2005年10月より放送された『牙狼<GARO>』。初放送より8年目を迎える2013年現在でもその人気は衰えることを知らず、黄金騎士ガロ・冴島鋼牙を主人公とした3D映画、第2期テレビシリーズ、劇場版が制作されています。
そして、2014年新たな牙狼シリーズ『絶狼<ZERO>-BLACK BLOOD-』が誕生。「スピンオフではなく、新しい牙狼のシリーズである」と、原作者である雨宮慶太総監督が宣言した通り、『牙狼<GARO>』を冠とするこれまでのシリーズとは異なる全く新しい作品として、また牙狼の世界観を紡ぐ物語。
『絶狼<ZERO>-BLACK BLOOD-』のシリーズ構成と脚本を手がけたのは、数々の特撮作品や大ヒットしたアニメ版『進撃の巨人』、『ジョジョの奇妙な冒険』を手掛けてきた小林靖子さん。今回は小林靖子さんに作品への想いやアニメと特撮の違いについてなど、色々なお話を伺ってきました。
――今回小林さんは『牙狼』シリーズの『絶狼』のシリーズ構成と脚本を手がけられていますが、きっかけはどんな事だったのでしょうか?
小林靖子(以下、小林):以前、牙狼シリーズで一本書いたことがありまして、それをきっかけにお話をいただいたのですが、「零を主役に人間らしい物語を描いてください」と言われただけで、自由にやらせていただきました。
――執筆はスムーズに?
小林:会話は結構スルスル書きやすかったですね。ちょっとした遊びのセリフを入れても大丈夫な雰囲気の作品だったので、入れてみたりして楽しかったです。
――セリフ全体がとても生き生きしていて、人間らしい物語だと思いました。
小林:牙狼のシリーズの中でも零が出て来るシーンはちょっとウェットな人間ドラマがあるんですよね。これまでのシリーズだと零は立ち去って行くキャラクターだったけど、今回雨宮さんから言われたのは、もっとガンガン来る零を見たいと。そういう部分が牙狼ファン方には新鮮なのかな、と思います。
――主演の藤田玲さんとはお話をしましたか?
小林:なかなか他の仕事もあり現場には行けなかったのですが、打ち上げでお話させていただいたのですが、藤田さんがもともと特撮がお好きということで、私の名前を知ってくださっていて嬉しかったです。
――現場に行く時間的余裕がなかなか無い、という事ですが、そんな中で人間らしい描写、魅力的なセリフはどの様に生まれてくるのでしょうか?
小林:ロケを見に行ったり、取材する事もなかなか出来ないので、自分の中にあるものから書くしか無いですね。アニメなど原作があるものは困らず書けるのですが、特撮だとゼロから書くので苦労はしますね。締め切りまでになんとか書く、といった感じで。
――小林さんの作品のファンの女性が「小林さんの描く人物は天真爛漫すぎず、少し影のあるところが好きです」と言っていました。
小林:もしかしたら私の性格が暗いのかもしれないですね(笑)。基本的に大人のキャラクター達のお話なので、大人を描くと自然とそうなってしまう部分はあるかもしれませんね。純粋に天真爛漫な方って実際にはいないじゃないですか? なので、特に影をつけたいと思っているわけではなくて、どんな人物でも描くと影が出てきてしまうのかなと思います。
――最近ではアニメのシリーズ構成や脚本のお仕事でも活躍されていますが、アニメと特撮の大きな違いというのはどんな所にありますか?
小林:生身の人間が演技をするのと、アニメのキャラクターが動くのとでは全然表現が違ってきますね。例えば、アニメは「無言の芝居」が出来ない。アニメでキャラクターが無言で、周囲も無音でアップになると放送事故になってしまいますから。なので、実写で使う「……」はアニメではあまり使わないですね。
最初の頃は台本の書き方が「実写っぽい」と言われる事もありました。極端な例でいうと、子供を起こす時に実写だと「起きなさい!」と腕を引っ張りますが、アニメの監督に「ここ“襟首つかむ”にしてください」と言われたり。そういうオーバーな表現がアニメらしさなのかもしれませんね。
――逆にアニメの現場で特撮の経験が活きるといったことはありましたか?
小林:それはあまり無いですね。作り方の違いはあって、特撮の場合は映像があがったら打ち合わせをして、直しは2、3日後みたいな感じで進めるのですが、アニメの場合は週に一度絶対に打ち合わせがあって、どんな小さな直しでも一週間後なんですね。すごく合理的な進め方だなと思いました。
――『進撃の巨人』と『ジョジョの奇妙な冒険』は2013年の大ヒット作品となりましたが、それぞれスタッフとして携わる前から知っていましたか?
小林:『進撃の巨人』は『ゴーバスターズ』という作品をやった時に「こんな漫画があるから参考に」と教えてもらって、読んだらすごく面白かったので買う様になったんですね。それからお話をいただいて、アニメ化して。あんなにダークな作品なのにここまでヒットするとはまさか! という感じですよね。原作はもちろん面白いのですが、監督の演出も素晴らしいので。
――それぞれの作品で特に意識したことはありますか?
小林:『進撃の巨人』はアニメ第二期のボリュームに比べて原作が足りなかったので、どう埋めていくかという課題はありましたね。逆に『ジョジョの奇妙な冒険』は、どうコンパクトにまとめるかという感じで。
――脚本を手がけられているうちに、誰か一人のキャラクターに感情移入するということはありますか?
小林:特別に感情移入することは無いですね。『進撃の巨人』では個人的にはサシャが好きです。『ジョジョの奇妙な冒険』はどのキャラクターもとても個性的で、ノリが良いですよね。ストーリーで言うと第一部が一番好きですね。
――子供の頃はどんな作品を観ていましたか?
小林:仮面ライダー世代なのですが、私が子供の時って子供の人数がすごく多かったので特撮もアニメも子供むけの番組がたくさんあったんですよね。でも好きだったけど、覚えているお話とかは無いんですよ。でも、一つだけ『ライオン丸』の何かの話でキャラクターが死んじゃった回があって、すごく悲しくてその記憶は鮮烈なんですよ。戦隊ものは子供が観る作品ですから、嫌な気持ちになる様な死を描きたくは無いですね。もしストーリー上で必要があってもちゃんと死なせてあげたい。
――そういったキャラクターに真摯に向き合う小林さんの姿勢が、多くの方に愛される作品を生んでいるのかもしれませんね。
小林:特別に一人のキャラクターに感情移入したり、力を入れるということはありませんが、作品の登場人物全てに愛情を持って書いているので『絶狼』でも、今までに見た事の無い零のセリフや表情に注目していたければ嬉しいです。
――ちなみに、毎日お忙しい小林さんが一番気分転換出来ることってどんな事ですか?
小林:今はなかなかガッツリおでかけする事が出来ないので、ネット通販で買い物をするのが息抜きかもしれません(笑)。
――今日はお忙しい中本当にありがとうございました!
『絶狼<ZERO>-BLACK BLOOD-』
3月8日(土) シネ・リーブル池袋ほか全国7都市でロードショー!
3/8劇場版第1弾「白ノ章」、3/22劇場版第2弾「黒ノ章」
(C)2013「絶狼」雨宮慶太/東北新社
配給:東北新社
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