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民主主義の危機・・・大阪市長選挙(中部大学教授 武田邦彦)
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民主主義の危機・・・大阪市長選挙(中部大学教授 武田邦彦)

2014-04-03 16:30
    民主主義の危機・・・大阪市長選挙

    今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

    ■民主主義の危機・・・大阪市長選挙(中部大学教授 武田邦彦)
    大阪市長選挙は「法的」に正しく行われたのだろうか? そして、代議員制民主主義で私たちがもっとも大切にしなければならないのは、なんだろうか?

    私は橋下市長と政治的見解も少し違うし、若干、発言が過激なようにも感じる。でも、橋下市長の性格、発言、思想がどうと言うことよりも、民主主義を守ることの方が大きい。橋下市長が独裁的だから、民主主義を捨てるというのは「相手が悪いから、俺も悪くなってやる」という小学生的の論理だ。

    今回の大阪市長選挙は「法的に正しい手続き」で行われたのだから、市長権限を逸脱していないし、市長は選挙で選ばれている。だから、いくら気に入らなくても、選挙は有効であり、「自分の考えと違うから、選挙は大義がない(民主主義を捨てる)」という気分にはなれない。

    民主主義とは「自分の考えと違う人を認める」ということだ。そこに、選挙があり、議会があり、議論がある。それに対してヒットラー、スターリンなどの恐怖政治は、現在の日本のNHKのように「誰かが正しいことを決めて、それに反する人はシベリア送りにする」とか「内部で何かを決定しても、決定過程が完全に不明瞭」という「村八分精神」が好きなのを「全体主義」という。

    「どちらが好きなのか、はっきりしろ!」と言いたくなることがある。たとえば「クールビズ」だ。政府に言われなければネクタイを取れないなどいうのはまさにヒットラーで、ここまで国民の服装を制限する国はもうあまりない。

    ところで、大阪市長選挙だが、既存政党(自民党など)が対立候補を出さない理由として「選挙に大義がない」と言っている。また中央政界では≪旬は過ぎた≫と、これまたまったく意味不明の発言をマスコミが報道している。

    まず第一に、選挙には常に大義がある。そして選挙をするかしないかの決定は法令で定まっていて、その「法令」は国民の間の合意である。だから、政党や議会は選挙が自分に不都合でも法令に基づく選挙には自分の所見を述べて立候補しなければ、その後の発言権はない。

    もし仮に(これはマスコミの記者が取材で明らかにするようなことだが)、既存政党が「今度の大阪市長選挙は大義がないので、選挙に行かないように」と呼びかけたとしたら(テレビなどでは同じ意味のことを言っている。つまり今回の選挙は無意味だと言っているので、無意味なことをしろと言うのもおかしいからだ)、それは政党を解散しなければならないほどの全体主義思想(自分が正しいという思想)と言える。

    選挙民(市民)が「気分が乗らないから投票に行かない」というのは良いが、政党(公式な政党)が選挙が嫌だから対立候補を出さないというなら、それは民主主義自体の破壊である。

    大阪市議会が「大阪都構想」に賛成しているなら、橋本氏の応援に回り、反対なら対立候補を出すべきだ。今後の議会にもよるが、もし議会が橋下市長に協力しないということになると、大阪市はいったん、民主主義を止め、政党と議会を解散し、あらためて民主主義をやり直さなければならないだろう。

    地方自治が市長(首長)と議会という二重代議員制をとっているのはそれなりの理由がある。市長と議会はお互いの意見を尊重し、意見が対立したからと言って、制度自体を否定するのは不見識だと私は思う。選挙を放棄した政党は、今後、橋下市長に反対することはできない。

    執筆:この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

    寄稿いただいた記事は2014年04月02日時点のものです。

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