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暗雲立ちこめるうな丼の未来
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暗雲立ちこめるうな丼の未来

2013-08-16 15:00
    暗雲立ちこめるうな丼の未来

    今回は鹿野 司さんのブログ『くねくね科学探検日記』からご寄稿いただきました。

    ■暗雲立ちこめるうな丼の未来
    うなぎ、おいしいよね。

    俺もうなぎ大好きなんだけど、どうやらうなぎの未来には暗雲が立ちこめているらしい。

    今年の2月、環境省によって、ニホンウナギは絶滅危惧種に指定された。

    また、今現在、国際自然保護連合(IUCN)が、絶滅危惧種としてレッドリストに載せるかどうかの検討を行っている。

    この話を聞いて、いったい何が起こっているのかって、ビックリした人も多いんじゃないだろうか。オレはビックリしましたよ。

    なにしろ、うなぎは今でも、スーパーに行けばいくらでも売っている。牛丼屋さんとかにも、かなり安値のうな丼があるらしい。(牛丼屋で食べたことはないので)

    まあ、確かに去年あたりから値段が目立って上がってはいるものの、こんなにどこでもみかけるありふれた魚が、いきなり絶滅ってどういうことなんだろう

    7月の22日、土曜の丑の日に、「ウナギの持続的利用は可能か -うな丼の未来」という公開シンポジウムが東大で行われた。

    オレは当日、会場には行けなかったんだけど、ustream中継がされていたので、所々をつまみ見して、その謎がやっとわかった。

    そこで、主に三重大学の勝川俊雄さん(twitterのアカウントは @katukawa )のお話しを中心に、いったいなにがウナギを絶滅の危機に追い込んだのか説明しよう。

    うなぎといえば、オレの子どもの頃、今から40年とかそれ以上昔の昭和の時代は、かなりの高級食材で、食べられるのは年に1回か2回の、ハレの日の食べ物だった。

    うなぎをたべるの本当に楽しみで、当時は好き嫌いが多くて食が細かったんだけど、うなぎのごはんに関してはごはんを一粒残らず食べるというマイルールを決めていたくらい( ・∀・ )

    ところが1990年台ころから大量に安い値段でスーパーに出回るようになって、暖めてごはんに乗っけるだけでおいしく、お手軽で喜ばれる家庭の代表的な手抜きメニューになってしまった。

    それは消費者の立場からすると素敵な事だったんだけど、実際には持続性という事を全く考えずに、食い散らかすって事だったらしい。

    ウナギのかば焼き文化は江戸時代から始まったんだけど、当時は江戸前といえばウナギのことを指すくらい、東京湾にはウナギが豊富にいた。

    でも、戦後の乱獲によって、日本国内のウナギ漁の漁獲は確実に減っていった。すでに70年台には国産の漁獲量はかなり少なくなっていたらしい。

    ところが、経済力を身につけた日本は、世界中からウナギを買い集めることができるようになったんだよね。世界から、安い値段のウナギを買い集めて、よりお手頃な価格で消費者に提供するってことは、賞賛されこそすれ、非難されるようなことはあり得なかった。

    とくにバブル期のころから、ヨーロッパのしらすを、中国で大きくして、日本で消費するというルートが確立し、ウナギの値段は全体に大きく下がって、たとえば2004年くらいだとうなぎが1匹740円だったのが半額セールで370円で買えるような消費をしていた。

    ところが、これでヨーロッパウナギのシラスの漁獲量が減って、2006~2007年に、ヨーロッパウナギが絶滅危惧種にされ、ワシントン条約の付属書2に指定されて、原産国の許可がなければ輸入できなくなった。このため、ウナギの値段が高騰して、老舗のうなぎ屋でも廃業に追い込まれるようになっているわけだ。

    こういう話は、オレたちうなぎを食べる側の人間はほとんど知らされてこなかったよね。

    実際、環境省は今年、ニホンウナギを絶滅危惧種にしたんだけど、去年、農林水産大臣はウナギ資源は枯渇していないと言っていた。

    つまり、水産の行政側は、規制を阻止して業界を守ろうとしてきたわけだ。

    一方、大手メディアは規制するとうなぎが高くなるとか、安いウナギを買い集めてきた商社は素晴らしいという様なことしか伝えてこなくて、なぜ規制が行われるのか、資源状況やその必要性についてはほとんど言及してこなかった。

    また、漁業者は、個人的には資源が回復するまで漁を休むほうが良いと思っても、何の補償もなければその間の生活が成り立たなくなるわけだし、仮に自分だけ取らなくても、誰かが取るから取り続ける他はない。

    消費者はウナギが居なくなるなら、その前に食べようと考える。

    現在は、アフリカや東南アジアから、しらすを持ってくる動きが出ていて、これも放置すれば、遠からず絶滅に追い込んでしまうことになる。

    というわけで、今のままではうなぎの未来は完全に詰んでいる。

    オレたちはあと何年かはうなぎを食べられるかも知れないけど、子供や孫たちの世代にとっては、うなぎは幻の食材になりそうだ。

    日本人が、ここまで意地汚く、後始末を少しも考えないくらい貪欲だったとは、話を聞いていて恥ずかしくなる感じ。

    すでに日本は、クロマグロで同じようなことをやって世界の批判を受けているわけだし、クジラが好きな人はクジラ資源は枯渇してないって言いたいと思うんだけど、これじゃあ海外から見たとき全く説得力ないよね。

    執筆: この記事は鹿野 司さんのブログ『くねくね科学探検日記』からご寄稿いただきました。

    寄稿いただいた記事は2013年08月14日時点のものです。

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