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松岡充インタビュー「無償の愛を描いた作品です」映画『御手洗薫の愛と死』
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松岡充インタビュー「無償の愛を描いた作品です」映画『御手洗薫の愛と死』

2014-01-20 16:30
    松岡充

    交通事故を起こしてしまった小説家。その小説家を脅し、ゴーストライターとなる事で自分の夢を叶えようとする青年。そんな偶然出会った2人の奇妙な関係を描いた映画『御手洗薫の愛と死』。大女優・吉行和子さんと、ロックバンド「SOPHIA」(現MICHAEL)の松岡充さんが共演した本作が1月18日より公開されています。

    著名な女性小説家と若き男性作家が奇妙な縁で結ばれ、師弟関係を超えた愛憎劇を繰り広げるストーリーは、これまでの恋愛ドラマともミステリードラマともひと味違うオリジナリティ溢れる仕上がりとなっています。

    今回は松岡充さんにインタビューを敢行。本作に出演しての感想や役作りについて、タイトルの「愛と死」が持つ意味とは? など色々とお話を伺って来ました。

    (撮影:座高)

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    ――『御手洗薫の愛と死』は恋愛ドラマでもない、かといって推理ドラマでもない、とても個性的な物語でした。脚本を読んだ時の感想を教えてください。

    松岡充(以下、松岡):「これは俺だ!」って思いましたね(笑)。僕はSOPHIAというバンドで活動していて、俳優としても十数年やらせていただいているんですが、デビュー前の頃を思い出したというか。僕にとって音楽がある様に、神崎龍平(松岡さんが演じた役柄)にとっては小説があって。自分の存在意義を不特定多数の誰かに認めて欲しいという気持ちは共感出来ました。監督、プロデューサーさんが僕のこれまでの活動をよく見てくれていて、この役をオファーしてくれた事が何よりも嬉しかったです。

    ――まさにハマり役!だったわけですね。

    松岡:自分の思い描いている俳優像には近づいていないと反省する事も多いんですけど、有り難い事にこうして役をいただけて。この映画もプロデューサーに「この役をあなたがやる、のではなくてあなたと作品を創りたい」と言われて、感激しました。そんな方と一緒に作品を創れるって俳優として一番幸せな事ですよね。僕は俳優としてのキャリアが充分とは言えませんが、だからこそ良いんだと言っていただいたし、元・ミュージシャンが俳優をやっているんじゃなくて、現在進行形の音楽活動で得たものを俳優業にも活かせればと思っています。

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    ――最初は脅す側と脅される側だった2人が、次第に近づいていく人間関係の描写も面白かったです。吉行和子さんと共演されてみていがかでしたか?

    松岡:僕が俳優として活動して来た中で、吉行さんみたいな方は初めてでした。いつ役に入っているのか分からないんですよね。ほとんどの役者さんは「はい、カット」ってなったら普段の自分に戻るんですが、「龍平君これ食べる?」みたいにいつまでも役が続いている感じで。全部が吉行和子であり、御手洗薫であるという。

    映画の中でだんだん二人が歩み寄っていく、その過程は僕と吉行さんの関係そのものというか。吉行さんが「生涯で好きになった男」を発表するとしたら“松岡充”もランクインするんじゃないかなって…。想像してるだけですけどね(笑)。

    ――現場での雰囲気・関係がそのまま役柄に……。とても素敵ですね。ではクランクアップしてからは寂しかったのでは?

    松岡:寂しくて寂しくて、撮影が終わった後はいつも「役者なんて二度とやらない!」って思いますね(笑)。演技することが嫌なんじゃなくて、一度人間関係を築き上げた現場を離れるのが嫌で。なんで役者の方は「じゃあまた!」って爽やかに別れられるんだろうって不思議で仕方ないですね(微笑)。劇中に出てくる御手洗薫の家は一軒家を借りて、きちんとゼロから作ったので、僕は撮影現場というより、実際に御手洗薫の家に通っている感じだったので特に。

    松岡充

    ――この作品はミステリーの様で、人間の根源である「愛と死」について描いたとても不変的なストーリーでした。

    松岡:本当にそうですね。ミステリー要素もある、ヒューマンドラマだと思っています。監督が考え尽くしたストーリーだけあって、どの年代の方にも訴えかける作品だと思う。一見、僕と吉行さんの年齢差のあるカップリングであるとか、ポスターやチラシから醸し出されるミステリー感から「これは映画の中だけのお話だ」と感じてしまう人もいると思うのですが、そんな事全くです。「どんな映画ですか?」と聞かれたら「無償の愛を描いた作品です」と答える以外にないですね。

    ――死って若い世代の人からするとすごく遠い存在だけれど、いつかは必ず訪れる事だし、とても良いテーマだと感じました。

    松岡:そうですね。僕自身は既に「死」というものに出会う機会の多くなる年齢なんですよ。身近で大切な人が亡くなったり、死に近づいたり。だけど、死に対する恐怖感がどんどん薄くなってきてはいます。子供の頃は死ぬって言う事がどんな事なのか分からなかったから、とても恐かった。「THE END」ってその時点で全てが終わってしまう様な…。

    でも、本当はそんなに単純な事じゃなかった。病気などで死期を悟った方は死がゴールではなくて、死の先を考えていると思うんです。そんな方達が残してくれた言葉ってすごくポジティブだったり、感銘を受ける事が多い。それを生きている僕らが受け継いでいって、未来に伝えていきたいですね。だから僕も、僕が死んだ後も残る音楽やメッセージを創りたいと、死について前向きに考える様になったし、この作品との出会いもとても貴重でしたね。

    ――「自分はどうやって死にたいか」というのを考えるきっかけにもなりますね。

    松岡: 今エンターテイメントってものすごく色々な物があって、「ガジェット通信」を見ても膨大な情報が溢れているわけですよね。でも一日が24時間っていうことは変わらないし、活動時間は十数時間しかない。その中でエンターテイメントに使える時間ってどれだけあるんだろう、と考えたら、映画が一本公開出来るという事は本当に幸せなことだと思います。

    でも、願わくばこの『御手洗薫の愛と死』は長く愛される作品になって欲しい。今、音楽もそうですけど消費される時間のスピードがとても速いので、鮮度って重要視されていますよね。だけど、本来映画は鮮度は関係なく、時代を越えて長く受け継がれる芸術だし。だから、この作品は多くの人に考えるきっかけを与えたり、深く爪痕を残せる作品になっていって欲しいなと思っています。

    ――どうもありがとうございました!

    松岡充

    『御手洗薫の愛と死』
    公開表記:1月18日(土)有楽町スバル座ほかにてロードショー
    mitarai-movie.com/story

    【キャスト】

    吉行和子 松岡充

    小島聖 松重豊 益岡徹 松下由樹 岡田浩暉 他

    【スタッフ】

    脚本・監督:両沢和幸

    プロデューサー:大賀文子、両沢和幸

    配給:ダブルス

    【上映時間】114分

    本インタビューのヘアメイク:平野仁美

    (C)ダブルス

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