今年9月にブエノスアイレスで開催される第125次国際オリンピック委員会(IOC)総会で開催地が決定される予定の2020年夏季オリンピックには東京(日本)・イスタンブール(トルコ)・マドリード(スペイン)の3都市が立候補しています。
東京都の猪瀬直樹知事は招致活動の一環として姉妹都市である米国・ニューヨーク市を訪れ、同市のブルームバーグ市長に協力を要請するなど東京招致に向けたPRを行っていましたが、滞在中に現地メディアの取材で行った質疑応答の内容が物議をかもしていることを26日付のニューヨーク・タイムズが報じています。
同紙の記事によると、猪瀬知事は「イスラム教国初のオリンピック開催」「3月時点での開催支持83%」(東京は同時期の調査で77%=招致委員会発表)などを掲げているイスタンブールに対抗心を通り越した敵意をむき出しにして、次のように激しい“攻撃”を行ったとされています。
※以下の発言内容はニューヨーク・タイムズの英文記事から日本語に再翻訳したものであり、本人が現地で行った発言と細部が異なる可能性があります。
アスリートにとって最善のオリンピック開催地は(リオデジャネイロで2016年に開催される予定の)ブラジルのように社会インフラが整備され、近代的な施設がある国だ。我々(日本)もそれらの条件を満たしている。
しかし、(トルコを含む)イスラム教国は、アッラーの教義を絶対とする階級社会で、内戦に明け暮れている。そのような国は開催国にふさわしくない。
「イスラム教国初の開催」と言うが、それは「仏教国初」や「キリスト教国初」と同様に重要な意味を持つものではない。
トルコは日本よりも平均年齢がはるかに若く、貧しいので子供がたくさん生まれる。日本は人口増加も止まり、高齢化が進んでいるが健康的で落ち着いた生活を送っている。トルコの国民も長生きしたいと思っているのは同じだろう。彼らは早死にしたくないのならば、日本と同様の文化を創造すべきである。
IOCが定めるオリンピック招致活動規則の第14条では、立候補都市やその責任者が競合都市に対するネガティブ・キャンペーンを行ったり優劣の比較を含めて競合都市のイメージを損なう発言を行うことが固く禁じられています。今回の猪瀬知事によるイスタンブール“攻撃”が活動規則に違反する可能性は非常に高く、ニューヨーク・タイムズの記事でも「今後この発言がIOCで問題となり、東京の招致活動に重大なマイナス材料となるのは避けられないのではないか」と論評しています。
猪瀬知事の発言に対し、イスタンブールのオリンピック招致委員会はニューヨーク・タイムズの取材に対し「IOC規則に基づき、論評は差し控える」としていますが、トルコのスアト・キリク青少年・スポーツ大臣は『Twitter』で次のように遺憾の意を表明しています。
Tokyo2020 Başkanı'nın İstanbul'a ilişkin negatif değerlendirmeleri haksız ve üzücü. Olimpik değerlerle de bağdaşmıyor. ++東京の招致委員会最高責任者がイスタンブールを中傷したのは不公正な行為であり、悲しく思う。このような発言はオリンピックの精神にも反しているのではないか。
(出典:https://twitter.com/GSB_SuatKilic/status/328212879964786688 )
このように、日本国外では今回の猪瀬発言が大問題となっているにも関わらずニューヨーク・タイムズの第一報から2日が経過しても日本国内では取り上げられる気配がありませんが、親日的と言われるトルコの閣僚からも発言を問題視する声が出ており重大な国際問題に発展するのは避けられないでしょう。就任直後から都庁の全部局に『Twitter』を活用した情報発信を指示した猪瀬知事ですが、29日朝の時点ではこの報道についてコメントをしていません。
参考:In Promoting His City for 2020 Games, Tokyo’s Bid Chairman Tweaks Others(New York Times, April 26)
画像:オリンピック旗(出典:Free Stock Photos )
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