【アベノミクス匿名論説】安倍総理が消費増税に迷う中、財務省が着々と包囲網

今回はブロマガ『アベノミクスチャンネル』から転載させていただきました。

■【アベノミクス匿名論説】安倍総理が消費増税に迷う中、財務省が着々と包囲網 

 

 来年4月1日に消費税を5%から8%に増税するに当たって、消費増税法の附則第18条に規定されている経済状況の判断を行って増税をストップするかどうかの判断を迫られる時期が近付いている。その附則の条文を引用してみると、下記のとおりである。

附則 第十八条
①  消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成二十三年度から平成三十二年度までの平均において名目の経済成長率で三パーセント程度かつ実質の経済成長率で二パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。

③  この法律の公布後、消費税の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。

  すなわち、名目3%・実質2%程度の成長を目指した経済運営を行い、その実現度合いを名目・実質成長率や物価動向、各種経済指標を総合的に勘案した上で、最終的に消費増税のスタートボタンを押すのか、ストップボタンを押すのか判断することとなっている。安倍総理やその側近は、今「増税すべきか、せざるべきか」まさにハムレットのような心境であろう。

  ここで各種の直近の経済指標を見てみると、2013年度の1~3月期のGDPの伸びの速報値は年率換算で名目4.1%、実質2.2%のプラスであり、一見附則の必要条件を満たしているようにも思える。百貨店やスーパーの販売額も足下では5、6月と2カ月連続で前年同月比プラスにもなっている。一方、デフレからの脱却という観点からみると、依然消費者物価指数は3月から5月まで3カ月連続してマイナスであり、6月にようやくプラスになってと言っても円安で輸入物価の上昇の効果が表れる食料やエネルギーを除く物価指数はやはりマイナスである。景気の一致指数であるといわれる鉱工業生産指数も6月の速報値でマイナス3.3であり5カ月ぶりに低下している。景気の先行指数である機械受注統計も5月は12.4%増となったものの、4月はマイナス12.4%であり、景気の回復の足取りが確かなものとなる予兆とまでは言えるものではない。すなわち、各種経済指標をみる限り、今のところ経済状況の好転を確信できるような状況ではなく、アベノミクスによってファンダメンタルズが変わったと判断するのは時期尚早であり、おそらくそれはまもなく出される4~6月のGDPの数値を見ても状況は変わらないだろう。

  そうした中、総理のブレーンである浜田宏一内閣官房参与は「増税は経済に対し大きなショックを与える」と極めて消費増税に慎重な姿勢を見せている。最近の経済指標でみる日本経済の現状からみるとまともな判断と思える。一方、7月29日付の日経新聞によると「増税、成長損なわず。日銀総裁、財政再建求める」として日銀の黒田総裁が予定通りの増税を求める主張をしているかのような記事を掲載した。さらに同日付の同紙では、総理のブレーンとされている本田悦朗内閣参与が「消費増税やらねば不信招く」として、総理の消費増税ゴ―の判断を後押しするようなインタビュー記事を載せている。思い返してみれば黒田日銀総裁も、本田内閣参与も財務省OB。財務省のDNAというのはどのような立場になっても発露されるものであり、同日にわざわざ両巨頭の発言を日経新聞の記事に掲載させるところに財務省一家の増税に賭けるとてつもない執念を感じさせる。

  いま私たちが考えなければならないのは、とりあえず明るい兆しが見え始め、参議院選挙で国民の信任を受けたアベノミクスが、日本経済を成長させるための本物の経済政策なのか、単に消費増税を実現するための目くらましの方便にすぎないのか、安倍総理の真意を見極めることではないか。かつての橋本総理時代の消費増税を振り返るまでもなく、総理の一つの判断がその後の長期間の日本経済の行く末を決める重大な場面が近付きつつある。オール財務省は、官僚、御用学者、御用エコノミスト、記者クラブメディアなどを総動員して総理の外堀、内堀を埋めていくことであろう、そうした中、安倍総理がどのブレーンの意見を聞いて判断するのか、安倍総理の知力、胆力を注視していこうではないか。

転載元:この記事はブロマガ『アベノミクスチャンネル』から転載させていただきました。

転載の記事は2013年08月01日時点のものです。

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