現在、日テレにて放送中のアニメ『てさぐれ!部活もの あんこーる』。『てさぐれ!部活もの』は、2013年10月に一期が放送されたCGギャグアニメで、CGを駆使した独特のアニメーションや、キャストのアドリブパート、衝撃的な歌詞のオープニングなどが話題を呼んだ。『あんこーる』は1月から放送開始された2クール目となる作品。今回は、制作の合間を縫って石ダテ コー太郎監督に『あんこーる』製作状況や改名の真意などについてインタビューしてきた。
●『てさぐれ!部活もの あんこーる』について石ダテ監督に聞いてみた!
――早速ですが、二期が始まってのお気持ちは。
石ダテ:二期が始まったという感覚もあまりしてないんですよね。ずっと2013年が続いているというか。作品では結愛たちがパラレルな時空になりましたが、現実では僕とたつきくんが一番パラレルな世界にいると思います。
――制作は一期からずっと続いている感じですか?
石ダテ:ずっと続いています。なんならダブルブッキングになっちゃってるんです。スケジュール見るとこの日は台本も書くし音声編集もすることになっていて、どっちやればいいんだ、みたいな状況がずっと続いていて、色々無理していますね。
――最終話で結愛のブローチや時計の文字盤の話などありましたが意図したものだったのでしょうか。
石ダテ:結愛のブローチつけ忘れは想定外でした。作業工程として、ひーなの飲み物と結愛のブローチは、映像作った後に上から載せなきゃいけなかったんです。1話、2話は特に制作時間が足りなかったのでどうしても間に合わなくて、リテイク時の優先順位として結愛のブローチは諦めていいです、ひーなの飲み物も無いカットがあってもいいです、ただ表情はできるだけかわいくしてあげてください、という話にしました。ひーなは謎スライドしてたりするんで、いろんなミステリアスがあっても都合が付けられるからいいかな、と。部長も性格的にブローチつけ忘れたりしそうですし。OPの文字盤はミスでしたが、今までの芸風として最後夢オチだったという選択肢も残しておきたくて、その後のユーザーリアクションやアドリブパートの展開を見て夢オチが一番いいようであればそうしようと思っていました。なのであえてパッケージでも文字盤、カレンダー直さなくていいということにしました。
――2番の歌詞にありますが、作品における一番すごい「偶然が生んだ産物」は?
石ダテ:アドリブパートは毎回そうですよね。例えばあんこーる#2でこはるんが言った「どんちき」とかもそうですし。あんこーる#3でキャストのクレジットがドンチキ田中とニップレ鈴木になるっていう遊びとかもそうですね。台本を書いた後に収録、音声編集があって映像に投げるプレスコのスタイルなので、キャストさんが面白がっていたところはその後の行程で反映できるんです。あとは下ネタですかね(笑)ある程度は想定していましたが、ここまで多種多様な下ネタで盛り上がるとは思っていませんでした。
――二期に突入しましたが、最初の印象と一番違うキャストの方はどなたですか?
石ダテ:実は、一番びっくりしたのは明坂さんです。明坂さんと3年前一緒にやっていた作品では、サッカーで言うとワントップのフォワードタイプだったんです。ゴールしか見ていなくてストイックに自分を追い込むというプレースタイルでした。それが、前に『電波諜報局』でお会いしたときにすごく視野が広くて色々なポジションが出来るプレイヤーに成長しているように感じたんです。わずか2~3年でここまでプレースタイルが変わるほどに成長していたのがびっくりで。今回は、ボランチ的なポジションですよね。みんなに引き出しを開けさせてそれを受けてやっつける、横綱相撲ができるようになった。それがものすごく頼もしくて。20代半ばの女性、しかも声優さんのスキルとしては衝撃的ですよね。常にすごく思い描いている理想も高い方だと思います。
――基準も突飛な動きもできる。ボールの拾い方も上手ですよね。
石ダテ:足りないところを補えて、いざとなれば自分でゴールも狙えるという。みんながおかしな会話で盛り上がった時はサッと引いて、終わってから一言足してなんとかすることも多いですし。キャラクターを一番守ってくれているのも明坂さんです。スラムダンクで言えば仙道がガードになった時のような感じでしょうか(笑)
西さんはイメージどおりですね。あ、でも『洲崎西』というラジオ番組のおかげでよりたくましいプレイヤーになったというか、海外でフィジカルを鍛えられて帰ってきたみたいな(笑)人を活かしつつ、自分でもシュートを決められるトップ下ですよね。葵はワントップのフォワードですかね。ただ、本当に気分屋さんだから気分が乗らないとボールの方に走って行ってくれないという野性味溢れるフォワードです。こはるんは一番何するかわからないですよね。ちょっと闘莉王的な(笑)バックだと思っていたのにいつの間に!みたいな。そうか、スラムダンクで言えば葵と心春はちょうど流川と桜木のようですね。安西先生が「ぶるっ」とした時の気持ちがよく分かりました(笑)
――ツッコミだと思っていたのに!みたいな?
