今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
■続・「弱者の味方」は成功しない
なにかと「国民は政治に無関心だ」「もっと政治に参加しよう」という主張がなされる。これって正しいのだろうか。人はそれぞれ自分の仕事や生活がある。得意分野も持っている知識も違う。プログラマなら国際政治がどうとかの問題を理解し正しい見識を持つことよりも、プログラミングの技術の探求の方が重要ではなかろうか。
もちろん関心を持つのは悪いことではないけれど、「国民は政治に関心を持て」という主張が、しばしば「政府は政策についてきちんと国民を納得させろ」という主張とセットで語られる点が違和感を覚える。
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やっぱ専門知識が必要な分野を、素人に納得させるというのは無理だよね。まあ大雑把な説明なら可能かもしれないけど、それだとどうしても説明に穴が生じる。それは素人に対しては説明が無理な部分。それを「ここが矛盾だ」「ここの論証が曖昧だ」と言われても、困ってしまう。
挙句の果てに「政府は説明責任を果たしていない」「国民を愚弄している」みたいに言われたら、どんな政府でも無理だと思う。
「不自由さの価値」 2014年02月13日 『メカAG』
http://mechag.asks.jp/708427.html
でも述べたけれど、プログラミングのように比較的論理性が高い分野ですら、初心者に上級者の考えを納得させるのは難しい。上級者が見ている問題領域は広大であり、まだ初心者が足を踏み入れたこともない領域なのだから。
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言葉で重要性を説明しても実感が伴わない。実感というのは「重み付け」。どの問題がどれほど重要かが伝わらない。プログラムで場当たり的に問題を回避すると、後になってとんでもないツケを払わなければならないのだが、そのツケの大きさは自分が体感してみて初めて分かるものだ。体験したことのないプログラマはどうしても過小評価してしまい、目先の楽さを優先してしまったりする。
逆に未体験の問題を過大評価することもある。過大評価するということは、別な問題を相対的に過小評価すること。何かとても恐ろしいものだと考え、それを回避するためなら、どんな犠牲を払おうとする。上級者は良くも悪くも問題の大きさを的確に見積もれるから、「この程度ならなんとかなる(から別な問題を優先しよう)」という判断ができる。
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政治の世界も同じだと思うんだよね。本当に妥当な判断はやっぱその問題について日がな一日中考えている専門家でないとできない。すべての国民がそのレベルに達する必要はない。というかそれはすべての国民が政治家になれというに等しい。それじゃ政治以外の仕事をやる国民がいなくなってしまう。
ユーザーの声を聞いているだけではiPhoneは作れない。どこかの自動車会社の社長が、ユーザーの要望を聞いていたら、いまもユーザーは早い馬車がほしいと言っていただろう、と言っていたと思う。
国民が政治に関心を持つことは悪いことではないし、自分なりの意見を持つのもいいと思う。でもしょせんは素人であり、同時にその限界も肝に銘じておくべきだと思うんだよね。専門家の考えを専門家と同じレベルで理解するというのは無理。それをわきまえた上でユーザー(国民)の要望を言うのであれば、互いに良い成果を生み出せるだろう。しかしあくまで「納得させろ」と要求しそれにこだわるのであれば、専門家の足を引っ張るだけだ。
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プログラムも、初心者が「俺はこう作りたい。ダメだというならなぜダメか、俺を納得させろ」と上級者に食って掛かかることがしばしばある。ほかならぬ俺も若い頃そうだった(苦笑)。
そういう言動が上級者の知識や経験を吸収し成長につながるならいいのだけど、逆に上級者の知識や経験の拒絶になってしまうと、困るのだよね…。初心者レベルのプログラムを製品として出すわけにはいかないから。
まあ、「痛い目を経験させるのも教育だ」とやらせることもあるが。俺もさんざんやらせていただきましたよ。で、たっぷり痛い目も経験させてもらいました(笑)。
だからあえて失敗させることも必要なのだけど、それとて初級者と上級者の違いはあれど、専門家同士だから成り立つこと。そもそも専門家でない人間(エンドユーザ、国民)には、失敗させる価値もないと思うんだよね。
ユーザの言う通りのものを作っても、ユーザの望むものはできない。要望する者と問題解決する者の間には、超えられないギャップ(ミゾ)が存在する。そしてこのギャップはあっていいと思う。エンジニアやデザイナーはスティーブ・ジョブズを目指すべきかもしれないけど、エンドユーザがiPhoneを発想できなくてもいい。
関連記事:
「「弱者の味方」は成功しない」 2014年02月15日 『メカAG』
http://mechag.asks.jp/709844.html
執筆:この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年02月23日時点のものです。
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