今回はdoyさんのブログ『THE KAWASAKI CHAINSAW MASSACRE』からご寄稿いただきました。
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■「ブラック・カルチャー観察日記」を読みました
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高山マミさんの「ブラック・カルチャー観察日記 黒人と家族になってわかったこと」を読みました。黒人男性と結婚した著者がシカゴで暮らす中で感じた黒人文化に対するカルチャーギャップをまとめた本で、とても面白かったです。
例えば「B.P.Time」。いわゆる「黒人タイム」というもので、要は「時間通りに始まらない(終わらない)」というモノ。例えばコンサートの開場が5時30分で開演が6時30分だった場合、著者はいい席で観たいからと5時45分に会場に着くものの客は誰もいない。開演時間の6時30分になってチラホラ集まりだし、8時30分頃にようやく始まるがその事に不満を言う客もおらず、主催者側の謝罪もなく、コンサートが終わったのは深夜12時30分(平日の夜)だったそうです。
これを聞いてサマソニの1回目でトリの1つ前だったジェームス・ブラウンが大幅に予定時間をオーバーし、トリのジョン・スペが短い時間で終わったことを思い出しました。著者の夫によると「開演時間に家を出るのがB.P.Time」だそうです。ただややこしいのが、全てにおいてこの「B.P.Time」が適用されるのかというとそうではなく、黒人のバンドでも定刻通りに始まることもあって、その時は「主催者が白人」というのが理由だったそうです。そんなこと分からないよ!
他に面白かったのは黒人音楽といえる「ブルース」について。シカゴはブルースの街としても有名で毎年大規模なシカゴ・ブルース・フェスティバルというイベントも開催されています。さぞかし黒人のブルース・ファンで会場が埋め尽くされているのかと思いきや、客の9割以上は白人で黒人の比率は3%ほどだそうです。入場無料のフェスなので「行きたいがチケット料金が高くて行けない」といった理由ではなく、単純にブルースが好きな黒人はほとんど存在しないそうです。これは意外過ぎてびっくりしました。
黒人の若者はヒップ・ホップしか聴かないというのは想像通りですが、年配の黒人でもジャズやモータウンが好きな人はいてもブルース好きはほとんどおらず、彼らにとっては「ブルース=古くさい音楽」なのだそうです。また「歌詞が痛々しくて聴けない(聴きたくない)」という理由も一応はあるようです。
またシカゴを舞台とした映画で有名なものに『ブルース・ブラザーズ』があります。ジェームス・ブラウンやアレサ・フランクリンといったソウル・ミュージックの大御所が大勢出演していて、日本にもファンは大勢いますが、なんとシカゴの黒人でこの映画を観たことがある人はあまりいないそうです。それどころか映画の存在すらあまり知られておらず、その理由として「主人公が白人だから」というのがあるようですが、これも意外過ぎてびっくりでした。ちなみにシカゴの白人の間では大人気のようです。
音楽の話でもう1つ。ポール・マッカートニーとスティービー・ワンダーの共作が話題となった「エボニー&アイボリー」。黒人と白人をピアノの鍵盤に例え人種差別に対する反対を訴えた曲で歌詞はこんな感じ。
Ebony and IvoryLive together in perfect harmony
Side by side on my piano keyboard
Oh Lord, why don't we ?
黒と白
完璧なハーモニーの中、一緒に生きようよ
僕のピアノの鍵盤のように左右に並んで
ああ神様、なぜ僕たちはそれができないのか?
「Paul McCartney and Stevie Wonder - Ebony And Ivory (Live at the White House 2010)」 『YouTube』
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https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=PSvnIwg0lEA
白人と黒人双方のトップ・ミュージシャンの共演で我々日本人から見ると(個人の好みはともかく)それなりにいい曲だと思うのですが、黒人のほとんどはこの曲が大嫌いなんだそうです。端的に言うと「あまりにも安直過ぎてコミカル」ということらしい。この曲を聴いて素直に感動できるのは現実の人種問題に直接関わっていない第三者だけだということで、「黒人は白人と平等になることを望んでいても、白人と仲良くなりたいという願望はない」とも書かれていました。人種問題というのは我々第三者が容易に理解できるようなものではないもんだなぁと思い知らされました。
とはいえ理解はできなくとも、現実を知る上ではとても為になり、かつ楽しい良書でした。オススメ。
執筆: この記事はdoyさんのブログ『THE KAWASAKI CHAINSAW MASSACRE』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年06月20日時点のものです。
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