石ダテ:ツッコミとは言いつつも、僕のアニメ作品でちゃんとしたツッコミって特に居なくて、みんな「ビックリ」なんですよ。たまに気の聞いた説明ツッコミをすることはありますけど、基本的には振り回され役。ただただ振り回されて「えーっ!?」って言ってくれればいいっていう。でも、いざ口開いてみたらちょっと人と違うところがある。4人がみんなイメージどおりといえばそうですけど、みなさん僕が思っていたより一回りぐらい大きかったですね。とても嬉しい誤算です。そして、ここまで自分を解放できる環境が整ったのも、この4人のミラクルだと思います。おかげさまで毎回キャストのバランスには恵まれていますね。
――先日、上田麗奈さんにもインタビューしたのですが、その時に『萌舞子外伝』みたいなのがあればやりたいとおっしゃっていました。
石ダテ:いいですね。例えば『タチコマな日々』みたいな家で6人でワチャワチャしてるのも作れそうですし。ちょっと『ビッグ・ダディ』パロディみたいな大家族モノになるかもしれないですけど。需要さえあればいくらでも作れます(笑)
――今回も毎回エンディングが変わるという話ですが。
石ダテ:毎回エンディングを変えようというのは出来る範囲でやっていきます。ただ、時間と予算的に2期では新しいダンスが撮れないので、一番ユーザーを裏切らない形を模索した結果、「じゃあ歌を変えましょう」ということになりました。映像は同じ映像もありますが、ある程度使い回しながら細かいところを変えたり、歌詞を変えたり、曲を変えたりしていこうと思っています。
●過密な制作スケジュール なかなかしびれる制作環境
――収録したデータも膨大な量になると思うんですが、どのように編集されているのですか?
石ダテ:3分しか使わないアドリブパートを30~40分かけて収録するんですが、組み替えればなんとでもなるようになっているんです。アドリブパートの後にラジオの収録をするので、アドリブとラジオでのキャストの盛り上がりを受けてこれを使っておこう、っていうのもあります。後ろの話数よりも圧倒的に面白くなり過ぎちゃわないように調整したりしています。今回はじっくり全体の構成を考えている余裕がなかったので、台本書きながら、収録をしながら、音声編集をしながらシリーズ構成をしています。だから、僕の頭の中にしか全体構成がないんですよ。しかも刻々と変化しますし(笑)
アドリブパートでは結愛と葵がエキセントリックなことをしたり、こはるんがぶっ飛んだ事を言ったりするので、ひーなが確実に面白いことを言ってるのに1番手だったり模範解答のような扱いになったりというのが心苦しいですね。パッケージ収録のロングバージョンでひーなの活躍ぶり、底力を確認していただけたらなと思います。
――ひーなの本領はBDで確認できると。
石ダテ:それと、2周目の『あんこーる』ということで、徐々にキャラクターが崩れていくことを出していけたらいいなと思ってます。
――実際の編集作業はどのように行っているのでしょうか?
石ダテ:音の編集は1話につき50分位ある素材をOP&EDを除いた尺の9分にするという作業になります。これが、いろんな整合性を考えながら慎重に作っていかないと行けないもので、すごく頑張っても1日半かかります。寝てる時間以外全部仕事しても1日半かかっちゃうんですよね。それでもスケジュール的に、収録した翌々日にはもう1本目は欲しいと言われて(笑)二期に関しては走りながら考えなきゃいけないので、漫画家で言えば、絵コンテも下描きもなしでいきなりその場で考えながらペン入れから初めて、上がったページから編集所に送っているような作業です。少しのミスも許されない状況ですが、第1期の時の感覚を信じて勢いだけで乗り切っていますね。
――そこから映像の制作に移ると。
石ダテ:アニメーターさんたちは地方在住の方が多いんですが、今回あまりにも時間がないので半分くらいの人たちにはスタジオに集まってもらうことにしたんです。
――それで動きとかを見てもらって作るんですね。
石ダテ:僕は僕で12月から1月半ばは一ヶ月半で12本の台本を書かなくちゃいけないし、その期間で#8までの音声編集をやらなきゃいけないというスケジュールなので、映像の方のチェックをする余裕がないんです。だからたつきくんを信頼して、もう全部映像に関してはノーチェックにしました。1クールやったからフォーマットはもうできていて、求められていることがわかっていると思うから、音声を投げたらもう出来上がるまで観ないからお願いね!って言ってあります。その代わり、チェックが入らないと思って作ってください、と。あなたが動かしたそれがほぼ最終版です、ということになってます。なかなかしびれる制作環境になってると思います。実際には一応、最後の最後に編集所に入ってからミスが見つかれば直したり、僕がどうしても気になった部分は直させてもらっています。
――止め絵とかは他のアニメだったらめちゃくちゃに言われそうですが面白かったです
