今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
■気象予報士のための温暖化教室(2) 普通の地球は氷がありません(中部大学教授 武田邦彦)
「北極の氷が融けると、太陽の光を反射しなくなるので、地表があったまって、気温はどこまでも上がる」という人がいます。実はこの説を唱えた一人に東大教授がいるので、やや厄介です。
気象予報士の中であまり科学が得意ではない人は、東大教授のような権威が言ったので本当だと思っている人がいます。でもそれは「地球を勉強したことのない人」なので、この際、正しい知識を持ってもらいたいと思います。
地球は太陽との距離が比較的、近いので、温暖な星です。特に誕生したばかりの地球はCO2が95%もありましたから、さらに温暖でした。そのCO2は徐々に、生物が分解しましたので徐々に減ってきましたが、今から1億年ほど前までは、地球に「1年中、氷がある」というのは珍しかったのです。
そこで、寒い状態の時代を「氷河時代」と呼ぶようになったのです。もちろん、今は氷河時代(第2氷河時代)で、地球の歴史でもっとも寒い時期です。現在は北極にも南極にも1年中、氷があるという本当に珍しい時期です。
私たちの寿命が100年ぐらいしかないので、生まれたときから北極、南極には氷がありましたが、もし寿命が1億年ぐらいあったとすると、「最近の地球はほんとうに寒くなった。このままで大丈夫だろうか? もう少しCO2を増やしておかないと寒くて住めなくなるのではないか」と多くの人が思うでしょう。
気象というのは比較的、短い時間の地表の状態を問題にしますが、それでも「北極の氷がなくなると、気温が際限なく上がる」というとすれば、「それでは今から少し前まで数億年、まったく氷がなく、CO2の濃度も高かったのに、なぜ気温が高くなかったのですか?」という質問に答えられないといけません。
気象予報士の権威を高めるためにも、ぜひ、時間の開いた時に長い地球の歴史を勉強してください。特に、最近、活躍している女性の気象予報士の方はいい加減な知識でものを言ってはいけません。人から聞きかじり、伝聞で言うのではなく、しっかりした基礎知識に基づいて発言してください。
執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年01月31日時点のものです。
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