ある日の東京地裁。被告人は昭和54年生まれの若い男性。東京・四ッ谷にある居酒屋『北海道』で生ビール等11点、合計6173円を頼み、お金を払わなかったという詐欺罪で逮捕、起訴されていた(無銭飲食は詐欺罪になる)。見た目はまだまだ健康そうだ。この手の裁判では老人ホームレスの被告人をよく目にするため、若いなぁと感じる。働き盛り世代なのになぜ無銭飲食を働いたのだろう。
しかも冒頭陳述によれば、これが初めてではなく、窃盗などの前科が4件もあり、服役していたこともあるという。昨年12月21日に前刑での服役を終え出所し、その足で最寄りの区役所へ。生活保護の手続きを取った。施設で暮らしていたが、今年の2月1日に12万ちょっとが支給されると、施設から消えた。生活保護は同月5日に打ち切りになった。
生活保護費を手に東京へ出てきた被告人は、なんと12日に財布を落としてしまい所持金がゼロになってしまう。車上荒らしをしようと歩き回っていたところ、寒さと空腹が襲ってきた。居酒屋『和民』に駆け込み無銭飲食を敢行したが、ここでは店舗側が被害届を出さなかったようだ。追い出された被告人はまた冬の街を彷徨うことに。こうして起訴状に記載の犯行に及んだという。逮捕当時、ポケットに残されていた小銭は8円だった……。
寒さと空腹に耐えかねて無銭飲食を働いているわりには、生ビールという冷えた飲み物を頼んでいることが若干気になるが、逮捕当時の調書によれば、
「生活保護費はパチンコ代に消えるため家賃が払えず手元に金が残らない。収容施設の生活に不満もあった。東京に出てきて車上荒らしをしようと思って車を物色しているうちに、暖かい場所で空腹を満たしたくなった」
と、びっくりするほど欲望に忠実な生き方をしていたようだ。今回の罪を償ったあと、どうやって生活していくかを尋ねられたが、
「更生保護施設か、生活保護で……。仕事、あれば何でもやります。建築関係の仕事、7年くらい経験あるんで……。犯罪、二度と犯さないことを誓います」
今回と同じく行政の世話になるつもりであることを述べつつ、仕事も探すと約束していた。本当にそんなにうまくいくだろうか……?
検察官はやっぱり責めた。
検察官「あなたお金がないのにパチンコとかそういう風になるじゃないですか。問題と思わなかったんですか?」
被告人「そのときは……」
検察官「お金がなくなりどうしようと?」
被告人「特に考えてなかった……」
検察官「車上荒らしは?」
被告人「それは考えました」
検察官「もっと思いつくことあると思うんですけど?」
被告人「そのときは全然……」
検察官「で、腹が減って和民で無銭飲食ね。そのときの店員さんは許してくれたけど、そのときは?」
被告人「許してもらえてありがたいなと」
検察官「申し訳ないとは思わなかった?」
被告人「まぁ……思いました」
検察官「そう思ったのに、なぜもう一度無銭飲食したんですか?」
被告人「それは、はい……すいませんでした」
大丈夫か……? かなり心配になる。
結局、この裁判で、若い被告人がなぜ福祉の世話になることになったのか、その辺のことは明かされることはなかった。しかも、35歳だというのに、周りに頼れる人がいないのだという。家族の話も出てこず「親はどこにいるか分からない。帰る家もない。頼れる人はいません」と述べていたのみ。何があったのか。死別? 絶縁? 親や兄弟、親戚は心配してるんじゃないだろうか。このまま同じことを繰り返す人生にならなければよいけど……。
画像引用元:flickr from YAHOO
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