民主党の菅直人元総理が2013年7月19日のブログで『比例は自民党に投票しない「落選運動」の呼び掛け』というエントリーを更新。「たとえば、選挙区選挙で自民党が議席の過半数を獲得しても、比例で自民党の票が10%以下と過半数を大きく割り込めば原発推進政策への批判の強さがはっきり出ますし、自民党の比例候補は落選します。安倍政権はたじろぐでしょう」として『Twitter』なども使った運動の展開を図っています。

※参考 菅直人元首相がブログやTwitterで比例は自民党には投票しない「落選運動」を呼びかける 自身は民主党公認候補以外を応援 – ガジェット通信
http://getnews.jp/archives/382557 [リンク]

菅直人元総理は、「かつての韓国の大統領選では、投票前日の若者のメールによって情勢が逆転したといわれています。それがネット選挙のだいご味です」と述べていますが、「落選運動」がネット選挙と関係あるのか、ピンとこない人も多いかもしれません。

今回の参議院選挙から適用される改正公職選挙法では、「選挙運動」と並んで「当選を得させないための活動」についてもウェブサイト等が利用できるようになっています。特定の候補者や政党を応援する行為と同じように、落選をさせるように呼びかけることを、インターネット上で行うことは違法ではないということになります。

ただし、菅氏のブログなどのリンクを一般有権者がメールで第三者に送ることは違反になりますし、プリントアウトした文面を渡すことも「文書図画の頒布」という扱いになるのでやはりできません。『Twitter』のRT(リツイート)や『Facebook』、『LINE』などで拡散することは問題がないとはいえ、ソーシャルメディアに慣れていない高年齢層の有権者にどこまで浸透するか未知数です。

菅氏は2013年7月16日に、安倍晋三総理を相手にした名誉棄損の訴えを起こしています。それによると、2011年5月20日付の安倍氏のメールマガジンにある「菅総理の海水注入指示はでっち上げ」という記事が虚偽であるとして、「民主党と民主党政権に対しマイナスとなるイメージを植え付け、選挙の公平性をも損なう」と主張。参院選挙期間内の記事の削除と謝罪を要求しています。

この場合、過去に掲載したインターネット上の文書について争点になっていますが、改正公職選挙法では「ウェブサイト等に掲載された選挙運動用文書図画は、選挙期日当日もそのままにしておくことができます」という条項もあり(法第142条の3第2項)、選挙期間中はもちろん選挙期日当日についても「選挙運動」に関する文書をネット上に掲載してもよいことになっています。

一方で菅氏は2013年7月13日付のブログで「虚偽事項をネット上で選挙期間中に公表した場合、許されるのか検討している」としていました。公選法には「選挙に関しインターネット等を利用する者は、表現の自由を濫用して選挙の公正を害することがないよう、インターネット等の適正な利用に努めなければならない」とあります(第142条の7)ので、安倍氏のメルマガの内容がそれを害する行為なのではないか、ということを提起したと見られます。

ただし、メルマガの記事は2年前のもの。元検事で関西大学特任教授の郷原信郎氏はブログで「今回の参議院選挙に関して公表したというのは、さすがに無理がある」と述べて菅氏の提訴に疑問を呈しています。司法を巻き込んで選挙運動をすることに対する反発もあり、菅氏が企図するような「ネット選挙運動」が民主党にどれだけ貢献するのか、かなり疑問符がつくところといえそうです。

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