第1回エニックス・ゲームホビープログラムコンテスト

今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

■第1回エニックス・ゲームホビープログラムコンテスト
エニックス(現スクエアエニックス)は1982年にゲームホビープログラムコンテストを開いた。当時PC-8801やPC-9801のパソコンブームで、月刊I/Oなどで発表される読者が作ったプログラムで賑わっていた。

優秀なゲームプログラマは金を生み出すという機運が潜在的に高まっていた。エニックスはそれに目をつけたのだろう。当時としては高額の賞金をかけたコンテストを行い、優秀な作品を商品化すると同時に、そのプログラマを抱え込む戦略。

狙いは大当たりして、優秀なプログラマがこぞって腕試しとばかり、応募した。入選作は誰が見てもうなるほどのできばえ。その中には後にドラクエを作ることになる中村光一や、これも後にモリタ将棋を作った森田和郎がいた。

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ただ第2回以降は、第1回ほどの迫力はなかった。結局コンテストは第3回ぐらいで終了したのではなかろうか(何回で終了したのか正確にはしらない)。まあ、さずがに毎年第1回ほどのレベルのプログラマが発掘されるわけもなく、コンテストが終了した時も「まあ、潮時だろうな」と思ったものだ。第1回は、機運が熟し爆発寸前の状態のところに火をつけたから大成功したのであって。

中村光一の作ったドアドアを見て、俺はちょっとショックを受けた。商品化を意識して作ってるのだな、と。商品化という言葉は適切ではないかもしれない。ちゃんがとプレイする人間をどう楽しませるか?を考えて作っている、と言った方がいいかもしれない。

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当時はみんな趣味でゲームを作っていたので、わりと自己満足なものが多かったと思う。こういうプログラムテクニックを思いついた。だったらそれを活かすゲームを考えよう、という流れで作っていた人も多かったのではなかろうか。技術を自慢するためにゲームを作ったわけだ。

でもドアドアとかは、プレイヤーが楽しく遊べるゲームを作ることを目的に作られていた。プログラム技術自体はそんなに目をみはるほどではなかったように思う(あくまで俺が当時思った感想ね)。

一方森田和郎が作ったゼビウスに似た縦スクロールシューティングゲーム「アルフォス」は、当時のパソコンの能力を限界まで絞り出したゲームだ。限界以上としってもいい。というのも言葉は悪いがインチキをいろいろして処理速度を稼いでいる。

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だからむしろプログラマの間ではドアドアよりもアルフォスを評価する声が高かったように思う。ドアドアなら作ろうと思えば作れるが、アルフォスを作るのは難しい、みたいな。

同時に、自分たち技術オタクとは、中村光一は視点がまったく違うな、と。こりゃ勝てないと痛感した。俺とかが自己満足でプログラムを作っている時に、中村光一は最初から勝ちに行くことを意識してプログラムをつくていたのだから。

ちょうどパソコンのプログラミングが趣味から商売になる端境期だったとも言える。勝ちを意識しないと勝てない。まあ勝つ必要もないけど。実際俺はその後もずっと自己満足でプログラムを作っていたし。

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で、クラウドソーシングの話。以前別エントリでクラウドソーシングはコンテストという要素があると述べた。ようするに普通の発注・受注の仕事ではなく、名誉をかけた腕試し。ただエニックスのプログラムコンテストが数回で行き詰まったように、コンテスト的要素の強いクラウドソーシングは、長続きしないだろうな、と思う。たとえば下記のとか。

「大企業も在宅個人活用「クラウドソーシング」 パナソニック、デザイン委託 ソニーは家電開発」 2013年08月16日 『日本経済新聞』

http://www.nikkei.com/article/DGKDZO58552370W3A810C1TJ0000/

500~600点の応募を見込んでいて、入選が50~100点。採用されれば1~2万円の報酬。しかし入選しなければお金は入らない。これってどうなのかね。1回ぐらいは自分の腕試しとして応募する人もいるかもしれない。でも毎回ただ働きは続かないだろう。逆に確実に入選する自信があるレベルの高い人は、この報酬額ってどうなの?と。

ということでこの手のクラウドソーシングも最初の1回か2回で優秀な人材は発掘され尽くしてしまい、尻すぼみになるのではなかろうか。そもそも一般募集した作品を製品化って、むかしから話題作りにあるよね…。大企業って安直にブームに乗りやすい人がいるのかもしれない。マイナスイオン家電とかもあったし。俺としてはむしろ日本の家電はここまで(話題作りをしないとダメなほど)切羽詰まったのかと悲しい。

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年08月20日時点のものです。

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