石ダテ:そこはたつきくんとアニメーターさんがすごく頑張ってくれていたところです。#1~#3は、絶対に制作が間に合わないから、台本を面白くするのでなんとかこれでしのごうということにしたんですね。でも、出来上がった音声を聴いたら面白くて魂に火がついちゃったのか、せっかく止め絵でやるならカット数は増やしたいとか、微妙にアニメでよくありそうな作画崩壊っぽい表情をさせたりとか、ここはめちゃくちゃ動かしたほうが面白いだろうとか、クリエーター心に火がついちゃったんだと思います。#2、#3に関しては逆に凝っちゃって新しい遊びを入れた分普通に作るより大変だったかもしれません(笑)
●あんこーるは「Tシャツを着てもう一回ステージに立つ」ぐらいの気持ちで観てほしい
――二期を観るときの見所や心構えを教えて下さい。
石ダテ:一期の時は日常系の“フリ”をするというのがテーマでした。日常系のアニメに近づいて内側から壊していくみたいなギャグアニメにしようと、優等生ぶってたんです。今回はそうも言っていられないので、今まで以上になんでもありな作品になってます。都合のいい時空と止め絵やっちゃったらもう守るものもないですし。二期は自然にやっても崩れるというか、キャストも慣れてきたからいい意味で歯止めが効かなくなっているし、作画も遊びがどんどん入っているし、体裁を保たずに崩していくことを楽しみ始めているのが見所ですかね。
――崩れ方を楽しむと。
石ダテ:僕の監督の名前も“石ダテ コー太郎”というように一部カタカナにして崩してみたり、“あんこーる”っていう2週目ですよってアピールしてみたり、セカンドシーズンはそんな部分に象徴されていると思っています。型にハマる必要なんてないでしょ?ってところがテーマですね。
――あんこーるというのはお客様の要望に応えて、という感じなのでしょうか?
石ダテ:そうですね、ありがたいことに評判が良くて「このまま二期できませんか?」というオーダーを頂いたというのも含めています。ただ、このスケジュールではどうしてもちゃんとした二期は出来ないので、あくまで「Tシャツを着てもう一回ステージに立つ」くらいのことですよ、っていう(笑)12回で出来るだけ、このあと終電までは楽しませますよ、ぐらいの心構えで観ていただければ。
――石ダテ コー太郎にされたので“ダテコーさん”とお呼びすればいいのかと思ったのですが。
石ダテ:そういうわけではないです。Facebookの姓名判断で遊んでたら全部大吉のめちゃめちゃいい運気の組み合わせを見つけたのでこうしました。元々こういう作風なのに石舘光太郎という字面が堅いのが自分で違和感だったんです。少しでも親近感を持ってもらえるような風にしたくて。
あと、一期は最終回の「何をするかじゃなく誰と過ごすかが大事」っていうところがキーだったのですが、二期は「こうじゃなきゃいけないことなんてない」という型にはまる必要なんかないんじゃないか、というテーマもあります。自分を型にはめているのは、実は自分だよというのがメッセージとして含ませられたらいいなと。
――制作環境もかなり型破りな感じが伝わっています。
石ダテ:今、冷静に全体を見ることができている人がいないですからね。例えが悪いかも知れませんが、戦時中の日本みたいな一心不乱に目的達成のためにひたすら精神論で頑張ってる状態に近いです。ただ、何があっても着地はしっかりしたいということでみんな頑張っています。
――着地はできそうですか?
石ダテ:どうですかね(笑)今、こういう状態の時に思いつくことですからこれが正解かはわからないです。
――二期の放送終了後の予定などはありますか?
石ダテ:次の仕事もいくつか決まっていますが、まずは休みたいですね(笑)この半年ぐらいすごいスケジュールだったもので、起きてる時間は全て作業、ストレス発散にジャンクフードと寝酒。そういう生活が半年間続いた結果、健康診断がひどいことになってしまいまして。だからまずは休んで病院とジムに通おうと(笑)
あと、結果的にこの短期間で24本作品を出したことになるので、そろそろ引き出しが空っぽになってしまう。冷蔵庫が空っぽになってしまう。だから、次何か作るに向けて食材の調達をしなきゃいけないので、勉強の期間を設けないといけないですね。このまま走り続けてもますます似たようなものの焼き直しになってしまうので。
――『gdgd妖精s』からずっと間隔を空けずに作り続けてますしね。
石ダテ:そうですね。色々変えたり新要素入れたりしてますが、やっぱりちゃんと勉強しないと。休みたいとか楽をしたいというわけではなく、今後より長く戦うために。
――今後も楽しみにしています。ありがとうございました。
てさぐれ!部活もの 公式サイト
http://www.ntv.co.jp/tesabu/
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