今回はかさこさんのブログ『つぶやきかさこ』からご寄稿いただきました。
■景気が良くなるとタクシー使うという意味がわからない
バブルを知らない「不景気」が当たり前の世代にとって、景気が良くなったからタクシー使うとか、景気が悪くなったからタクシー使わないとか、そういう感覚がまったく意味不明なんです。
景気回復の兆しとしてタクシーの需要回復がよく持ち出される。
先日、日経新聞に「タクシー需要 底入れの兆し 東京6年ぶりプラス」という記事が出ていた。
2012年度の話だが、観光などで個人の利用が増え、需要が回復している反面、法人需要は盛り上がりに欠け、本格回復にはもう少し時間がかかりそうだ、という内容だ。
この記事のトーンからいえば、景気が良くなると法人需要が回復するのだろうか?
景気が良くなると、仕事が忙しくなるから、タクシーの利用頻度が増えるのかもしれないし、接待が増えて、飲み会が増えて、タクシーで帰ることが増えるからなのかもしれないし、単に景気が良いからという気分から、タクシーを安易に使う人が増えてしまうからなのかもしれない。
でもそれって、今の日本経済の足を引っ張っている元凶であり、未だに過去の日本の高度成長モデルにしがみついている、「老害」世代の悪しき風習なんじゃないか。
景気に浮かれてタクシー利用増やすから、後で不景気になった時に困ったことになるんじゃないか。
その貴重なお金をもっと前向きな投資に使えばいいのに。
アベノミクスでまたしても2008年金融危機前の、世界同時バブル、円安バブルの状況を思い起こすわけだけど、今のように株高で浮かれまくっていた2006~2007年の頃。
私が勤めていた会社は金融関係の仕事が多く、仕事が増えて、にわかバブルにわいていた。
社内での飲み会も結構頻繁に行われていたのだが、そこで不思議なことがあった。
毎回、みな電車を使わずタクシーで帰るのだ。
確かにその当時は今のアベノミクスと同様に、世間では浮かれたムードがあったし、実際に仕事も増えていた。
でも少ない人数の会社とはいえ、
みんなが飲み会の帰りにタクシー使ったら、それだけで10万~20万円の金がふっとんじゃう。
社内の飲み会なんだし、別に終電で帰ればいいのに、と思いながらも、一度、タクシーの快適さに慣れてしまうと、電車で帰るの面倒だなと思ってしまう。
ましてや私の場合、タクシーで帰ると、ちょうどこの頃、頻繁に撮影していた、京浜工業地帯の夜景が高速道路の横目に見える。
工場萌えとしてはたまらない特典なわけです。
でも景気が良いとか株高でバブルだとかいって、このお金の使い方はおかしいんじゃないか。
タクシーで帰らなければ、その分、食事代・飲み代を3倍ぐらいにできるわけだし、そんなことしなくても、タクシー代に消えるなら、給与に還元してほしいし、いくらでも生産的な使い方があるんじゃないか。
それで社長に「飲み会のタクシー代って無駄じゃないですか?」
と勇気を振り絞って言ってみたところ、その意味を理解してくれて、以後そうした「無駄遣い」は格段に減った。
そういえば25歳で最年少上場を果たした、リブセンスの社長村上太一氏を描いた本を読むと、上場したのに住んでいるのは、8畳一間のマンションで、冷蔵庫もないという。
本を読む限り、別に清貧を気取っているわけでも、かっこつけているわけでもなく、必要性を感じていないからといった感じだ。
その後、別件の取材でインタビューしたが、金満・傲慢な匂いがまったくしなかった。
未だにいるじゃないですか。
ちょっとビジネスがうまくいって、金が入ってきたら、やれ高級車だの高級時計だの高級マンションだの買いまくって、それを平然とメディアに出て自慢してしまう人たち。
ああいうの見ると、正直いたいなと思うわけです。
前時代的な発想というか、「田舎者」の発想というか。
「私はお金の使い方を知らないバカです」と、全国に宣言しているみたいじゃないか。
いや別にもとから高級車が好きで、お金持ちになったら買いたいなというならいいと思うけど、そうではない。
単に「値段の高い物がいいもの」と思い込んでいる、値段でしか価値がわからないかわいそうな人間だ。
以前、テレビでやっていた「超高級ワインと超安物ワインを見分けられるか」
とかやってみたらまず見分けがつかないのだろう。
「不景気」が当たり前の世代や、「不景気」でも失業せずに、食べていければそれでいいと思う人たちにとって、景気が良くなったから急に金遣いが荒くなるとか、タクシーを使いまくるとか、はっきりいって感覚として理解不能なわけです。
別にタクシー使うなって言っているわけではない。
「不景気」だろうが、ぶっ倒れそうで、とても歩いて病院に行けないような状況なら、タクシーを使うし、何人か複数で乗り合わせて、電車賃で人数分払うより、少し割高でも時間が早ければ使うし、荷物が重いとか、足の不自由な人と一緒にいるとか、出張でレンタカーの方が安くても、慣れない道を行かねばならず、事故の危険とか考えると、タクシー利用した方がいいとか必要性があれば使えばいい。
ただそれだけの話で景気の良し悪しとは根本的に関係ない。
結局、景気が悪くなるのって、景気が良くなった時に後先考えず、無駄遣いする人たちがいるからではないか。
そういう散財需要って長く続くわけがない。
景気が良いというかバブルの時がおかしな時代で、景気が悪い時が当たり前と思えば、別になんてことはない。
こう考えている人が増えているとすると、いくら政府がやっきになって、景気を良くしようと思っても無駄だということになる。
ポイントがもらえるから物を買うとか、この時だけ増税前だから安く買えるとか、そんなことで消費や投資を判断しない。
必要な時に必要な物を買う。
欲しい物がなければ買わない。
ほとんど大差ないモデルチェンジで、いちいち新製品に買い替えたりしたり、景気が良いからといって豪遊したりはしない。
そういう「賢い消費者」が増えれば増えるほど、どれだけ景気を刺激しても景気は良くならない。
そう考えるともはや景気が良い悪いということ自体に、はっきりいって何の意味もなくなってくる。
良かろうが悪かろうが、無駄な消費はせず、欲しい物を欲しい時だけに買う、という姿勢を貫いていれば、逆にそんなにお金使わないから、あくせく働く必要もないよねって話になってくる。
もうGDPの数字で豊かさを測る時代はとっくに終わったんです。
にもかかわらず、その数字にこだわり続けている、前近代的な価値観の持ち主が社会を動かしている。
だから無理やり景気を良くしようとして、異次元のことをやってしまうから、その反動が大きな谷となってやってきてしまう。
世界同時バブルに浮かれた帰結は、世界同時不況の金融危機だった。
たった5年前の話をもう忘れてしまったのだろうか。
過去の失敗から学ばない限り、世界はまた同じことの歴史を繰り返すだろう。
執筆: この記事はかさこさんのブログ『つぶやきかさこ』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年05月30日時点のものです。
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