今回は和田一郎さんのブログ『ICHIROYAのブログ』からご寄稿いただきました。
■同期の部下になってしまったら・・
同期で入社する。
仕事で張り合いながらも、ある時は理想を熱く語り、飲みにいって馬鹿げたことをし、愚痴をこぼしながら、支えあって生きていく。
しかし、ある時から、出世に差がついていく。
最初は、ほんのちょっと、ボーナスの額が違う。
誰かが先に、主任や係長になる。
祝杯を上げながら、今回はだめだったが、必ず追いついてやると思う。
そして、いつか気がつく。
あいつは幹部への入り口にいるが、自分には幹部への道は閉ざされている。
そして、あいつが、自分の直属の上司になって帰ってくる。
さて、それが組織というものだが、ひとによって受け止め方は違うだろう。
仕事以外に何かをもっているひとは、さらっと受け入れることができるかもしれない。
しかし、仕事に命を賭けているひと、仕事こそが自分の人生だと頑張っているひとほど、受け入れがたい。
ちょっとしたボーナスの差をどうしても受け入れられず、早々に辞めてしまった同期がいる。
コワオモテだったあるひとは、処遇に納得がいかず、人事部で声を上げた泣いた。
たかが出世、たかが給与やボーナスの少しの差なのだが、平静に見える表面の下にはマグマにも似た煮えたぎるものが渦巻いているのだ。
僕は42才で会社を辞めてしまった。
そして、いまでも時々、同期の連中に会うことがあるのだが、みんなが組織のなかでどうなったのかという話で盛り上がる。
みんな53~4才になった。
僕の同期は当たり年だったらしく、少なくない人数が取締役になった。
何人かは会社を去り、残る大多数は組織人として生きている。
ほとんどすべての同期は、同期だれかの部下になった。
僕はそういう経験をする前に辞めてしまったので、張り合っていた同期の部下になるということが、本当にどんな気持ちなのかわからない。
同期の上司の机に報告書を持って行って、「これでよろしいでしょうか?」と言うとき、どんな気持ちになるのか、わからない。
どんな気持ち?と聞いてみることもある。
笑って話題を変えるヤツもいるし、不機嫌になるヤツもいる。
だけど、Aくんは、にこやかに、こんな風に答えてくれた。
「ははは~あいつも大変だからなあ。助けてやらなくっちゃ」
偉くなった同期が、文字通り「偉いヤツだ」と思えるのなら、上司としていただくのもの、さほど難しくはないかもしれない。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」を地でいくような人間、仕事でも人間性でも尊敬できる相手なら、歳や年次に関係なく、部下として仕えるのは、嫌などころか、得難いことと思えるだろう。
しかし、そのように納得できる場合ばかりでもない。
そのとき、彼が「あいつ」と呼んだ同期のBくんは、昇格祝いの宴席で僕にこう言い放った男だった。
「仕事でも、人間性でも、お前よりは上だから」と。
Bくんの仕事はたしかに凄い。それは僕も認める。
しかし、それよりも、彼を直属の上司にいただいて、愚痴もこぼさず、「助けてやらなくっちゃ」と笑えるAくんの人間力に、僕は驚嘆した。
会社のなかで自分の価値を出世の度合いだけで測るとしたら、ほとんどの人間は負け組となってしまう。
だけど、組織が人それぞれに課す苦難は、ひとを磨く。
そして、Aくんのよう渋く、芯から深く輝く人間をつくりだす。
その渋い光は、見えるものにしか見えないけれど、たしかに光を放っているのだった。
そして、最近、同期の顔をみると、ちょっとしたジェラシーを感じてしまうようになった。
会社は色々とあって相当大変なようで、顔にそれが刻まれているけれど、みんないい顔になってきたな、と。
組織人として長年生きることは、会社でのポジションにかかわらず、ひとを磨くのだな、と。
執筆: この記事は和田一郎さんのブログ『ICHIROYAのブログ』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年10月24日時点のものです。
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