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■新刊レビュー『首折り男のための協奏曲』

●書誌情報

どんな本?

胸元えぐる豪速球から消える魔球まで、出し惜しみなく投じられた「ネタ」の数々! 「首折り男」に驚嘆し、「恋」に惑って「怪談」に震え「合コン」では泣き笑い。黒澤を「悪意」が襲い、「クワガタ」は覗き見され、父は子のため「復讐者」になる。技巧と趣向が奇跡的に融合した七つの物語を収める、贅沢すぎる連作集。

【目次】

首折り男の周辺

濡れ衣の話

僕の舟

人間らしく

月曜日から逃げろ

相談役の話

合コンの話

●読みどころ
異なる“技”が7つの物語それぞれに利いている。
もともと別々のところに掲載されていた作品たちなので、頭から読まずに、気になったタイトルから読んでも差し支えない。

単行本化にあたり、加筆はされているとは言うものの、ひとつ一つが独立した話なのに、さり気なく繋がっている演出が、なんとも心憎い。

神様がイタズラしたかのような偶然がもたらしたストーリーの数々。

●レビュー
オススメ度:★★★★★
読了時間:約4時間

実は筆者は伊坂さんの作品を初めて読んだ。そしてビギナーの筆者に、まさにうってつけの作品であった。ほかの作品も今すぐ読んでみたくなるほど面白い。また、登場人物たちのちょっとイジケた突っ込みや、神様像の人間くささには笑えた。

一人の作家の連作集なのに書き方に統一性がなく、それぞれに異なる技巧がこらしてある。一つ物語を読み進めるたびに、新しい伊坂幸太郎に出会える。

ミステリーあり、ラブあり、不思議あり、ホラーあり。要素も充実している。

しかし、1冊にこれだけ多くのネタを集めてしまって本当によかったのだろうか? 小説執筆の参考書になり得るんじゃないかと思った。“贅沢すぎる連作集”、看板に偽り無し。

特に筆者が気に入ったのは『僕の舟』『月曜日から逃げろ』である。『僕の舟』は実にほのぼのとして楽しい“偶然”ストーリーだ。「こうだったら素敵だな、面白いな」が詰まっている。ひだまりの中にいるような気分で、ほっこりと癒やされる。

『月曜日から逃げろ』は、構成が特に印象に残っている。小さな疑問の種を何気なく蒔いていき、最後に読者を混乱の渦に突き落とす。ページを何度も行ったり来たりさせながら読んでしまうこと請け合いだ。読み返し4回目でやっと紐解けた。だが、まだまだ読み込む余地がある。思惑と思惑が交錯する話。

ストーリー的には好みではないけれど、『合コンの話』はちょっと面食らう書き方で、とても新鮮な発見をもたらしてくれた。

“首折り男”から広がっていった7つの物語。彼が登場しない物語もあったが、“協奏曲”というのがぴったりなまとめ方だった。

ただ、あまりにも様々な事象が結びついていくので、「次はどこと繋がっていくのだろう」と多くのポイントを気にしつつ、期待しながら読み進めていったところ、少々肩透かしをくらってしまうこともあった。

残されたままの謎もある。なんだかプレイボーイに引っかかった気分だ。

●詳細情報
書籍名:首折り男のための協奏曲
著者:伊坂幸太郎
価格:1500円(税別)
出版社:新潮社

※表紙画像、書誌情報は新潮社ホームページより

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