今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
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■TPP05 戦争中に自由貿易体制を作る(中部大学教授 武田邦彦)
太平洋戦争は、それが日本軍とアメリカ軍の戦闘だけなら、あるいは日本軍が勝ったかもしれない。物量では負けても特定の地域の戦闘の作戦や勇気では日本の方が優っていたからだ。
しかし、計画の長期性とか論理性という点では遠く及ばなかった。
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http://getnews.jp/img/archives/2013/11/tpp05.jpg
この3つの写真は、日本とアメリカの余裕の差を示している。ほぼ同時期の戦争中のことだ。紅葉にかこまれた豪華なホテルの写真は、戦後の世界貿易の骨格を決めた「ブレトンウッズ会議」が行われたホテルで、下の白黒の2名の人はケインズとホワイトで、会議を主導したアメリカ人である。
一方、ほぼ同時期に日本では学徒動員が始まり、大学生は出陣(学徒出陣)、子供は勤労に駆り出された。写真は女子が生産に携わった時の写真である。
アメリカが優雅なホテルで戦争が終わった後の貿易体制を検討しているときに、日本は鉢巻きを締めて戦争遂行をしていた。一歩引いて全体を見渡し、自分の国には何が有利なのか、何が現実的で、何が破滅の原因になるのかを見極める力、それに勇気をもって後退する力が日本には不足している。
TPPの問題はまさに「準備万端のアメリカ」と、「その場限りの日本」の差でもある。でもこの状態をいつまで続けるのだろうか?
つまり、戦争に勝利したアメリカも第二次世界大戦を経験して、貿易の制限が世界を混乱に陥れることを学び、戦争が終わる前に自由貿易体制(ガット(少し遅れる)、世界銀行、IMF(国際通貨基金))を作る。つまり、アメリカが中心にはなっていたけれど、世界は「貿易の制限が無用な戦争を生む」という認識もあって、「自由貿易にしよう」という機運が広がったのは確かである。
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http://getnews.jp/img/archives/2013/11/tpp052.jpg
ここまでをまとめてみよう。人類の歴史は実にばからしく、「他人のものをとって楽な生活をしよう」として血を流してきた。モンゴル、植民地、ブロック経済、経済制裁だった。その反省にたった自由貿易だったが、それではそれは成功したのだろうか?
日本はまずガット、WTOを中心とした自由貿易に積極的に賛成し、第二次世界大戦の原因となった制限貿易、経済制裁に反対しなければならない。そして第二に、それではWTOが機能しなくなった現在、戦争に火種をなくすためにはなにをしなければならないのか、積極的な提案が必要である。
しかし、アジアの一部で日本が活動しているのは確かだが、アメリカと同じような世界的規模でアイディアや理論を出さなければならない。アメリカがいかに強大な国と言っても異民族は多く、教育レベルは日本より高くはない。
日本の政治、経済学者がアメリカのそれらの人たちより優れていたら、日本初の自由貿易論が提案され、ノーベル経済学賞をとり、世界的に活躍するだろう。しかし、日本のこの方面の学者でそのような優れた人はこれまで出現しなかった。
かつて私が出版した「国債は買ってはいけない」という書籍に対して京都大学の経済学教授が本気になって批判してきたのにはがっかりした。そんなことに時間を使わずにもっと世界的なことにイニシアティブをとってもらいたい。
執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年11月11日時点のものです。
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