です。
当時、森見登美彦にハマりまくっていたということもあって、森見先生の影響が色濃い文体・内容で非常にアレなんですが、ご興味のある方はどうぞ購入してみてください。Kindle端末が無くても、iPhoneやAndroidのKindleアプリがあれば読むことができます。タブレット端末がなくても、スマートフォンをお持ちの方はぜひどうぞ。無料でサンプルを読むことも可能です。
ちなみに、この本の売上は、僕の歯の治療費に充当される予定です。みなさんも、虫歯には気をつけてください。
執筆:この記事は電脳くらげさんのブログ『脱社畜ブログ』からご寄稿いただきました。
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