今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
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■「健康と長寿」の根源を語る04 血圧の「正常値」とはなにか?(2)(中部大学教授 武田邦彦)
体は必要な血液を体中に流そうとし、それに必要な圧力を心臓で作って血液を送るということですから、人によって「正常な血圧」というのが決まることを先回、整理をしました。
つまり、普通に私たちが「病気」という中には、細菌やウィルスに襲われた場合が多いのですが、血圧やコレステロールなどは「自分で自分の体のコントロールが弱る」という病気のように見えます。
でも、厄介なのは現代の医学では「そうではない」と考えているのがわかりにくいところです。というのは、体が血圧を決めるとき、「必要な血の量」は理解しているが、「血管が破裂する危険」は自分の体がまったく考慮していないと現代の医師は考えているということです。
つまり、人間の「心臓はバカである」というのが現代医学の考え方です。それに加えて「日本人はバカである」という二つを足し合わせて、「血圧は低いほうが良い」と言う結論を得ています。
人間の体は歳を重ねると血管の中にカスがたまります。その量がなかなか大変なもので、だんだん積もり積もると血管の太さが半分にもなることは珍しくありません。そうなると、心臓は頑張って血圧を上げて血を体の隅々まで送ろうとします。それが「年齢とともに血圧が上がる」ということをもたらしています。
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これまで高血圧学会や厚労省は120ぐらいを「至適血圧」、つまりもっとも良い状態としてきましたが、そうなると、20歳代の男性でも平均が123ですから「人生で最も元気な時」の半分の人が「高血圧と言う病気」ということになります。
これはいくらなんでも医学が間違っているという以外にはありません。もし現在の寿命で20歳代の男性の半分が「病気か異常」ということになると、健康で人生を過ごすことはできないということになり、厚労省やWHOの言っている「健康年齢」と言う概念にも反します。つまり、至適血圧120というのは血圧を下げることが薬の販売を増やすのにもっとも手軽と思われても仕方ありません。
そこで人間ドッグ学会が「どのぐらいが適当な血圧か」(演繹的)という考えを止めにして、逆に「健康な人はどのぐらいの血圧か」(帰納的)という調査をしたら、150ぐらいということになったのですが、それでも55歳より年配の男性の半分以上が病気と言うことになります。これでも少し低すぎる。つまり、健康寿命と言うのはおよそ70歳ですから、血圧は155ぐらいまでOKと言うことになります。
何を間違っているかというと、人間の体は「血管が破裂することを意識していない」と考えているので、たとえば60歳代の人の平均血圧とされる154は、体が、自分の血管が弱くなっていることを知らずに、ただ血を流せばよいと判断するから130を超えるのだ、本当にその人のことを考えれば130まで下げなければならない、人間の体より高血圧学会の判断が正しいのだ、ということだからです。
それが本当かもしれません。また、逆に現在の血圧の知識では、血流量についてのコントロールはよくわかっているのですが、体が血圧の上限をどのようにして決めているのかが分かっていないから奇妙なことになっているのか、まだわからないことです。
つまり、血圧をコントロールする神経、腎臓、酵素などが「血管の破裂」ということを考えずに154にしているのか、それともそれも計算に入れて、血の巡りが不足するデメリットと、血管が破裂するデメリットを考慮して60歳代の最適血圧を決めているのだというのと、どちらかわからないのです。
そこで、「血の巡り」の方は、お風呂に入ったり、運動をしたりすることによって補い、血管の破裂の方を重視しようというのが現在の方針です。医療が進歩したら、体のコントロール機能が壊れて154なのか、長寿のための最適が154であるかどうかがわかってくると思いますが、私たちの人生と医療の進歩はマッチングしませんから、医師の方の経験で決めてもらわなければならないのです。
それでもさらに一つ問題があります。それは年齢によらずに「正常血圧」が130とか150とかに決まるのかということです。人間は年齢によって筋肉などが衰えますが、年齢に関係なく一定の性能を持たなければならないとすると、歳を取ると筋肉増強剤を使わなければならないという基準になるかも知れません。それは筋肉増強剤のメーカーにとってはたまらないでしょう。
今の医療の実力から言えば、年齢別の平均血圧が「正常」であるとして、少し血圧を低めにして、血管壁を強くし、血管のカスを取るような生活をするのが現実的で前向きと思います。つまりその人にとって「異常な血圧」というのを医師と十分に相談して決めることだと思いますが、そのためにはこのブログで書いた血圧の本質、測定の注意、考え方を整理しておく必要があると思います。
少し専門的ですが、繰り返し読むことで本質がわかり、医師と相談できるレベルに達すると思います。
全体として健康を保つためにどうしたら良いかを整理する時に、再び血圧を取り上げます。ともかく血圧というものをはっきり理解しておくことが第一です。
執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年05月08日時点のものです。
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