今回は山口哲一さんのブログ『いまだタイトル決めれず』からご寄稿いただきました。
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■クールジャパン推進会議に間に合わなかったけど、コンテンツ輸出への極私的処方箋~国のお金の使い方~
これまた、アップするタイミングが遅くなってしまったけれど、「クールジャパン推進会議」に関する私的な意見。
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ブロガーやまもといちろうさんからは、こんな批判があった。
「「規模の経済」が働かないコンテンツ産業に変な振興策を持ち込むのはやめて欲しい」 2013年04月08日 『やまもといちろうBLOG』
http://kirik.tea-nifty.com/diary/2013/04/post-96a3.html
見識の高い鋭い指摘なのだけれど、切り込み先は、違う方向でお願いしたい。敵がいるのは、そっちじゃないんだよね。「武士の情けで見逃して」って感じ。多少変でも、政府が振興策を出す方向で考えていただきたい。
中村伊知哉さんも、初音ミクとかガンダムとかニコ動とか、サブカルの具体を言い過ぎだなとは思う。「炎上協会」会長らしい、議論を呼ぶための作戦かもしれないけれどね。
初来日のMay
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このクールジャパン推進会議は、ネットを見ていると、切込隊長だけではなく、批判も多い。「政府主導はだめだ」「国の金を当てにしないで自分達でやれよ」という意見も多かった。その通り。
「民間主導でやれ」ってという意見は、その通り。微力すぎて申し訳ないけれど、僕だってやっている。タイでシンガー・オーディションをやったのは、2006年だ。16才の美少女を見つけて、日本でメジャーデビューさせて、アジアでもリリースした。もちろん、全部、自分のリスク。やっと形になるかというところで、卑怯な奴が勘違いして内部崩壊、失敗したけれど(Sweet Vacation関係者とファンの皆様、本当にごめんなさい)、アジアのシンガーと日本のプロデュースの組合せでグローバルに勝つという考え方で、継続して頑張っている。血を流しているとまでは言わないけれど、潤沢には持っていない知恵もカネも汗も涙も鼻水も流せるのものは全部流して、必死でやってきた。これからもやる。「お上の施しなんかあてにするもんか、すっとこどっこい!」って気概は持っているつもり。
オーディション後のスナップ
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でも、実際に海外のカンファレンスや市場状況を見ると、政府支援が違いすぎて驚愕する。こっちが個別に竹槍で戦っても、戦車と爆撃機でやられる感じ。ゲームのルールが違うんだよ。
こういう話では、必ず比較になるK-POPだけれど、実際のところは、韓国も模索中だと思う。アップルがソニーとimodeを参考にiPodとiTunesStoreの仕組みを作ったように、韓国のSMエンターテインメントの手法はJ-POPの応用から始まっている。
国を挙げての応援がある中で、K-POPは、日本以外の国では、まだ成功とは言うのは早い状況だろう。それから、何度も言ってるけれど、国際基準で見れば、韓国の政府支援体制は特殊じゃ無い。ヨーロッパの小国だって、自国のポップミュージックを売るために相当の努力をしている。何もしていない日本が特殊だ。
それで、どうするべきか?
この問題の本質的な解決策は、海外の市場で利益を出せるプロデューサーがたくさん出てきて、グローバルなビジネスモデルと稼ぐノウハウを持つことだ。
以上終了、なんだけど、、、
じゃあ、どうするかの答えは簡単じゃ無いし。まして国の政策として、どう落とし込むのかは、全然わからない。頭の良い人達に考えて欲しい。
ただ、実際に現場で頑張ってきた身として、低い視線から、とりあえず、絶対にやっておいた方がよいことは確信がある。
●<J-POPの海外輸出活性化のための政府の役割>
● 海外フェス出演者には渡航費を出す
日本カルチャーをテーマにしたフェスは世界中に数百とあるらしい。Sync Music Japan*1が情報収集を始めたら、あっという間に100を超えた。日本の業界関係者が知らないところで、J-フェスが行われている(最近でこそ有名になったパリのJapan Expoもこの前まで、そうだった。)
*1:「SYNC MUSIC JAPAN」
http://www.syncmusic.jp/wordpress/
一定規模のフェスティバルから公式に呼ばれたアーティストの渡航費は全額補助と決めて欲しい。何故なら、海外では政府補助がある方が普通なので、渡航費を要求するとフェスの主催者がびっくりする。エコノミーで出演者以外は1名とかシビアな基準でも良い。航空会社に協力して貰ってもよいかもしれない。
それだけで、あっという間に、日本人アーティストが海外ファンの前でコンサートをする機会が急増する。
● SXSWではパーティをやる
世界を代表するITと音楽(と映像)の祭典SXSWのレポは、先々月に書いた*2けれど、日本の税金は1円も使われなかった。多くの国が億単位のお金を掛けている中であまりに酷い。SXSWは日本レップがあるのだから、海外のメディア関係者を集めて、日本のIT企業やアーティストと交流する場をつくるべきだ。期間中に会場付近に常設スペースを持つのが良い。数千万円あれば、ずいぶん、いろんな事ができる。
