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新・幸福の杖(3) 「嫌い」を嫌い、「好き」を好きになる(中部大学教授 武田邦彦)
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新・幸福の杖(3) 「嫌い」を嫌い、「好き」を好きになる(中部大学教授 武田邦彦)

2014-02-06 14:30
    新・幸福の杖(3) 「嫌い」を嫌い、「好き」を好きになる(中部大学教授 武田邦彦)

    今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

    ■新・幸福の杖(3) 「嫌い」を嫌い、「好き」を好きになる(中部大学教授 武田邦彦)
    このブログの一つの目的が「反目するのではなく、合意の方法をさがす」というものですが、人の幸福にもそれが当てはまります。

    人はなぜか「不幸」になりがたる癖があります。「そんなはずはない。自分が不幸になりたいなんて人はいない!」とおしかりを受けそうですが、そうでもないのです。

    その一つに・・・「嫌い」が好きで、「好き」が嫌い・・・という人が多いのです。人と付き合うとしばらくして、その人が「嫌い」になって盛んに悪口を言い始める、ある国の記事を読んでいるうちに腹が立ってきてその国が「嫌い」になる、職場でどうも仕事のやり方が遅い人がいるとイライラしてその人が「嫌い」になる・・・というようなことです。

    人と付き合っても、その人の良い点だけを見るようにすれば嫌いになりませんし、嫌いになりそうなら自分からその人との距離をとればあまり関係が深くならないので嫌いにもなりません。たとえば、嫌いになりそうな人がいれば「会うのに1時間はかかる」、「1年に1度も会わない」ようにすれば、嫌いになりようもありません。

    ある国が嫌いになりそうだったら、その国の人の立場にたって物事を見てみると意外に納得できることもあるものです。仕事の遅い人がいても、その分だけ自分が仕事が早いから評価されると思えばよいのです。

    かく言う私が親からもらった性質のうち、もっとも感謝しているのが「人を憎くならない」という鈍感さです。私は「嫌いな人」という人がいない性質で、だれでも親しく、好きになります。でもこれもまた都合の悪いこともあります。

    自分が相手を嫌いにならないので、相手が自分を嫌っているときにそれが分からないということもあるからです。相手が自分を嫌いなら、できるだけ会わないようにしないと相手に失礼なのですが、自分が相手を嫌いではないので、ついつい接近してしまうからです。

    でも、人間というのは相手の感情が反映することがあり、私が相手を憎むことがないので、最初のころは私が嫌いでも、少しずつ関係が良くなってくることもあります。相手が自分を憎むのは自分の感情の鏡のようなところがあるからです。

    私が相手に対して憎しみを持たない一つの理由が、「自分が正しいと思っていることはいい加減だ、相手の方が正しいかも知れない」といつも思っているからかも知れません。長い間、基礎科学を研究していた私は自分が間違っていたことをいやというほど経験しました。自分が間違っているのですから、自分が正しい、相手が間違っていると言って腹を立てること自体がナンセンスだからです。

    最近も温暖化がますます激しくなったとウソを言っている人は、確かに卑劣な人ですが、社会的に立派なのにそんな嘘をつかなければならないというのは、なにかその人に自信がないか、お金が欲しいか、哀しいことがあるからと思います。

    法令は1年1ミリが線量限度なのに、1年100ミリまで大丈夫といって、自分の名声を守ろうとしたり、いかに自分が知識があるかをひけらかしたいという人も、可哀想でもあります。まったく腹が立たないということもありませんが、瞬間的に怒り狂ってもそれは「意見や行動」に対してであって「その人自身」を憎む感情は湧いてきません。

    人は身近な人を嫌いになったり、自分の大切な人に強い感情が湧いて嫌いになったりします。自分と関係のない人は適当なことを言いますから、好きになり、自分のことを親身に考えてくれる人は苦いことも言うので嫌いになる・・・哀しい人間の性(さが)です。思春期に親が憎くなるのがそれで、この世で自分のことをもっとも大切に考えてくれる親がうっとうしく、憎くなり、自分のことなどなんともないので適当なことをいう友達を好きになることは普通のことと言っても良いほどです。

    でも、もし「人を嫌いになる」ということが「嫌い」になり、「人を好きになる」ということが「好き」になれば、人間関係の多くは解消するでしょう。そのためのもっとも重要な心の持ち方は「裏切られても、「ああ、そうか」と受け取って、決してその人を恨まない」という覚悟です。

    難しいことですが、可能です。なぜなら、幸いなことにこの日本には多くの人がいて、ある人と近くなったり、ある人と距離を取ったりができるからです。

    執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

    寄稿いただいた記事は2014年02月03日時点のものです。

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