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日本における著作権保護期間を満了した文献のアーカイブの草分け的存在である『青空文庫』の創設者で、プロジェクト呼びかけ人を務めていた富田倫生(とみた みちお)さんが16日の午後12時8分に亡くなりました。61歳でした。

1952年、広島県生まれ。早稲田大学政経学部を卒業後、編集プロダクションを経て独立。1980年代はまだ少数だったコンピューターやネットワークに関する記事を専門にライター活動を行い、1985年には名著『パソコン創世記』を刊行しました。

1990年代にはいち早く電子書籍の将来性に着目しますが、C型肝炎を発症し長期入院を余儀なくされた中で米国の『プロジェクト・グーテンベルク』(PG)と同様に著作権が消滅した文章をインターネット上で公開する日本版『PG』を発案し、1997年に自らプロジェクト呼びかけ人として立ち上げたのが『青空文庫』でした。

皮肉なことに『青空文庫』が誕生した翌年には米国で悪名高き“ミッキーマウス法”が成立して著作権保護期間が「個人の死後70年または法人の公表後95年」に延長され、21世紀に入ってからも米国や欧州連合(EU)の圧力で世界各国が著作権保護期間延長を強いられる状況が現在も続いており、環太平洋経済連携協定(TPP)やEUとの経済連携協定(日欧EPA)を抱える日本も例外ではありません。

そのような過酷な状況下にあっても富田さんは毎年1月1日に著作権保護期間が満了し、新たな作品を『青空文庫』に迎え入れ続ける活動を実践し続けました。そうして、著作権保護期間の延長がごく少数の作品のメリットと引き換えにおびただしい数の作品が再び世に出ることも無く朽ち果てて行く状況に敢然と異議を唱え、文化審議会著作権分科会でヒアリングが行われた際も米欧の尻馬に乗って延長賛成を主張する国内の権利者団体と真っ向からぶつかり合いました。

結果、2008年9月に著作権分科会は中間報告で「十分な合意が得られた状況ではない」としてこの時点での延長は事実上の見送りとなりましたが、その後も富田さんはTPPや日欧EPAで延長が強行されるのではないかと言う危機感を常に抱き続けていました。そして、先月には『Twitter』で今年から著作権が消滅した吉川英治の『三国志』を9月以降に公開すると異例の予告(https://twitter.com/aobeka/status/355934612595290113)を行っていた矢先の16日、電子書籍登録サイト『ポシブル堂書店』の公式ブログで訃報が発表されたのです。

富田さんが立ち上げた『青空文庫』は15年で1万点以上のテキストを収録する世界有数のインターネット・アーカイブに成長しました。今後はその業績が改めて評価され、彼の遺志が次の世代に受け継がれて行くことでしょう。

謹んでご冥福をお祈りします。

画像:『青空文庫』トップページ

http://aozora.gr.jp/

青空文庫の富田倫生さん 逝去(ポシブル堂書店からのお知らせ)

http://necom.cocolog-nifty.com/information/2013/08/post-0c44.html

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