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購買のソーシャル化

2013-01-03 14:01
    購買のソーシャル化

    今回はmedtoolzさんのブログ『レジデント初期研修用資料』からご寄稿いただきました。

    ■購買のソーシャル化
    Kindleは線を引いたりページを折ったりといったことができないから、今はもっぱら漫画ばかりを買っているのだけれど、クリックひとつでもう購買が終了するこのやりかたは、お財布の底が抜けそうで怖くなる。

    電子書籍を売る側の人たちは、もちろん読者にはもっと本を買ってほしいのだろうから、電子書籍の購買は、そのうちゲームみたいになるのだろうと思う。

    ●ソーシャル化の未来
    そのうちたぶん、タブレット端末からKindleのアプリを立ち上げると、画面にはまず真っ先に「お友達の〇〇さんがこの本を買いました!!」というアナウンスがプッシュされるようになる。Amazonで自分が何かの本を買えば、当然その内容も他のユーザーに配信され、Amazonのサイトを眺めれば、ユーザーの興味に応じたランキングリストが用意され、自分がその中でどれぐらいの順位にあるのか、あるいは本の購買を通じて得ることができた「称号」を閲覧できる。

    こういうサービスを「余計なお世話だ」と感じる人も多いだろうけれど、そうした機能を手がかりに、新たな購買機会を得る人もまた多い。

    本を読むのが好きな人のある割合で、恐らくはまわりから読書家だと思われるのを好む人もいる。もちろん本が好きだからこそ本を買うにせよ、「好き」のありかたはずいぶん異なる。そういう人はもしかしたら、本を読むことそれ自体よりも、「読書家だ」とか「詳しい人」だとか、本の購買を通じて手に入るそうした称号を喜ぶかもしれない。

    ネット世間ではいろんな場所で喧嘩の花が咲く。社会経済方面はけっこう過激な言葉が飛び交って、「もっと勉強してください」とか「無知な質問は悲しいですね」とか、あの人達の言葉は鋭く刺さる。喧嘩の舞台は掲示板形式になることが多いけれど、発言者のハンドルネームに「Kindle経済ランキング」みたいな番号が付加されると、喧嘩はいっそう派手になる。

    ●スタンプラリーをしたい
    紙の本と異なって、電子書籍はデータだから、「買った」感みたいな満足が少し足りない。立体物を手にすることができない不足を、その購買によってランクが上がったとか、あの作家の推奨リストがまたひとつ埋まったとか、そういう形で満足を返してくれるとちょっと嬉しい。

    ネット時代、話題がほしくて、「ネタ」で何かを買う人は多い。ところがたとえば、ハヤカワSF文庫を全巻まとめて購入しても、話題はせいぜい1時間も続かない。大量の文庫を購入して、それを本棚に並べて背表紙を写真におさめ、Twitterで自慢をすればFavが100ぐらいつくかもしれないけれど、1時間もしたら、それだけのお金を費やした「ネタ」も過去の出来事になる。これはいかにももったいない。

    たとえば同じ購買を行なって、Kindleで「ハヤカワ文庫制覇者」の称号をもらえるのなら、お得感ははるかに高くなる。そんなことができる人は決して多くないだろうし、それでもハヤカワのSFを買う人は多いから、思い切って全制覇を行なってしまえば、称号はいつまでもそこで輝く。全部買ったら高いけれど、それを「安い」と思う人だってきっといる。

    新潮文庫の100冊やペリー・ローダン全巻も、「それを制覇したもの」のリストに名前を連ねることができるのなら、それをやらかす人もいるんじゃないかと思う。なんといっても電子書籍は、100冊買っても本棚スペースを喰わないのだし。

    ●得点がないことはメリットになる
    スコアランキングや様々な称号は、ゲームの世界ではもはや当たり前に実装されているけれど、ゲームを上手になるのは難しい。器用不器用の問題はもちろんあるし、やりこまなければどんなゲームだって上手になれない。やり込める人はそれでもいいけれど、時間がなかったり、他のゲームにも手を伸ばしたくて、それでも「称号」を買えるのならそれを買いたい人は、たぶん一定の数が期待できる。

    ルールが設定されたゲームとは異なって、「購買」という行動は、好きなように序列を作れる。

    新潮文庫が好きな人と、太宰治が好きな人と、あるいは無頼派の文学が好きな人とはそれぞれ異なるけれど、すべての人が同じ本を買う可能性は高い。同じ本を買ったところで、それぞれの読者が興味をもつランキングは異なるだろうし、「太宰治ランキング」で上位を狙う誰かが、たとえば「新潮文庫ランキング」の序列で下位に甘んじても、それを悔しいとは思わないだろうし、そもそもそんなランキングに興味を持たたい。

    ルールのない「購買」世界においては、あらゆる興味にランクや称号を設けることができて、そこではたぶん、お金を支払うことで、誰もが一位になれる可能性がある。

    「勝つ」のは案外面倒で、負ければそれだけ悔しい思いをすることになる。それを楽しめる人も多いのだろうけれど、お金を支払うだけでランキングから称号を手に入れることができ、抜かれたら買い返せばいいのなら、それを「つまらない」と思う人がいる一方で、案外多くの人が「それはいいね! 」と評価するのではないかと思う。

    ●称号の授与権を獲得した会社が購買を総取りする
    「グイン・サーガ制覇者」や「ペリー・ローダン制覇者」、お金の掛かりそうなところで「国書刊行会全制覇」みたいな称号があってもいいけれど、称号は権威からもらわないと喜びが減じてしまう。

    作家本人や出版社には、そうした権威になれる可能性があるけれど、流通業者はたぶん、そうした権威の獲得に失敗した会社は、そのうち淘汰されてしまうのではないかと思う。

    恐らくはあらゆるものがソーシャル化する。それを下らないと思う人と、購買を通じて得られる品物よりも、むしろそれを通じて手に入る称号に価値を見出す人とに、ユーザーは大別されることになる。お互いが分かり合うことはないだろうけれど、後者はこれから伸びる余地が無限にあって、一方で前者の総数は、今がピークでこれからむしろ減っていく。「便利」で購買を伸ばせるのは前者の側だけれど、後者に品物を届けるためには、単なる便利ではまだ足りない。

    課金世界と会話世界との橋渡しに成功した会社が覇権を握れる。Amazonは一番近い場所にいるけれど、国内の流通はどうなんだろう?

    執筆: この記事はmedtoolzさんのブログ『レジデント初期研修用資料』からご寄稿いただきました。

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