SXSWで模範例をつくって、他のカンファレンスに応用すれば良いと思う。
*2:「オースティンで感じたこと。~SXSW2013レポート~」
http://yamabug.blogspot.jp/2013/03/sxsw2013.html
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http://px1img.getnews.jp/img/archives/2013/05/52.jpg
● テレビ局とレコード会社が協力できる仕組みにする
これまでの業界慣習に則ると映像コンテンツではテレビ局が、楽曲(原盤)については、レコード会社が中心になる。ただ、表向きの見解はともかく、テレビ局やレコード会社の幹部で、本気で海外で稼ごうと思っている人は、ほとんどいない。残念なことだけど、国内に閉じた従来のエコシステムが秀逸で、できるだけ長く、これを守りたいと思うのはやむを得ないし、そのことで僕らに恩恵があるのも事実だ。
けれど、もう守るだけでは無理だ。尊皇攘夷か文明開国かって事では無くて、海外で稼ぐモデルを模索して確立する必要がある。テレビ局やレコード会社を軸にしないで、でも上手くいったら、彼らにもメリットがあるような仕組みで進めたい。
テレビ局やレコード会社に暖かく見守っていただいて、実際にコンテンツをつくっている人たちが、海外に「道場破り」に行くような形をつくるのが良いと思う。
● ドラマの音楽は一律に許諾して、不足分は国が払う
海外に番組販売する際に、レコード会社が音楽の許諾を出さなくて、あるいは許諾に何ヶ月もかかって、流通の阻害要因になっているというのは、意外に知られていないかもしれない。
最終的なルールは、ビジネスモデルができて、お金が回り始めてから考えることにして、とりあえず、期間限定でいいから、海外のテレビ局が買った作品の音楽は自動的に許諾をだすことにして、一定の基準で不足分は政府が補う形にするのが、話が早いと思う。大した金額にはならないはずだし、その金額が問題になるほど、海外番販が進んだら、嬉しい悲鳴だ。
僕も最近知ったのだけれど、1クール(12本)×1時間というセットは、完全に日本だけのルールで、海外で売るには不自由だそうだ。そう言われてみれば、米国や韓国のドラマシリーズは長いよね?こういうところから考えて、変えていかないと、輸出大国にはなれない。
● 歌番組も同様にして、アーティストへの不足分を補填する
日本の歌番組が海外で観ることができないというのも大きな問題だ。NHK「J-MELO」が唯一、国際放送として頑張ってくれているけれど、「Mステ」が台湾など一部で流れる位で、J-POPの存在感は薄い。人気がある時にしっかりやってなかったので、今や日本の歌番組を買おうとする局も減っているという。
局が販売に難儀をする一つの理由は、著作権のことがある。放送については許諾がとれていても、ネットに流すのは別途の許諾が必要という話。前述のドラマ音楽にもある構造なのだけれど、「放送と通信の融合」とか言っているのは日本だけで、もう既に海外のほとんどの国のテレビ局では、そもそも区別無くネットサービスもセットで行っている。「放送だけ」の販売と言っても、先方には、そんな枠はそもそも無いのだ。
こういう問題では、「事務所がうるさいから」と悪者にされることがあるけれど、僕の知り限り、ほとんどの事務所は、むしろ積極的に海外番販して欲しいと思っている。海外でコンサートツアーをやるケースは増えてきたし、収益もあがるようになってきたけれど、楽曲を聴かせる方法が無いという、泣きそうなくらいナンセンスな話になっている事例も多い。
● 大手広告代理店に予算管理をさせない
国の予算でプロジェクトをやる場合の事務局運営は、実質的に大手広告代理店が行う事が多いが、やめるべきだ。何もコンテンツは創らない彼らの事務局経費で、莫大な金額が消えていく。
役所にとって、確実なレポートを提出して「事故対応」をしてくる「保険」が欲しいのはわかるけれど、いくらなんでもコストパフォーマンスが悪すぎる。事務局運営は、筋肉質かつガラス張りで運営する仕組みがマストだ。
広告代理店には、企業協賛をとりまとめるという本分のところでは、大いに力をお借りしたい。サムソンや現代はK-POPと連動して、イメージアップしている。広告クリエイティブ含めて、重要な役割を求められている。ポジションをきちんとつくって貢献してもらいたい。
安倍政権は金融政策に続いて、外交でも得点を上げていて、成長戦略にも期待が掛かる。音楽は売上金額は小さく見えるけれど、国のイメージ戦略上は非常に重要だ。J-POPの好感度は世界中でびっくりするほど高くて、日本の成長戦略の一翼を担うポテンシャルは十分にある。ただ、お金の使い方が、高度成長時代の土木のゼネコンみたいでは、時代遅れのビジネスモデルを守っている既得権益への補助金と化して、コンテンツ輸出には全く効果が無い。海外でのマネタイズという新しいスキームに本気で取り組んでいる人を支援する仕組みとなることを、心の底から懇願している。
執筆: この記事は山口哲一さんのブログ『いまだタイトル決めれず』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年05月16日時点のものです。
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